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大分オペラフェスティバル「フィガロの結婚」は見事だった

 様々な事情があって、大分県に来ている。

が、ともあれ本日は大分オペラフェスティバルの第一弾「フィガロの結婚」をiichiko総合文化センターiichikoグランシアタで楽しんだ。

 主催するのは、大分県立芸術短期大学と文化庁。大分二期会が協力。東京二期会理事長でもある大分県立芸術短期大学の中山欣吾学長の尽力で実現した大掛かりな事業だ。中山さんは私の高校の大先輩であり、以前から親しくさせていただいている。私の故郷である大分県、そして私が小学校5年生から高校3年生まで過ごした大分市でこのような本格的なこのフェスティバルが行われることは実にめでたい。心から応援したい。以前から中山さんにこのフェスティバルの話を聞いて、ぜひとも足を運びたいと思っていた。

 全体的に、とてもレベルの高い上演だった。多少、不安定なところや、こわごわ演じているところを感じないでもないが、このレベルの「フィガロの結婚」が地方都市で上演されるはきわめて稀だと間違いなく言えるだろう。

 歌手陣は若手中心。全員が大健闘。私はとりわけ、女声陣が気にいった。伯爵夫人の上田雅美はとてもきれいな声でしみじみとした情感が見事。スザンナの小林朋代は第一幕では少し不安定だったが、第二幕では自在に歌う感じで持ち味を発揮。ケルビーノの中川美和も可愛らしい雰囲気を出してとてもいい。そして、マルチェリーナの石井藍も安定したきれいなアルト。男声陣では伯爵の馬場眞二が迫力のある声。バルトロの河野鉄平もしっかりした声で不思議な雰囲気を出していた。フィガロ役の安藤常光は懸命に歌って演技しているのが伝わりすぎて、フィガロらしいユーモアやゆとりが不足しているのが気になった。

 何よりもよかったのは、オーケストラ。大分芸術短大の学生やOBを中心としたメンバーだというが、きれいな切れの良い音で、しかもワクワク感が十分にある。指揮は大分芸術短大准教授の森口真司。指揮についても、もっと思い切りよく鳴らすところがあってもよいように思ったが、しっかりとまとめている。

 飯塚励生による演出は簡素な舞台によるオーソドックスなもの。様々な障害をクリアするためにこのような演出にしたのだと思う。とても美しく、わかりやすい。ただ、第一幕で笑いが不発だったのが惜しまれる。

 東京のオペラの客に比べて年齢層が圧倒的に若いのに驚いた。小学生や中学生も見かけた。若者もかなりいた。販売担当者がいかに苦労したかがしのばれる。初めてこのオペラを見る人が大多数のようで、まさにプリミティブな反応が多かったが、私としては初々しくてうれしかった。日本中のクラシック公演がこのように若い人の集まる場であったら、どんなにいいだろう。

 大分で「フィガロの結婚」公演を見るのは、私としては実に感慨深い。

 今から半世紀近く前の1968年、大分県民オペラが始まり、その第一回目に「フィガロの結婚」が上演されたのだった。

 大分県は、滝廉太郎が育った土地であり、日本のオペラ界をリードした中山悌一、藤原義江の故郷(つまりは、日本の二つの大きなオペラ組織である二期会と藤原歌劇団の両方とも、その中心的な創設メンバーが大分県関係者だった)でもあって、保守的な風土のわりにクラシック音楽の土壌がある。「県民オペラ」が行われたのも大分が最初だった。大分県民オペラは、その後、清水脩作曲の「吉四六昇天」という名作オペラを誕生させ、今も続いている。大分県の誇りの一つだと思っている。

1968年の大分県民オペラ公演でフィガロを歌ったのは、当時の日本のオペラ界の大スターで、紅白歌合戦にも出演するほど一般的な人気も高かった立川澄人(のちに立川清登と改名。大分市の出身で、私の小学校・中学校の大先輩にもあたる)で、それ以外は大分県在住のアマチュアの歌手たちだった。オーケストラは大分交響楽団というアマチュア・オーケストラ。

 そのころ、私は高校生。すでにオペラの全曲盤のレコードもかなり聴いており、レコード店に入りびたりだったので、招待券をもらって大分文化会館に出向いた。これが私のオペラの実演を鑑賞した最初の経験だった。正直に言って、立川澄人だけが突出して、そのほかはかなり低いレベルの上演だった。が、生のオペラの力に圧倒されたのを覚えている。

それに比べると、本日の上演のレベルは圧倒的に素晴らしい。隔世の感がある。

大分オペラフェスティバルの第一回の『フィガロの結婚』は大成功だったといえるのではないか。これからも、フェスティバルの成功が続くことを祈る。そして、大分でオペラが、そしてクラシック音楽がもっと盛んになってほしい。切にそう願う。

オペラを見た後、両親のいる大分県日田市に移動。

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