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山田和樹+スイス・ロマンド管弦楽団 語り口のうまさに舌を巻いた!!

 7月10日、東京芸術劇場で山田和樹指揮によるスイス・ロマンド管弦楽団の「都民劇場音楽サークル」の演奏を聴いた。都民劇場の一つとしてチケットを購入したものの、台風も来ていることだし、曲目がまったくもって好みではないので、「今日はやめようかな」という思いが一瞬よぎったが、行ってよかった。すばらしい演奏だった。

 前半はオネゲルの交響的運動第1番「パシフィック231」、藤倉大「Rare Gavity」、ビゼー「アルルの女」組曲より。後半「シェエラザード」。

 スイス・ロマンド管弦楽団の実力にも驚いた。色彩的で繊細で、しかも音がダイナミック。アンセルメ時代の音をなまで聴いたことはないが、全盛期はこうだったのではないかと思わせるほど。管楽器が実に美しい。「アルルの女」の「メヌエット」のフルート・ソロも抜けるような音で素晴らしかったが、ほかの楽器も負けてはいなかった。

 山田和樹の指揮はナントのラ・フォル・ジュルネで聴いたことがあり、とても良い指揮者だと思ったのだったが、今日聴いて、そんな生易しいものではないと思った。

「パシフィック231」では、オーケストラの完璧なコントロールを聞かせてくれた。音が濁ることなく重層的に響きあう。「アルルの女」では、表現の幅の広さ、描写や雰囲気を作り出す巧みさを聞かせてくれた。のどかな南フランスの田園風景が広がるような音。こんな雰囲気の演奏を聴いたことがなかった。しかも構成感がしっかりしているので、雰囲気の変化が実に自然でしなやか。「ファランドール」も実に爽快でダイナミック。まさしく音楽絵巻が展開される。

「シェエラザード」も、音そのものが表情豊かで、それぞれの表情付けが実に自然。楽器の音の美しさを存分に引き出している。まったく退屈せずに聞かせてくれる。

 ビゼーやリムスキー=コルサコフは好きな作曲家ではない。今日の演目は、正直言って私が「つまらない曲」と思っているものばかり。ところが、その私が「アルルの女」に感動し、「シェエラザード」では何度か魂が震えた。まるでブルックナーに感動した時のように。

 山田和樹は1979年生まれというから、まだ35歳ほど。それなのに、まるでカラヤンやヤンソンス並みの語り口のうまさではないか! 末恐ろしいとしか言いようがない。

 アンコールは知らない曲2曲だった。張り紙を見たら、シュレーカー作曲、舞踏劇「ロココ」よりマドリガルと、コルンゴルトの「シュトラウシアーナ」だという。これも見事な演奏。

 ともあれ、山田和樹という若い指揮者のすさまじい才能を思い知ったコンサートだった。

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コメント

久しぶりに閲覧致しました。僕は7/10は聴きませんでしたが、前日に同じ会場で行われた武蔵野合唱団定期演奏会に山田さん指揮スイス・ロマンドを迎えるという趣向で、アマチュア離れしたコーラスの実力はもちろん、ロマンド菅の芳醇な演奏でメンデルスゾーンの交響曲2を堪能しました。前半は三善晃が文部省唱歌からお馴染みの5曲を編曲して組曲仕立てにしたピアノ伴奏合唱曲『唱歌の四季』に、更に別の日本人が管弦楽伴奏にアレンジしたバージョンが演奏されました。モダンな手法を控え目に凝らした三善編曲に、アンセルメ以来の黄金時代が来るか?と思わせるオケが色彩豊かに華を沿えていました。

投稿: 崎田幸一 | 2014年8月 5日 (火) 21時31分

崎田幸一 様
コメント、ありがとうございます。
そのコンサートについてはまったく知りませんでした。しかし、それにしても、山田さんは若いのに、何でもできるんですね。そして、スイスロマン度管弦楽団のこれからが楽しみです。

投稿: 樋口裕一 | 2014年8月 7日 (木) 21時49分

7/10聴いておりました。

最初の演目が始まって数秒くらいで、おお、これは!?と思いました。
その高揚感と驚きはそのまま最後まで途絶えること無く続き、終わった後も、奇跡的な何かを目の前にしていたのだなという感慨にひたっていました。

樋口さんの描写で、うんうんそうだったと改めて思い出すことができました。

投稿: チャーリー斎藤 | 2014年8月 8日 (金) 08時23分

チャーリー斎藤 様
コメント、ありがとうございます。
本当に素晴らしい演奏でした。奇跡というのか、魔法にかけられたというのか、そんな感じがしました。山田和樹、末恐ろしい…、いや、それを越している。そして、スイス・ロマンドの今後も実に楽しみ。そう思いました。

投稿: 樋口裕一 | 2014年8月12日 (火) 16時56分

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