ザルツブルク音楽祭 ドホナーニ+フィルハーモニア管弦楽団の見事な演奏
8月7日、ザルツブルク音楽祭2014の祝祭大劇場でクリストフ・フォン・ドホナーニ指揮、フィルハーモニア管弦楽団のコンサートを聴いた。
前半は、カミラ・ティリングのソプラノでシュトラウスの「四つの最後の歌」。後半はブルックナーの交響曲第9番。ともに私の大好きな曲だ。「四つの最後の歌」は、おそらく発売されているCDのすべてを所有しているはず。
当初、ソプラノはウェストブルックと発表されていたので、本日の出演者を見て少し失望したが、実際に歌を聴いてみると、素晴らしかった。細身の声で、繊細に歌う。しかし、芯のしっかりした強い声。この歌にぴったり。音程も正確で、微妙な色彩の変化を的確にとらえて、まさしくシュトラウス晩年の世界を描き出している。素晴らしい歌手だと思った。とりわけ、第3曲「眠りにつくとき」は絶品。ヴァイオリンソロもよかった。ドホナーニの指揮も、控えめながらしっかりと彩りをとらえて見事。
ドホナーニは私のひいきの指揮者の一人だ。1970年代にパリのオペラ座(もちろん、バスティーユができる前のガルニエ座)で「フィガロの結婚」(伯爵夫人はマーガレット・プライス、ケルビーノはテレサ・ベルガンサだった!)を聴いて驚嘆してから、追いかけてきた。実演もかなり聴いたし、CDも数十枚持っている。過度な思い入れがなく、知的でドライで都会的で、しかもリズム感が良く、バランスが良く、生き生きとしたところに私はしばしば感動してきた。ドライな中に隠れた悲しみ、隠れたドラマがあるのを感じる。ウィーンフィルを振ったメンデルスゾーンの交響曲全集や、クリーヴランドを振ったベートーヴェンの交響曲全集は特に素晴らしい。日本ではなぜか人気がないが、大巨匠の一人だと信じている。
ただ、実は実演を聴く前から少し嫌な予感はしていた。私は、これまでドホナーニのブルックナー演奏のCDに感動したことがないのだ。
そして、予感が当たった。もちろん、悪くない。見事なバランス。フィルハーモニア管も素晴らしい。鮮明な音で鳴らすべきところは鳴らし、スケール大きく盛り上がる。細かいところまで神経の行き届いた演奏。ただ、私のブルックナー観からすると、あまりに知的。ブルックナー特有の田舎臭さ、武骨さがない。宗教的法悦もない。もちろん、私が勝手にも思い描いているブルックナー像でしかないし、ドホナーニはむしろそれを崩したいのだと思うが、私は違和感を拭い去ることができなかった。
ドホナーニがこのような演奏をするというのは、ある程度、予想ができたことだ。単に私のブルックナー観が少し古臭いのかもしれないと思う。
それにしても、ドホナーニも老けたなあ・・・と改めて思った。私は前から2列目のほぼ真正面。ドホナーニの顔の表情、筋肉の揺れの一つ一つを見ることができた。考えてみると、私が最初にドホナーニに惚れこんだのは40年近く前。まだドホナーニは40代だった。
ともあれ、今日は大好きな「四つの最後の歌」の素晴らしい演奏を、歌手の真正面で聴けたことで大満足。
ザルツブルクは昼間は20度から25度の間くらい。夜はぐっと冷えて、昨晩はネットでみると13度という表示になっていた。必要ないだろうと思いながら念のためにスーツケースに入れておいたセーターを着込んだ。日本の暑い夏を過ごしている家族、友人、仕事仲間に申し訳ない気がする・・・
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