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METライブビューイング「ホフマン物語」に感動

東銀座の東劇でMETライブビューイング「ホフマン物語」を観た。感動!

このオペラには様々な版があり、中にはストーリーそのものもわかりにくいものもある。が、今回のものはメトロポリタンらしく、とてもわかりやすい。バーレット・シャーの演出も、本人が出演して語る通り、幻想的でとても魅力にあふれている。シャー自身は「カフカ的」という言葉を使っていたが、やはりこれはE.T.A.ホフマンという作家の作品を読んだことのある者(といっても日本語の訳によるけれど)にとってはきわめて「ホフマン的」に思える。怪奇的でロマンティック。まさしくホフマンの世界を楽しむことができる。

ホフマン役のヴィットーリオ・グリゴーロがあまりにすごい。自在に歌い、表現の幅が広い。この役ではドミンゴもニール・シコフも素晴らしかったが、後半の迫力たるや、それに匹敵するのではないか。絶望や嘆きの表現が実に深い。ミューズのケイト・リンジーもまったくひけをとらない。声がしっかりしている。四人の悪役を歌うトーマス・ハンプソンは、かつての声の威力は失われてちょっと不安定なところがあるが、さすがの悪魔的な存在感。この役にはこのような人がふさわしい。

オランピアのエリン・モーリーは若手育成プログラムの出身だというが、独特の声で素晴らしい。ほかの役も聴きたい。若手育成プログラムからこれほど優秀な歌手が次々と誕生してくるのだろうか。ステラとアントニアを歌うヒブラ・ゲルツマーヴァは、はじめのうちはすこし不安定だったが、どうやらセーブしていたようだ。だんだんと乗ってきて、後半は綺麗で迫力ある声量豊かな声で素晴らしかった。ジュリエッタを歌うクリスティン・ライスは少し線は細そうだが、完璧に声をコントロールして見事。私の好きなタイプの歌声だった。この人の歌ももっと聴きたい。

指揮のイーヴ・アベルについては、私は昨年だったか新国立劇場で「蝶々夫人」を聴いて感心した記憶がある。今回、前半は少し余裕のなさを感じたが、それも計算のうちだったかもしれない。後半、どんどんとドラマティックになっていった。

毎回、最高レベルの上演を見せてくれるメトロポリタン・オペラの力に改めて脱帽!!

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