ヤノフスキ指揮、「ラインの黄金」 最高の演奏!!!
4月7日、東京文化会館で、東京・春・音楽祭の一環としての、マレク・ヤノフスキ指揮、「ラインの黄金」(演奏会形式)全曲演奏を聴いた。オーケストラはNHK交響楽団。コンサートマスター席にいたのは、ウィーンフィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル。
最高の演奏!! これ以上は考えられないほど。
まず、歌手たちがそろっている。ラインの娘たちを歌った小川里美、秋本悠希、金子美香が世界のレベルの歌手たちに交じってまったく遜色がない。フライアを歌った藤谷佳奈枝も可憐でありながらしっかりした声で世界性高レベルの歌手に引けを取らない。
外国人歌手の中では、アルベリヒを歌ったトマス・コニエチュニーが、この素晴らしい歌手陣の中でもひときわ群を抜いている。声の強さ、表現の強さ、どす黒い怒りや欲望を感じさせる歌い回しが異常全体を圧する。これから、いろいろな役を歌ってほしい。
フリッカを歌ったクラウディア・マーンケも、まだ若く見えるのに、しっかりした強い声で風格のあるフリッカを歌いあげている。この人の歌ももっといろいろな役で聴きたいものだ。ローゲ役のアーノルド・ベズイエンもこの役ふさわしい意地悪で巧妙な役を自由に歌う。
他の歌手たちも、もちろん素晴らしい。ヴォータンのエギルス・シリンスは、低音で少し音程が不安定だと思ったが、高音は美しく伸びて実に高貴。ドンナーのボアズ・ダニエルも声に張りがあって実に見事。そのほかの歌手たちも少しも不満はない。いずれの歌手たちも、明瞭で声に力がある。
そしてもちろん、ヤノフスキの指揮するNHK交響楽団の力演にも圧倒された。スケールが大きく、テンポがしっかりして、楽器が実に明瞭に響く。かつての巨匠たちのような「もやもやして得体のしれないおどろおどろしいワーグナー」ではない。ドラマティックで輪郭が明確で、何よりも強い意志を秘めた音の構築物としてのワーグナー。だが、凄まじい悪や美や怒りなどの人間のすべてが入り混じっている。N響の実力にも脱帽。
わけのわからない演出に邪魔されずに音楽を聴けるのもありがたい。しかも、楽器を目の前にして明瞭な音を聴けるのもうれしい。このような音はヤノフスキの作りたい音楽に合っているのだろう。
といいつつも、ぜひこの演奏に合った演出をつけて劇場の上演を見たいという気持ちを抑えきれない。
ともあれ本当に心の奥から魂を揺り動かす素晴らしい演奏だった!!
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コメント
この公演のゲネプロを聴きましたが素晴らしかったです。コンマスは堀さんかなと思って行ったらウィーン・フィルのキュッヒルさんで驚きました。
投稿: がんばれ!公共放送NHK | 2014年4月 9日 (水) 10時48分
がんばれ公共放送NHK様
私もキュッヒルさんを見てとても驚きました。ただ、きっとみんなが知っている情報を私が見落としていたのだろうとおもったのでした。年齢とともに、そのようなことが増えておりますので。ほかの方も驚いたのでしたら、ちょっと安心しました。
それにしましても、本当に素晴らしい演奏でした。N響の底力を知ることができました。
投稿: 樋口裕一 | 2014年4月10日 (木) 07時09分