« フレディ・ケンプ、見事な「展覧会の絵」 | トップページ | 東京03単独公演「あるがままの君でいないで」に笑い転げた »

二期会「イドメネオ」 素晴らしい上演

 9月14日、新国立劇場でアン・デア・ウィーン劇場との共同制作による二期会公演「イドメネオ」を見た。実に素晴らしかった。

 主役三人がとりわけ素晴らしい。イドメネオの与儀巧は伸びのある美声で、余裕を持って歌う。声量もあり、演技も見事。私はこの人の歌を初めて聴いたが、世界に通用する本格的なテノールが出てきたことに驚いた。これからいろいろな役に挑んでほしい。

 イダマンテは山下牧子。実は私の大好きな歌手の一人。安定した声で伸びもあり、言うことなし。とりわけ二重唱のうまさは特筆ものだと思う。エレットラの大隅智佳子もものすごい迫力。この人も私のひいきの歌手だ。エレットラにぴったりの声。駄々っ子のようなエレットラの人物造型も面白く、それをコミカルに、しかも魅力的に演じていた。

 イリアの新垣有希子もとても可憐でよかった。初めのころ、少し緊張気味のような気がしたが、徐々にほぐれて、最後は実にのびのびと美しく歌ってくれた。

 そして、指揮の準・メルクルもメリハリのあるとてもよい演奏。とてもわかりやすく、しかも美しい。しっかりとまとめて、東京交響楽団の美しさを引き出していた。フルートの音にほれぼれした。

 演出はダミアーノ・ミキエレット。

 靴の散乱した舞台。靴は死体を暗示しているのだろう。このオペラはトロイ戦争後、多くの人が犠牲になった後の話であり、民衆の多くが怪獣の犠牲になる。そうした中、「死」がテーマとなって重苦しく、ドラマティックにオペラは展開する。

 実は私はこのオペラの実演を見るのは今回が初めて。録音や映像でも、あわせて10回くらいしか聴いたことがないと思う。あまり上演されないだけあって、やはりオペラとしてあまりおもしろくないと思っていた。台本があまりに平板。ところが、この演出は台本の平板さを上手に補って、ドラマティックで起伏のあるオペラにしている。

 イリヤのお腹が大きいので、てっきり新垣さんがおめでただとばかり思っていたら、演出だったらしい。どうやらイリヤはイダマンテの子どもを宿しているということのようだ。最後には、なんと舞台上でイリヤがお産をする! こんなストーリーにしていいんだろうか、そもそも最後にこんな音楽はあったんだっけ?・・・という疑問はさておき、それはそれでとてもおもしろい。このオペラを父と子の物語、そして、子供の独立の物語にしている。イダマンテは父との確執を乗り越え、自分の子どもを持つ一人の大人になっていく。なるほど、モーツァルト自身も、このオペラを作曲した25歳のころ、父レオポルトとの間で同じような思いを抱いていただろう。確かにこのオペラにそのような要素がある。それを実に手際よく、おもしろく、わかりやすく、ドラマティックに見せてくれている。

 いつもの二期会の公演のとおり、歌手は全員が日本人。世界のオペラハウスに引けを取らないと思う。本当に素晴らしい上演だった。

 ・・・というわけで、今日もオペラを見てしまって、しかも、ブログにまで書いて、肝心の仕事がはかどらず。これは実は非常にまずい状況・・・

|

« フレディ・ケンプ、見事な「展覧会の絵」 | トップページ | 東京03単独公演「あるがままの君でいないで」に笑い転げた »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/60314554

この記事へのトラックバック一覧です: 二期会「イドメネオ」 素晴らしい上演:

« フレディ・ケンプ、見事な「展覧会の絵」 | トップページ | 東京03単独公演「あるがままの君でいないで」に笑い転げた »