« 2014年ベートーヴェンは凄い!の凄まじい第九で2015年になった | トップページ | 大分オペラフェスティバル「フィガロの結婚」は見事だった »

正月もロッシーニのオペラ映像で過ごした

 冬休みが終わって、いよいよ2015年の新学期が始まった。

正月の間、ずっと前に書き始めて途中で挫折していた原稿を再びとりだして、少しずつ書いていた。出版社に依頼されたわけではないし、本になるかどうかもわからないが、そろそろ考えをまとめておきたいと思ったのだった。これをきちんと書くには、もう少し勉強しなければならない。春休みになったら、再開することにして、本日から数週間は依頼された仕事にかかることにする。

 正月中、ロッシーニのオペラ映像を何本か見た。本当にロッシーニは楽しい。ワーグナーには心の奥底から感動し、シュトラウスにはうっとりとなり、ロッシーニにはその溌剌とした生気にワクワクする。簡単に感想を書く。

 

856jpg


「セヴィリアの理髪師」ヴェネツィア、フェニーチェ劇場 
2008

  芸達者な歌手たち。とりわけ、フィガロのロベルト・フロンターリ、バルトロのブルーノ・デ・シモーネ、アルマヴィーヴァ伯爵のフランチェスコ・メーリがいい。ただ、役柄から言うと、フィガロが少し年を取りすぎている点で少し違和感はある。ロジーナのリナ・シャハムは溌剌としていて、容姿的にも歌唱的にもとても魅力的。バジーリオのジョヴァンニ・フルラネットもまるでフランツ・リストのようないでたちでおもしろい。ベッペ・モラッシによる演出はきわめてオーソドックス。色鮮やかで楽しい舞台。指揮のアントニーノ・フォリアーニもとてもよいが、私としては、もう少し躍動感がほしい気がする。

 

521jpg


「セヴィリアの理髪師」 ミュンヘン・キュヴィリエ劇場 バイエルン国立歌劇場管弦楽団
1959

 かなり前に購入したが、モノクロ画面で音声もモノラル。しかも、ドイツ語による歌唱ということに恐れをなして見ないままだった。正月を機会に見てみた。

優雅でゆっくりとした、かなり古風な演奏。しかも、歌の後に大拍手があり、歌手たちは舞台に戻って客にお辞儀をする。そういえば、私が初めて「セヴィリアの理髪師」を知ったころ、ロッシーニのオペラといえば、このように上演されていたものだ。ロッシーニ演奏の歴史的変遷を強く感じる。カットされた部分もかなり多い。

 だが、当時の演奏様式としてまさしく最高。録音状態もかなり良い。ドイツ語の歌唱には初めのうちこそ違和感を覚えるが、音を聴く限りでは、それはそれでとても良くできたドイツ語訳だと思う。

まずアルマヴィーヴァ伯爵のフリッツ・ヴンダーリヒのあまりに格調高い歌と容姿に圧倒される。稀代のテノールだったことを改めて認識。中学生のころ、すでにFM放送やレコードで「魔笛」や「ドン・ジョヴァンニ」などの演奏を知っていた私は、数か月遅れで彼の事故死の報道を読んで強いショックを受けたのを覚えている。

 フィガロを歌うヘルマン・プライも若々しく溌剌としてユーモアにあふれ、まさしくフィガロそのもの。この人こそ最高のフィガロ歌手だった。しかも、バジーリオを歌うのは私にとっては一時期、神様同然だったハンス・ホッター。不気味で滑稽なバジーリオをうまく演じている。ワーグナーやシュトラウスやシューベルトやブラームスだけでなく、ロッシーニも歌えたんだ!とびっくり。実演で聴いたプライとホッターを懐かしく思いだす。

 ロジーナを歌うのはエリカ・ケート。私はこの人の歌うレコードもかなり聴いてきた。ただ、音程に不安定さを感じるし、あまりにドイツ系のオペレッタ風の歌い回しに少し違和感を覚えないでもない。

指揮はなんとヨーゼフ・カイルベルト。オケは少し荒いが、ともあれちゃんとチャーミングな魅力を出している。最高に楽しめる。歴史的価値があるだけでなく、音楽としても素晴らしい。メリハリがあり、実に楽しい。

往年の野球ファンが、川上、長嶋、王、野村、張本、金田の活躍する昔のオールスター戦の映像を見た気分。やはりこの人たちは凄かった、と改めて思った。

 

534jpg


「ひどい誤解」 2008年 ペーザロ・ロッシーニ・フェスティヴァル 

 富豪の娘と婚約した軽薄男が、「あの娘は実は去勢した男」と聞かされ、それを真に受けて破談になり、別の誠実な男性が娘の心を射止める・・・という喜劇。とてもおもしろい。音楽もいいし、演奏も実に洒落ていておもしろい。

 ガンベロットを歌うベテランのブルーノ・デ・シモーネ以外はかなりの若手だが、実力者ぞろい。声、容姿ともに申し分ない。エルネスティーナを歌うマリーナ・プルデンスカヤは華麗で溌剌。ブラリッキーノを歌うマルコ・ヴィンコは軽薄な男を、エルマンノを歌うディミトリ・コルチャクは純な男をうまく演じている。二人ともかなり若い、ウンベルト・ベネデッティ・ミケランジェリの指揮もメリハリがあり、溌剌として素晴らしい。エミリオ・サヒの演出は、時代を現代に移したものだが、まったく違和感なく、笑いながら見ていられる。色彩が美しく、センスの良さを感じる。ボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団。

 

「エルミオーネ」 2008年 ペーザロ・ロッシーニ・フェスティヴァル

 以前、NHKで放送されて録画していたもの。放送直後に見たのを思いだしたが、ほとんど初見に近い。

 古代ギリシャを題材にしたストーリー。アンドローマカ(マリアンナ・ピッツォラート)はピッロ王(グレゴリー・クンデ)に捕らわれ、息子の命を救うために、心ならずもピッロの求愛を受け入れる。ピッロを愛するエルミオーネ(ソニア・ガナッシ)は、アンドローマカが色仕掛けで王の心を奪ったと思いこみ、怒りにかられてピッロを殺すことをオレステ(アントニーノ・シラグーザ)にもちかける。が、それが実行されると、オレステをなじり、いっそう錯乱する。歌手はみんな素晴らしい。とりわけ、ガナッシの迫力、ピッツォラートの色気と気品、クンデの悪漢ぶりがとてもいい。シラグーザは、あまりに甲高い声で少し違和感を覚えるが、きっとそれは私がワーグナー的歌唱から抜け出せないせいだろう。ダニエレ・アバド演出、ロベルト・アバド指揮。つまり、クラウディオ・アバドの息子と甥の「いとこ同士」によるプロダクション。ただ、私はこのタイプのストーリーはかなり苦手。エルミオーネの愚かさにイライラしてしまって、あまり感情移入できない。とりわけ、今回のガナッシのように迫真の演技をされると、いっそう愚かに見えてしまう。とはいえ、音楽には満足。

 

「トルヴァルドとドルリスカ」 2006年 ペーザロ・ロッシーニ・フェスティヴァル

 クラシカ・ジャパンで放送されたもの。録画したままになっていた。

 ストーリー的には、ベートーヴェンの「フィデリオ」を思わせる。ドン・ピツァロのような悪漢オルドウ伯爵(ミケーレ・ペルトゥージ)に横恋慕された女性ドルリスカ(ダリーナ・タコヴァ)は、夫婦愛によって夫トルヴァルド(フランチェスコ・メーリ)に救われる。まるでロッコのような人物も登場する。ストーリーもわかりやすく、音楽もおもしろい。ロッシーニらしさ満載。マーリオ・マルトーネの演出はかなりオーソドックス。ただ、歌手については、フランチェスコ・メーリ以外はかなり弱い。とりわけドルリスカ役のダリーナ・タコヴァが音程が不安定で声が伸びない。指揮はヴィクトル・パブロ・ペレス。溌剌としていて、なかなかドラマティック。

|

« 2014年ベートーヴェンは凄い!の凄まじい第九で2015年になった | トップページ | 大分オペラフェスティバル「フィガロの結婚」は見事だった »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/60938658

この記事へのトラックバック一覧です: 正月もロッシーニのオペラ映像で過ごした:

« 2014年ベートーヴェンは凄い!の凄まじい第九で2015年になった | トップページ | 大分オペラフェスティバル「フィガロの結婚」は見事だった »