« ザルツブルク音楽祭 「フィエラブラス」 演奏は素晴らしかった | トップページ | パリ、そしてシャルトル »

シュトゥットガルトでひと時を過ごす

 午前中にザルツブルクを出て、ミュンヘンで乗り換えて、午後、シュトゥットガルトに到着。駅のすぐ近くのホテル(ザルツブルクで泊まったのと同じ系列のモーテルワンというホテル。安くて清潔で機能的。とてもよい。ただ、ザルツブルクでは、音楽祭の客だったので、室内に電話機がなくて、ごみ箱が洗面所にしかないのはよいとしても、クリーニング・サービスがないのには困った)に入って、すぐに市内見物をした。

 シュトゥットガルトに寄ったのには深い理由はない。パリで娘と合流しようと思っているのだが、それには一日余裕があるので、フランクフルトから比較的近くのドイツの地方都市を見てみたいと思っただけ。1970年代、幻の指揮者だったチェリビダッケの指揮するシュトゥットガルト放送交響楽団のブルックナーの録音の数々を感激して聴いた記憶があるので、私にはずっとなじみの都市だった。

 ただ、思いのほか大都市。人口60万人くらいらしい。市内を見て回ったが、本当に素晴らしい町。歴史にあふれ、清潔できれいで、落ち着いている。ドイツの地方都市のほとんどがこのような感じなのだろう。こんなところ寄り道していないで、さっさとパリに行くほうが安全ではないかと思っていたが、来てよかった。フランクフルトにもミュンヘンにもない、そしてもちろんザルツブルクのような観光地にはない魅力がある。

 新宮殿も旧宮殿も、州立劇場も魅力的な建物。雑音が少なく、物静か。とりわけ観光名所があるわけではないが、ドイツの普通の人たちの生活を見ることができる。大都市のわりには、落ち着いた佇まい。シュロス公園も、きれいに整備されて、実に心地よかった。

 ところで、ドイツのいくつかの都市、そしてザルツブルクを回って気づいたことをいくつか挙げてみる。

・魚が好きなので、ザルツブルクでもNORDSEEという魚のファストフードの店にほとんど一日おきくらいに通っていた。同じ店をシュトゥットガルトの駅に見つけた。寿司が置いてあったので、つい買って食べてみたら、お米があまりにまずくて食べられたものではなかった。これが寿司と思われると、非常に心外。また、フランクフルトのアジアンスナックに入ったとき、緑茶のペットボトルを見つけて、うれしさのあまり購入。すぐに飲んでみたら、なんと砂糖入りだった。その後、ミュンヘンでも同じようなものを見かけたが、確かめてみたら砂糖入りの表示があった。

・こちらに来てすぐの時、やたらと妊娠している人が多いと思った。さすが、ヨーロッパは少子化に歯止めをかける政策をとっているのだろうかと感心していた。が、妊娠しているとは思えない女性(小学生に見える子や50歳を越した女性)もまるで妊娠しているかのような腹部。こちらのものを食べると、こんなことになるのだろうか。

・ザルツブルクの観光客に日本人が少ない。東洋系のほとんどが中国人か韓国人。むしろ、ブルカ姿のイスラム系の人が目立つ。ただ、音楽祭の会場に行ってみると、日本人が多い。とりわけ、「ドン・ジョヴァンニ」の日は日本人がかなり目立った。音楽祭以外の観光でザルツブルクに来る日本人が少ないのか。その分、日本は成熟しているということか。ただ、ザルツブルク以外の都市でも同じようなことを感じる。日本人よりも中国人、韓国人が目立つ。日本は不景気? それとも、内向きになっている?

・ザルツァッハ川沿いの遊歩道では散歩する人、語らう人、恋人たち、観光客などがいる。自転車道路も整備されていて、サイクリストも多い。ただ、釣りをしている人が一人もいないのに気付いた。そういえば、ヨーロッパでは釣りをしている人を見かけない。このくらいの川であれば、日本なら必ず何人か釣りをしている人を見かけるのだが。魚がいないのか、釣りの習慣がないのか。

・祝祭大劇場でオーケストラのコンサートが開かれるとき、オペラではオーケストラピットになる部分にふたをする形で、会場が作られる。前方の席に座ると、そのオーケストラのメンバーのいる場所の床が見える。その汚さには唖然とする。埃がたまり、テープの剥げあとも残っている。拭いた形跡がない。数年間掃除していない工場の床のような感じ。こんなところでウィーンフィルが圧倒的な名演奏をしているとは! 日本のホールの床はぴかぴかに磨いているのに。

・最初に「ばらの騎士」を見た時のこと。前の席にドイツ語を話す3人姉妹がいた。中学生から高校生くらい。顔が似ていたので姉妹だと思う。みんなとても可愛らしい。ところが、例によって、演奏中もしばしば話をする。ほかの人もよくしゃべるが、この3人はそのレベルではなかった。何度か注意しようかと思ったが、周囲のドイツ人だかオーストリア人だかが何も言わないのに、東洋人がわからない言葉で注意しても仕方があるまいと思って黙っていた。ところが、第二幕に入ると、彼女たちは話をしなくなっていた。そして、周囲のおじさんたちと仲良しになって、何やら冗談をかわしあうようになっていた。どうやら、休憩中に、周囲の人たちがそれとなく注意し、それをきっかけにあれこれと話をするようになったようだ。これは見習うべき態度だと思った。日本人の場合、すぐにむきになって注意をする。やんわりと注意することがない。いわんや、注意されると怒ってしまって仲良くなることがない。西洋人の演奏会マナーにも困ったところは多いが、これは見習うべきだと思った。

 

|

« ザルツブルク音楽祭 「フィエラブラス」 演奏は素晴らしかった | トップページ | パリ、そしてシャルトル »

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: シュトゥットガルトでひと時を過ごす:

« ザルツブルク音楽祭 「フィエラブラス」 演奏は素晴らしかった | トップページ | パリ、そしてシャルトル »