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新居由佳梨の高貴で凄みのあるラヴェル

 7月23日、王子ホールで新居由佳梨のピアノリサイタルを聴いた。「ラヴェル ピアノシリーズ」の第二回。ラヴェルを中心にドビュッシー、スクリャービンのピアノ曲が演奏された。素晴らしい演奏だった。

 新居さんのピアノの音が大好きで、かなり前から追いかけている。クラシック音楽のコンサートを企画運営している多摩大学の樋口ゼミの記念すべき第一回のコンサートにも、新居さんに演奏してもらった。以前から新居さんのピアノは実に高貴で繊細で研ぎ澄まされて美しかった。だが、それだけでなく、ここ数年、ダイナミックさが備わってきた。もはや、日本を代表する名ピアノストだと思う。しかも、容姿の美しさにも改めて感嘆した。

 私が圧倒的に素晴らしいと思ったのは、やはりラヴェルの曲だった。ソナチネと「夜のガスパール」が特によかった。とりわけ、最後に演奏された「夜のガスパール」は凄味が出てきた。

 前回、文化会館小ホールでの「ラ・ヴァルス」はまさしく圧倒的な名演だった。「夜のガスパール」もそれに匹敵すると思う。華麗にしてドラマティック。そして、おどろおどろしさが漂う。とりわけ最終曲「スカルボ」は、「醜い子鬼」を描くが、それがいかにもすばしっこく、しかも不気味。だが、音が洗練されており、鮮烈で美しいので、おどろおどろしく不気味であるにもかかわらず、下品にはならない。素晴らしい個性だと思う。そして、これこそがラヴェルの世界だと思う。新居さんはラヴェルが大好きだというが、きっとこの諧謔的で、時に心の中に強い毒を抱いたとしても、知性を失わず高貴な精神を持ち続けるところが、新居さんにぴったりなのだろうと思う。

 前後したが、前半に演奏された「亡き王女へのパヴァーヌ」のような優雅でロマンティックでありながら、冷めたところのある音楽もまた見事だった。

 新居さんのピアノを初めて聴いたのは2005年だったと思う。あれから9年。新居さんの音楽はますます成熟してきた。これからがますます楽しみだ。

  昨日書いた映画「パガニーニ」の感想に付け加えておく。書き忘れていたことがある。

 シャーロットが歌の練習として歌っていた曲は、シューベルトの「糸をつむぐグレートヒェン」。いうまでもなく、「ファウスト」の一場面であって、悪魔に魂を売って若さを手に入れたファウストを思ってグレートヒェンが一途な思いを歌う歌。これはこの映画全体を象徴しているだろう。この映画はまさに「ファウスト」の別ヴァージョンといえるだろう。

 映画を見ながらこのことを考えていたのだが、昨日、書き忘れていたので、ここに加えておく。

 

 

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投稿: cheap Bears jerseys from china free shipping | 2014年8月21日 (木) 20時58分

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