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「死の都」、外国人歌手の圧倒的な素晴らしさ

 3月18日、新国立劇場でコルンゴルトのオペラ「死の都」を観た。このオペラの実演を見るのは初めて。3人の外国人歌手の力量たるや圧倒的。新国立劇場のこれまでの多くの上演の中でもトップクラスの完成度だと思う。素晴らしかった。

 パウルを歌うのはトルステン・ケール(これまで、このブログでは常にケルルと表記してきたが、今回は劇場のプログラムに合わせて、ケールと表記する)。かなり癖のある声と歌いまわしだが、ヴィブラートが少なく、よく通る声で、実に安定している。体形によるのか、演技もかなり個性的に見えるが、それが実にリアル。幕切れの歌はジーンときた。CDで聞いた「トリスタン」、映像で見た「リエンツィ」、バイロイトで実演を観た「タンホイザー」、いずれも素晴らしい。

マリエッタを歌うミーガン・ミラーもケールに負けない力演。容姿も美しく、声も響き渡り、しかも力感だけでなく色気がある。生気にあふれた肉感的な女性を見事に演じている。マリエッタはこうでなくては! フランクとフリッツの2役を歌ったアントン・ケレミチェフも実に安定した歌唱。声が美しい。最強の外国人歌手3人という感じ。

日本人歌手(山下牧子・平井香織・小野美咲・小原啓楼・糸賀修平)も健闘しているが、やはり3人の外国人勢を前にすると大きな差を感じざるを得ない。

指揮はヤロスラフ・キズリンク。管弦楽は東京交響楽団。素晴らしかった。豊穣で官能的な雰囲気が実によい。厚みのある美しい音が響いた。ただ、このオペラに関して、私はそれほどなじんでいるわけではない。昔、ホルライザー指揮、ジェームス・キングがパウルを歌い、マリエッタをカラン・アームストロングが歌ったLDを何度か見て、とてもおもしろいと思ったが、それからしばらく聴く機会がなかった。だから、演奏についてあまり語る資格はない。演出はカスパー・ホルテン。私としては、もっとお墓じみた部屋を予想していたが、かなり現代的な部屋にして、やや違和感があったが、全体的には十分に楽しめた。

私はフランス文学の出身なので、コルンゴルトより前に、むしろローデンバック(昔、私はフランス語読みをして、ローダンバックを呼んでいた)の原作「死の都ブリュージュ」になじんでいた。学生のころ翻訳書を読み、強い衝撃を受けた。倒錯的で幻想的で世紀末的。死の中を生き、死と生を重ね合わせる主人公の視線に強く共感した。1980年代にヨーロッパ旅行した時ブリュージュに立ち寄った。沈滞した暗い町かと思っていたら、自然も修道院などの建物もこの世のものとも思えないほど美しい町だった。「天国に最も近い都市」だと思ったのを覚えている。相模大野駅近くにあったブルージュというベルギー・フランス料理の店(のちに北里病院近くに移転したが、しばらくして店を閉じた。実においしかった。今もどこかで開いているなら、ぜひまた食べたい!!)のなじみにもなった。もちろん、存在は知っていたが、コルンゴルトのオペラをLDで見たのは、そのあとだった。

コルンゴルトのオペラは、原作とはかなり異なる(原作では、夢オチになっていない!)が、それはそれで原作の雰囲気を十分に伝えている。改めて、オペラとしてのこの作品の魅力を知った。20世紀のオペラとしては間違いなく大傑作といえるだろう。コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲や交響曲は最近CDを何枚か聞いて、とてもひかれている。気になりながら、最近発売されたこのオペラの映像をまだ見ていない。さっそく、消費税が上がる前に購入しよう・・・。

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