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ダン・タイ・ソンとウィーン弦楽四重奏団 

  20141125日、武蔵の市民文化会館で二つのコンサートを聴いた。午後は、ダン・タイ・ソンのピアノリサイタル、夜はウィーン弦楽四重奏団。

まず、ダン・タイ・ソン。素晴らしかった。

 これまでなんどもこのブログに書いたとおり、私はピアノのソロ曲はあまり聴かない。だから、ダン・タイ・ソンを聴くのも、録音も含めて初めてだと思う。もちろん名前はずっと昔から知っていた。1992年に初めてベトナムに行った時、ベトナム人ガイドに誇らしげに「ダン・タイ・ソンを知っているか」と聞かれたのをよく覚えている。

 前半はラヴェル。「高雅で感傷的なワルツ」「ソナチネ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「水の戯れ」「ラ・ヴァルス」。いずれもかなり硬質な演奏。かなり速めで、フランス的エスプリのようなものも、風雅な雰囲気もあまり感じない。飾りをすべて排し、本質だけを取り出したかのよう。強くて透明な音で、音だけをとりだす。が、結果的に高貴な音楽が生まれ出る。とりわけ、「ラ・ファルス」が凄まじかった。これまで私が聴いてきたこの曲はもっと色彩豊かで、もっと香りにあふれていた。が、ダン・タイ・ソンの演奏はもっと男性的で強くて透明。あまり色彩や香りは感じない。だが、力感があり躍動があり魂のうごめきがある。

 私は、音楽雑誌などを読んだ記憶から、ダン・タイ・ソンというのはもっと感情移入の激しい音楽を作る人かと思っていたのだが、今日の演奏を聴く限り、あまりそんな感じはなかった。むしろ抑制的で強靭な印象が強い。ダン・タイ・ソンの音楽性が変化しつつあるのか、あるいは今日の演奏だけがそうだったの、あるいは、私の受け取り方に問題があるのか。

 後半のスカルラッティのソナタも、ショパンのノクターン変ホ長調 op.55-2、ハ短調 op.48-1、そしてポロネーズ第2番、ポロネーズ第6番「英雄」も同じように感じた。「英雄ポロネーズ」はまさしく「ラ・ヴァルス」のような演奏。一般に良く演奏される飾りの多いショパンとはまったく異なる。感傷もない。本質を抉り出し、不要なものをすべて排した中にロマンティズムをつかみだしたようなショパン。すさまじい迫力だった。

 アンコールは、ショパンのノクターン第2番とプロコフィエフ「つかの間の幻影」第10番だとのこと。これも見事。

 

 夜は、顔ぶれは少し変わっているが昔から馴染んできたウィーン弦楽四重奏団。メンバーみんながかなり老けていることにある種の感慨を覚えた。

が、演奏が始まると、出てくる音の響きは、まさしくウィーン弦楽四重奏団。昔、ウェストミンスターの録音で聴いたヴェラー弦楽四重奏団やらウィーン・コンチェルトハウス弦楽四重奏団と同じような響きがするではないか。昨日聴いたヴォーチェ弦楽四重奏団となんという違い。古めかしい趣があり、厚みがあり、香りがある。まさにウィーン情緒。素晴らしい音。この音だけでうっとりする。

 演奏曲目は、前半にハイドンの「皇帝」とドヴォルザークの「アメリカ」、後半にシューベルトの「死と乙女」。いずれもニックネームのついた弦楽四重奏曲。

 とても良い演奏だったと思うが、実は、私はあまり深い感動を覚えなかった。響きは素晴らしい。が、あまり躍動しなかったし、おとなしすぎるように感じた。現代風のメリハリの強い、劇的な要素の強い演奏に慣れ過ぎてしまったのか、このようなウィーン情緒にあふれる演奏を物足りなく思う。もっと躍動し、もっと爆発し、もっと感情をぶつけてもよいのではないかと思ってしまう。とりわけ、「死と乙女」の第二楽章を物足りなく思った。

それに、音程の甘さを何度か感じたのは、私の耳のせいだったのだろうか。

弦楽四重奏曲第17番「狩」より第3楽章。これもよい演奏だったが、私は深く感動するには至らなかった。

そうはいうものの、このレベルのコンサートを二つ聴いて、今日は実に幸せ。充実した一日だった。

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