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METライブビューイング「イーゴリ公」 内面性と芸術性を増したヴァージョン

東銀座の東劇でMETライブビューイング「イーゴリ公」をみた。

 演出はディミトリ・チェルニアコフ。これまで私が見たヴァージョンとはかなり異なる。ボロディンが完成させずに亡くなり、友人のリムスキー=コルサコフとグラズノフが補完してこれまでの形になっていたので、新たなヴァージョンを作ったということのようだ。私にとってそれほど好きなオペラというわけではないので、詳しいことはわからないが、ところどころで「おやおや?」と思いながら見た。

 通常版とは、ストーリーが少し異なる。まず、あの有名な「韃靼人の踊り」が展開されるポロヴェツ陣営の場面が、一面の赤いケシ畑に設定され、なかば非現実のイーゴリ公の内面の場面として描かれている。だから、ポロヴェツ人の大合唱や大舞踏は登場せず、ケシの花々の中で幻想的な踊りが20名ほどのダンサーによって行われる。そして、通常版では、コンチャーク汗が娘コンチャコーヴナとイーゴリ公の息子ヴラヂーミルの恋を許し、脱走したイーゴリ公をむしろたたえる場面があるはずだが、その場面はカットされている。脱走後のイーゴリ公は民衆に称えられるというよりも、むしろまだ絶望の中にいて幻想を見ている。最後にはかろうじて再生を誓う場面で終わるが、通常版のように民衆は楽観的にイーゴリ公をたたえるわけではない。

 通常版のような都合のよすぎるところは少ない。もっとずっと内面的で芸術性が増した印象を抱いた。このオペラに私はあまり馴染んでいないので気付かなかったが、音楽的にもかなり通常版と異なるのだろう。ワーグナーなどのドイツオペラを愛する私としては、「イーゴリ公」を英雄譚ではあるがちょっとチャチなオペラ・・というように思っていたが、今回のヴァージョンをみると、「ボリス・ゴドゥノフ」に劣らず重厚で深いオペラになっている。ただ、見終わった後、「あれ、コンチャコーヴナと恋に陥っていたヴラヂーミルはどうなったんだ?」という疑問に駆られた。

 演奏はMETの常でまさしく現代最高の布陣。どの歌手も圧倒的。とりわけイーゴリ公を歌ったイルダール・アブドラザコフは本当に素晴らしい。近いうちにぜひボリス・ゴドゥノフを歌ってほしい。ガリツキ公のミハイル・ペトレンコとコンチャーコヴナのアニータ・ラチヴェリシュヴィリも素晴らしい。指揮はジャナンドレア・ノセダ。指揮に関してどうこう言うほど私のこのオペラに詳しくないが、しばしば音楽に引き込まれた。

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