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ネゼ=セガン+フィラデアルフィア管に興奮

 6月2日、サントリーホールでフィラデアルフィア管弦楽団のコンサートを聴いた。指揮はヤネック・ネゼ=セガン。素晴らしい演奏。大いに興奮した。

 前半は諏訪内昌子が加わって、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。諏訪内の情熱的でありながらも折り目正しい美しいチャイコフスキーに対して、ネゼ=セガンの指揮はかなりダイナミックでうねり、律動し、高揚する。音楽性にかなりの違いはあるが、それがうまく折り合って、面白い味わいを出していた。うねってダイナミックなオケをバックに、すっくときれいな音楽が奏でられる。形が崩れず、下品になることがない。チャイコフスキー特有の憂愁美もあり、激しい情熱もある。むしろ、このような激しいオケがバックであるだけに、諏訪内のヴァイオリンの美しさが引き立つ感じがした。

 後半は「悲愴」。これは凄まじい名演だと思った。強調するべきを強調し、緊張感があり、メリハリの強い音楽を作っていく。力感があり、魂の爆発がある。ドラマティックであると同時に、感情に訴える力も強い。抒情性にも事欠かない。第一楽章第二主題のメロディの歌わせ方のうまさには舌を巻いた。何と美しくなんと抒情的であることか。そして展開部の盛り上がりも素晴らしい。

 フィラデルフィア・サウンド健在。かつての軽やかで華やかな音ではなく、かなり深みが増しているが、しかし、最高に美しく色鮮やか。素晴らしい音が重なり、得も言われぬ音の世界を作っていく。すべての音がクリアに聞こえ。それでいてデモーニッシュに輝いている。第三楽章の後半、クライマックスへの盛り上がりも圧倒的。第四楽章の悲劇的な音楽も感情がこもっている。深く沈潜した、しかし熱い情熱にあふれた音楽。

 私がネゼ=セガンの凄さを知ったのは一昨年のザルツブルク音楽での「ドン・ジョヴァンニ」だった。悪の魅力にあふれた情熱的で凄みのある演奏だった。その後、CDを何枚も聴いて、大好きな指揮者の一人になった。ただ昨年だったか、ロッテルダム・フィルとの来日公演でブラームスを聴いて少しがっかりしたのだった。

 チャイコフスキーを聴きながら、ブラームスの音楽の作りも確かにこのような感じだったことを思い出した。これだと、間違いなく私の好きなタイプのブラームスにはならない。うねり流動し、感情を激しく表出させるオペラ的なブラームスだった。だが、チャイコフスキーであれば、これがぴったり。第一楽章の展開部、第三楽章後半、第四楽章後半はずっと興奮していた。

 アンコールは「エヴゲニ・オネーギン」のポロネーズ。これも見事。力感にあふれ、音楽の楽しさにあふれている。

 ネゼ=セガンは大指揮者だと改めて認識。また、フィラデアルフィア管弦楽団がとてつもなく素晴らしいオーケストラであることも改めて実感。

 最高の音楽。心の底から満足できた。

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コメント

こんばんは

私も、同公演を聴きました。
前半のコンチェルトが本当に大変な熱演でしたね。諏訪内さんの技術、センス、そして包括的なプロデューサー能力のようなものが冴えに冴えて、ネゼ=セガンさんの躍動的なオケ、フィラデルフィアの華やかなサウンドが見事なマッチ。この条件下でのチャイコフスキーは、今後そうそう出会えないと、私も興奮でした。
悲愴に関して、そのままの前半の勢いがあったのが、私にはちょっと意外でした。まぁ、こういう超名曲ともなると、何度も聴いているうちに勝手に「この曲はこうでなければならない」といった固定観念ができてしまっているものなんですね、私にとっては、チャイコフスキーの交響曲は4番までは攻撃的で、5番はさらに大人びてファンタジックで、悲愴だけは保守的であってほしい、あまりお祭り騒ぎはしないで欲しいと・・・なので、ネゼ=セガンさんの元気いっぱい、勝負どころ満載の演奏は、私自身が途中から迷子になってました。これは完全に好みの問題でしょうが…そういえば、樋口先生はかつて、ビエロフラーヴェク&チェコフィルの直球勝負の悲愴で、何か物足りない・・・と、書かれていたのを覚えています。先生は、悲愴にもやはりかなりのエキサイトする演奏がお好きですか?

それにしてもフィラデルフィアのドラマティックな響きは、オーケストラ好きにはたまらないものですね。そして、ネゼ=セガンさんのデザインセンスも、次なにがでてくるか、非常に楽しみだと思いました。

投稿: なしお | 2014年6月 5日 (木) 21時01分

なしお 様
コメント、ありがとうございます。
あの日、聴かれたんですね。お互い、とても幸せな体験だったと思います。
「悲愴」についてのお考え、なるほどと思いました。
私は、「エヴゲニ・オネーギン」に関して、同じように思っています。これについては、できるだけ渋く地味に抑制して演奏してほしいと思っています。
が、「悲愴」については、第一楽章展開部の激しい慟哭を表現してもらって、一緒に泣きたいと思うのです。そして、第3楽章で再び心を震わせた後、第4楽章で静かにむせび泣きたいと思うのです。50年近く前、中学生の頃、そのようにして聴いていましたので、それを今も続けたいと思っているだけかもしれませんが。この曲はそうしてこそ、最も訴える力の強い曲のように思います。

投稿: 樋口裕一 | 2014年6月 6日 (金) 13時36分

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