エマーソン弦楽四重奏団を聴いた
6月19日、武蔵野市民文化会館でエマーソン弦楽四重奏団のコンサートを聴いた。ただし、ヴィオラのローレンス・ダットンが来日不可能とのことで、代わりにポール・ニューバウアー。
前半はモーツァルトの弦楽四重奏曲第16番とショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第14番。後半にベートーヴェンの弦楽四重奏曲第8番(ラズモフスキー2番)。
私がこの団体の実演を聴くのは初めて。まず彼らが登場したとき、かなりお年を召していることに驚いた。1980年代に、それまでアルバン・ベルク・カルテットばかりが脚光を浴びていた時、さっそうとデビューしてきた若々しい姿と演奏が鮮烈だったので、まだ当時のイメージを持っていた自分に気づいた。当然のこととはいえ、エマーソン弦楽四重奏団も年齢を重ねていた。
そして、まさに年齢を重ねてきたことを示すような演奏だった。デビュー当時のような切れの良い雰囲気はない。むしろもっとずっと内省的で奥深い。とりわけ前半の2曲は、焦らず慌てず、特に面白さを引き立てようともせず、地味に、そして深く演奏。大変説得力がある。ショスタコーヴィチの第三楽章の秘めた情熱が徐々に高まり、そして静まっていく。 ただし、テクニックが衰えているわけではなく、ラズモフスキー第2番の終楽章のテクニックの冴え、盛り上がりは凄まじい。
とても良い演奏だと思った。ただ、実は私はもっと爆発的な名演奏を期待していた。が、それは訪れなかった。ヴィオラの交代のせいなのか、ほかに原因があるのか。
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コメント
弦楽四重奏に爆発的な名演奏を求めるほうが間違っている。
あなたはいったい何を聴いているのか?
少なくとも内面的なものを聴いていないのは明らかだ。
あなたは音響によるインスパイアばかり求めてる単細胞としか思えない。
投稿: P | 2017年8月22日 (火) 00時48分
P様
私が弦楽四重奏に音響によるインスパイアを求めているですって? まさか。このブログの弦楽四重奏を扱った部分を読んでいただければ、そうでないことくらい、誰にでもわかるはずです。
私は、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏に魂の爆発を求めているのです。多くの人がショスタコの室内楽に魂の爆発を求めているではありませんか? もし、私を批判なさるのでしたら、ショスタコに魂の爆発など求めるべきではないということを、きちんと根拠を上げて説明していただく必要があると思います。また、ひとを批判するときには、きちんとその人がほかの部分でどう語っているかを確かめ、それを含めて批判するべきです。そして、もちろん、人を批判するときには、自分の身分と実名を明かしたうえで語るのが、ある程度の社会常識をわきまえている人間の当然の義務だと私は考えています。
投稿: 樋口裕一 | 2017年8月22日 (火) 21時38分