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映画「パガニーニ」のことなど

 7月21日は、びわ湖ホールで「ラインの黄金」を見て、そのまま大津に泊まり、7月22日、京都の平安女学院中学で小論文を指導。私が塾長を務める白藍塾は日本各地の中学・高校の小論文指導をサポートしているが、平安女学院もその一つ。ふだんは先生方が小論文を指導するための手助けをしているが、今回は、私自身が生徒さんに授業をすることになった。初めて顔を合わせる、しかも女子中学校の生徒ということで、ちょっと緊張。例年、この学校の生徒さんたちは活発で積極的だったので、そのつもりでいたら、とてもおとなしい生徒たちで、少し困った。が、ともあれ、よく私の話を消化してくれたと思う。

 仕事が終わるとフリーになったので、少し京都市内を歩いた。祇園祭の山鉾巡行はすでに終わっているが、今年から「後祭」があるとのことだったので、四条あたりは祭りの雰囲気があるのではないかと探してみたが、それらしいものはなかった。

 その後、京都シネマで映画「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」を見た。監督はバーナード・ローズ。

 ヴァイオリニストであるデイヴィッド・ギャレットが俳優としてパガニーニを演じるというので話題になっている映画。ギャレットについては名前を知っている程度で特に関心はなかったが、パガニーニは、その昔、アッカルドの実演を聴いて以来、かなり関心を持ってきた。もちろん、アッカルドの演奏したパガニーニ6枚組のCDは時々取り出して聴いている。ただし、ベートーヴェンやワーグナーやブラームスに対するほどの熱意や知識はない。

 映画としてとてもおもしろかった。ハラハラしながら、最後まで見た。どのくらい史実に基づくのかわからないが、私の知るパガニーニの物語やパガニーニの音楽から感じられるものとの大きな隔たりはない。

 超絶的なテクニックと革命的な音楽性を持っていながら、音楽ビジネスに無関心であるためにうだつのあがらずにいるパガニーニの才能を、謎の人物ウルバーニが見つけ、「悪魔のヴァイオリニスト」として売り出す。そんな中、ロンドンで公演が行われ、公演を企画した指揮者はパガニーニとウルバーニに振り回される。指揮者の娘の可憐な娘シャーロットははじめはパガニーニに嫌悪を抱いていたが徐々に惹かれ、愛に落ち、パガニーニのコンサートで歌手としてデビューする。だが、パガニーニを利用しようとするウルバーニらは、二人を引き離し、パガニーニを悪魔的な人間に仕立て上げる。パガニーニの真意を疑ったシャーロットは愛を秘めながらもパガニーニから離れて生きていくことを決意する。

 パガニーニ作曲や編曲による曲やゆかりのある曲がちりばめられていて、音楽好きにはとても楽しめる。ウルバーニの悪巧みの場面でたびたびシューベルトの「魔王」の断片がまるでライトモティーフのように鳴り響く。そして、最後にパガニーニ自身による「魔王」のヴァイオリン編曲ヴァージョンが全曲演奏される。まさしく魔王に操られる音楽が聞こえる。

 ハイドンの時代までは音楽家は教会や王侯貴族に操られていた。パガニーニの時代のころから、それに代わって音楽ビジネスによって操られ、売り出しのための物語が作られていく。パガニーニは神の支配からは逃れ、人間として独立して生きていこうとするが、売り出すための魔王からは逃れられない。これは現代にも通じる出来事でもある。

 俳優たちはみんな見事。ウルバーニ役のジャレット・ハリスの存在感は圧倒的。シャーロット役のアンドレア・デックも可憐。ただ、ちょっと歌はクラシックファンからすると「イマイチ」。最後のクレジットで「ヘルムート・バーガー」という文字が出てびっくり。バーガーシュ卿を演じていたのは、あのヘルムート・バーガーだった!! 見ている間はまったく気付かなかった。最後に「ケン・ラッセルに捧げる」という文字が出て納得。確かにケン・ラッセル風の毒のある映画。映像が音楽の本質に届き、きれいごとではない芸術のありようを感じることができる。

 夜11時過ぎに自宅に戻った。

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コメント

祇園の後祭は、四条沿いには鉾も山もならばず、四条と交差する、室町と新町の通り沿いにならんでいます。150年ぶりに復活した巨大鉾、大船鉾も新町通りにあり、ものすごい人でにぎわっていたそうです。私は前祭に行きましたが、そこでは四条にたくさんの鉾がならんでいました。ただ前祭りが23の鉾山に対し、後祭りは10しか鉾山がありませんので、大船鉾を除くとかなり後祭は落ち着いたものになるのかもしれません。

投稿: かきのたね | 2014年7月23日 (水) 21時32分

かきのたね様
コメント、ありがとうございます。
そうでしたか。もう少し丁寧に探せばよかったのですね。
あまりの暑さ(とはいえ、33度くらいだと思います)のために、めげてしまい、四条で看板を見かけて、映画の時間まで冷房のギンギンに効いたところでマッサージを受けようという横着な気持ちに負けてしまったのでした。

投稿: 樋口裕一 | 2014年7月25日 (金) 08時13分

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