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2本の映画「ワレサ」と「ある過去の行方」

 京都滞在中、時間を作って京都シネマで2本の映画を見た。両方ともとても大きな感銘を受けた。とりわけ「ある過去の行方」は、近年まれにみる傑作だと思った。

・「ワレサ」

 アンジェイ・ワイダの監督作品。ポーランドのグダンスクの造船所の労働組合「連帯」の委員長だったワレサの連帯での活動を描いている。

 同時代を生きたので、ワレサには大いに関心を持っていた。1985年に東ヨーロッパを旅行し、ポーランドにも5日回ほど滞在したが、そこでも連帯のビラなどを見かけた。そして、映画にも描かれる当時の経済危機も身をもって体験した。レストランに行っても食べるものがろくになく、肉が手に入らず、何を買うにも長い列を作らなければならず、商品そのものがなかった。私自身としても実にリアルに映画の内容を感じることができた。

 ワレサを英雄としてではなく、困ったところもある一人の男として描いている。その描き方にまず感服。ワイダのリアリズムによって、完璧なまでに時代が再現され、当時の人々の生活感、心の中までが目の前に現れる。それだけでも素晴らしいと思った。

 イタリア人女性のインタビューを受ける形で話し手が展開する。はじめはワレサに警戒心を抱いていたインタビュアーも徐々にワレサに惹かれていく。このような話の作り方にすることによって、軸を作り、話を整理し、人間性を描き出している。実に手際がいい。

・「ある過去の行方」

 最初から最後まで引き付けられてみた。途方もない傑作だと思う。

 フランス女性と数年間の結婚生活を送っていたイラン人男性が、しばらく母国イランで過ごした後、妻と正式の離婚をするためにフランスにもどってくる。それによって、それまで表に出なかった過去のいきさつが突然動きだし、フランス女性の最初の夫の間の子供たちやフランス女性が新たに結婚しようとしている男性に亀裂が生じてくる。その顛末を描く。フランスでは離婚・再婚が日常的で、二度や三度の結婚をして、連れ子と生活するのが珍しくないということなので、このようなことはかなり当たり前のことなのかもしれない。

 子供たちを含めて、すべての人物の心の中が痛いように理解できる。どの人物も悪くない。みんな自分のエゴを抱えながらも、十分に善意を持っている。他者を気遣う。自分が同じ立場なら同じように感じ、同じようにするだろうと思う。だが、いかんともしがたく衝突が起こり、すれ違いが起こる。誰もが現状に居心地の悪さを感じる。そして、まるでピランデッロの戯曲のように、登場人物の言い分や、その人にとっての現実がそれぞれ微妙に異なっており、なかなか過去の真相がわからない。が、まるで上質のミステリーのように徐々に過去がはっきりした形を取り始める。誰もが板ばさみに苦しみ、過去から切り離されなくなる。なるほど人生ってこうだよな・・・とつくづく思う。

 監督はアスガル・ファルハディ。主役は「アーティスト」のベレニス・ベジョ。元夫がアリ・モサファ、新しい恋人がタハール・ラヒム。素晴らしい演技。生活観にあふれる家庭の中、自然な演技をする子どもたち。静謐な演出なのだが、何も語られなくてもそれぞれの人物の心情が伝わる。映像も実に美しい。

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