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シュタインバッハーの気品と香りにあふれたフランクのソナタ

 2014126日、川口リリアホールでアラベラ・美歩・シュタインバッハーのヴァイオリン・リサイタルを聴いた。ピアノ伴奏はロベルト・クーレック。

 シュタインバッハーは、数年前、東響と共演したブラームスの協奏曲を聞いた記憶がある。その時は、出だしの音に派手な失敗をしたために前半、かなりぎくしゃくした演奏だったのを覚えている。しかも、指揮が私の好みではなかった。とはいえ、そのときもだんだん持ち直して、後半は素晴らしい演奏だった。シュタインバッハーの演奏するCDも何枚か持っているが、いずれもとても気に入っている。そんなわけで、もう一度聞いてみたいと思っていた。川口でリサイタルがあるというので、我が家からかなり遠いこの地まで足を運んだ。リリアホールは初めて。

 曲目は、前半にモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ 第18番とフランクのヴァイオリン・ソナタ。後半にプロコフィエフの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとシュトラウスのヴァイオリン・ソナタ。まさしく盛りだくさん。

 モーツァルトは、実に美しい。のびのびとして自然で気高い。フランクはかなりドラマティックだが、無理に盛り上げようとせず、素直にじわじわと盛り上げていく。しなやかで香りがある。私は第1楽章のあまりの美しさに涙が出そうになった。フランス的な演奏といえるのではないか。

 モーツァルトとフランクの2曲は数か月前、ネマニャの演奏で聴いたが、起伏が大きく、きわめて刺激的なネマニャと本日のシュタインバッハーはまさしく対照的。私はどちらのタイプも好きだ。

 クーレックはシュタインバッハーとコンビを組んでいるピアニストであって、とても鮮明できれいな音を出す。が、少々興奮する傾向があるらしい。シュタインバッハーよりも盛り上がっていく。ただ、そうなるとちょっと雑になる。第2楽章で1小節か2小節ほど、ふだん聞きなれているのとは異なる音になったが、別のヴァージョンがあるわけではあるまい。興奮のあまり指がついていかなくなって、あわててごまかしたように思えた。

 プロコフィエフの無伴奏ソナタもとてもよかった。無理がない。プロコフィエフの天衣無縫というべき音の世界が築かれる。何かの思いを込めるというよりは、自然の音を出している感じ。しかし、そこに自然で気品ある音楽ができていく。

 ただ、リヒャルト・シュトラウスのソナタについては少し不満を抱いた。この曲はもっと外連味(ケレンミ)を持って演奏しないとおもしろくならない。これを真正面から演奏すると、少々退屈になる。何しろ、将来の大オペラ作曲家の若書きのソナタなのだ。精神的な深さを求めるよりも外面的な効果を出すほうが、この曲にふさわしいと思う。もちろん、良くも悪くも、このような演奏をするのがこのヴァイオリニストなのだということだろう。

 アンコールはベートーヴェンのソナタ第10番第2楽章。このヴァイオリニストらしいはったりのないしっかりとした演奏。とても良かった。

 それにしても、シュタインバッハーという世界を代表するヴァイオリニストのリサイタルであるにもかかわらず、空席が目立った。なんともったいないことだろう。

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