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メッツマッハー+新日フィルのベートーヴェンに興奮

 929日、サイトリーホールで、インゴ・メッツマッハー指揮、新日本フィルハーモニーの演奏で、ツィンマーマンの大オーケストラのためのプレリュード「フォトプトシス」(日本初演)と「ユビュ王の晩餐のための音楽」、そして、ベートーヴェンの交響曲第7番を聴いた。

 ツィンマーマンの曲はなかなかおもしろかった。ザルツブルク音楽祭で、一昨年、メッツマッハーの指揮する「軍人たち」を見て、とてもおもしろく感じたが、この作曲家は、いわゆる「現代曲」になじみのない私のような人間にも十分に味わえる。しかも、これらの曲は、ベートーヴェンの第九やら「法悦の詩」やら、「ワルキューレ」「幻想交響曲」やらの引用が出てくるので飽きない。すさまじい絶望と皮肉が音楽という形をとって吐き出される。すさまじい迫力。フランスの詩人アルフレッド・ジャリの原作に基づく「ユビュ王の晩餐のための音楽」には青森県で活躍する劇作家の長谷川孝治さんのオリジナルの語りが入った。

ただ、私には長谷川さんの語りは、ジャリ原作の「ユビュ王」の世界とかけ離れすぎていると思える。学生のころ読んだきりなので、よく覚えていないが、ジャリの世界は絶望と怒りと皮肉と狂気にあふれていたと思う。ところが、長谷川さんの語りは、きわめて常識的なもの。朝日新聞的な平和主義、あるいは他人の心を思いやることを重視する思想。しかも、仏教に関して言及されるので、むしろ、宮沢賢治の世界に近い。なぜ、このような音楽にこのような語りが入ったのか、私にはまったく理解できない。むしろ正反対の世界だと思うのだが。

後半のベートーヴェンは凄まじかった。メッツマッハーの面目躍如とでもいうか。切れの良い音が重層的に鳴り響き、ぐいぐいと音楽を推進し、論理的に音を畳みかけていく。それぞれの音に表情があるが、それがきわめて理に適っていて、流れも自然。それほど個性的なことはしていないと思うのだが、聞こえてくる音は斬新で生き生きとしている。

私は第一楽章の最初の音から、暗い情念を含みながらも、音そのものはクリアである独特の世界に驚嘆した。ひたすら音楽に引きこまれ、ほとんど興奮状態にいた。

新日フィルも素晴らしいオケだと思った。管楽器の活躍が見事。低弦も実に充実していて、ベートーヴェンのドラマティックな世界を高めていた。

メッツマッハーの振る新日フィルを少し追いかけてみたいと思った。

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