ジル・ヴォンサッテルの透明なピアノの音
5月16日、武蔵野市民文化会館小ホールで、ジル・ヴォンサッテル ピアノ・リサイタルを聴いた。1981年生まれというから、まだ30代前半。スイス生まれのアメリカ人だという。とてもよい演奏だった。
曲目は、前半にラヴェルのソナチネ、ベートーヴェン「月光」、リスト「エステ荘の噴水」「葬送」、後半にシューマン「アラベスク」、ドビュッシー「映像」 第2巻「葉ずえを渡る鐘の音」「そして月は廃寺に落ちる」「金色の魚」、ラヴェル「ラ・ヴァルス」。フランスとドイツのピアノ名曲集とでもいったところ。ピアノ曲をあまり聞かない私でも、さすがにこれらの曲は知っている。
あまりに透明な音にまずは驚いた。一つ一つの音は繊細だが、細身の透明な音で知的に肉薄していく。あまりロマンティックに歌うタイプではない。「月光」の最終楽章は透明な音の迫力に圧倒された。リストの曲も、実に音が美しい。どうして同じピアノからこんな透明な音が出るのだろう・・・ときわめてプリミティブな疑問を抱きたくなるほど。
「ラ・ヴァルス」も圧巻。ただ、ラヴェル特有の流動性がなく、きわめて分析的。メロディ線が表に出ないで、あまりワルツらしくない。むしろ音の構築性が強く感じられる。もう少しワルツの雰囲気が強いほうが私の好みだ。アンコールは、ベートーヴェンのバガテル ト長調 とドビュッシー「動き (ムーヴマン)」。これも同じ雰囲気。
私はとても気に入ったが、もう少し歌の心があるほうが感動につながるとも思った。もちろん、これがこのピアニストの持ち味なのだろうが、ちょっと表現が消極的すぎる気がする。
ところで、少し近況を付け加える。
4月以降、大学の入試委員長という役職を離れたので、昨年に比べると、コンサートにもかなり通っている。ただ、原稿を書く仕事が迫っていたので、先月から今週の火曜日まではずっと時間に追われていた。ラ・フォル・ジュルネがあり、購入済みのチケットがあり、魅力的なコンサートがあるので行かざるを得ない。が、行けばいくほど、ますます時間が取れなくなって、机の前ではパニック状態だった。おかげで、ひと月前に買ったパソコン2台の設定をする時間もまだ取れずにいる。
やっと今週の火曜日に完成原稿を編集者に送付して、一息ついた。ほかにもいくつか原稿はあるが、締め切りに余裕があるので、少しゆっくりしたい。
5月14日には山形に行き、山形学園高校で県内の高校の国語の先生方の前で講演。「クリティカル・シンキング」の重要性、私たちの作成した教材についてお話した。とても充実した会だった。なお、講演前、山形駅付近で昼食に山形牛のステーキを食べたが、実においしかった。値段も手ごろ。
火曜日に原稿は出したが、その後もあれこれの仕事やらコンサートやらで、ゆっくりした時間はとれなかった。今日と明日はゆっくりしたい。まずは、2台のパソコンの設定をしなければ・・・。
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