ユンディ・リのベートーヴェン クールな情熱に感動
11月4日、武蔵野市民文化会館でユンディ・リのリサイタルを聴いた。
リのピアノを聴くのは、実は録音も含めて初めて。私はあまりピアノを聴かないのだが、武蔵野でやってくれるのなら聴いてみようと思った次第。
前半にベートーヴェンの「月光」と「悲愴」。後半にショパンのノクターンの第1・2番、そのあとベートーヴェンの「熱情」。超有名曲集。素晴らしかった。感動した。
気張ることなく自然体でさりげなく弾き始める。曲と曲の合間もほとんどとらない。ベートーヴェンも誇張することなく、さらさらと演奏していく。しかし、一つ一つの音に芯があり、輝きがある。だから、心の奥底に響く。音はあくまでもクール。情熱を表に出すようなことはしない。形も崩れない。しかし、そうでありながら盛り上がっていく。クールな情熱とでもいうか。不思議な魅力だと思う。
ショパンも過度にロマンティックではない。抑制され、これもかなりクール。テンポも動かさないし、思い入れもない。だが、一つ一つの音に歌があるので、実に心地よい。こういうショパンなら、私は大好きだ。
「熱情」はとりわけ圧巻だった。透明で鋭くて強靭な美音が響き渡る。情緒に訴えるというよりも、もっと奥深くに訴えてくる。技術は完璧、構築性も文句なし。鮮烈でヴィヴィッドで芯の強いベートーヴェン。
ピアノに疎い私は、単に外見による先入観で、ユンディ・リというのは、もっと華やかで外面的な演奏をするのかと思っていた。が、とんでもない。きわめて内面的で知的な演奏をする人のようだ。
アンコールは、twitterで見たら、任光/王建中編「彩雲追月」と青海民謡/張朝編「遥か遠くのそのまた彼方」、そして最後がリスト「タランテラ」。リストがすごかった。超絶技巧の曲をあっさりと、これもクールに弾きこなす。完璧な技巧で、十分に華やかなのだが、それにも増して、研ぎ澄まされた精神世界が描き出される。決して外面的なだけの華やかさではない。圧倒された。
ピアノのソロ曲を避けていた私も、このような演奏を聴くと、ピアノ音楽の虜になりそう・・・
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コメント
私も今夜一緒の会場にいました。この手のコンサートに来るのは久しぶりだったのですが圧倒される演奏でしたね。アンコール曲は何だったのだろうと検索していたら、もうブログ記事にupされている方がいる、有難やー、クリック・・・でここに辿り着きました。
アンコール曲は「こう来たか」といい意味で期待を裏切られました。ユンディさんもアンコール曲ではとてもリラックスして演奏されてるように見えましたね。
今夜の余韻に浸りながら数日過ごせそうです。(゚ー゚)
ついついコメントを残したくなりこれを書いています。
投稿: 同じく | 2014年11月 5日 (水) 01時53分
同じく 様
コメント、ありがとうございます。
ネットで検索してみたのですが、あまり感想をアップしている人はいないようですね。それに興奮を書いてくれている人はいないようです。私は、最初から、あのさりげない音楽の作りに強く惹かれました。むしろ過度に盛り上げないところが素晴らしいと思ったのでした。
しかし、それにしてもアンコールの「タランテラ」は圧倒的でした。あれを聴かされると、ファンになるしかないと思ってしまいました。
投稿: 樋口裕一 | 2014年11月 9日 (日) 07時45分