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ワイダ「すべて売り物」「戦いのあとの風景」などの映画DVD

 何本か映画DVDを見た。感想を書く。

 

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「すべて売り物」

 アンジェイ・ワイダは、ピエル・パオロ・パゾリーニとミケランジェロ・アントニオーニとともに私の最も愛する映画監督だ。このブログにもこれまで何度かワイダの映画の感想を書いてきた。今回またワイダの映画がブルーレイで2本発売になっているのを見つけて購入した。

1968年の映画。あるスター俳優の新作を撮影する予定だった映画監督が、その俳優の突然の事故死によって撮影が予定通りできなくなり、ともあれ撮影を続けながら、代役を探し、映画をどう進めていくかについて悩む物語。これは、ワイダ自身が、「灰とダイヤモンド」などに主演した俳優チブルスキを事故で失った経験に基づく。スター俳優は、名前は示されないが、明らかにチブルスキに連想させるし、映画監督はワイダ自身を思わせる。ワイダ自身の2009年の映画「菖蒲」と同じような趣向の、いわば「私映画」だ。

テーマは「不在」と「死」、そして「虚」と「実」。映画は、スター俳優の死と不在を巡って展開する。監督はスター俳優に代わる別の個性の若手俳優を見出し、その俳優の生命の喜びにあふれる場面で終わる。また、撮影されている映画と、その映画を撮影するチームの状況が虚実ないまぜになって展開する。しかも、スター俳優はウソのような話をし続けた人物。だが、最後にはそれらが実話だったことがわかる。虚の中に実がある。監督は映画という虚構の中に不在・死という真実を描こうとする。とてもおもしろい。

 チブルスキは私の大好きな俳優だった。「灰とダイヤモンド」に圧倒され、「二十歳の恋」「夜の終わりに」「夜行列車」を見て大ファンになった。だが、しばらくしてすでに事故死していることを知って悲しく思ったのだった。若手俳優の役を、その後チブルスキに代わってワイダ映画の主役を務めるようになるダニエル・オルブリフスキが演じている。

 

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「戦いのあとの風景」

 1970年のワイダ作品。若くして自ら命を絶った作家タデウシュ・ポロフスキの自伝的小説に基づく。映画はナチスの強制収容所にいたポーランドの囚人たちがアメリカ軍によって解放されるところから始まる。解放に喜びにあふれるが、囚人たちはアメリカ軍の監督下で同じ収容所で暮らすことになる。主人公である詩人のタデウシュ(ダニエル・オルブリフスキ)を中心に、悲惨な体験や憎しみを引きずり、アイデンティティを見出せずに苦しみながらも何とか生きようともがく人々を描く。タデウシュはその気になれば、ポーランドに帰ることもできる状況のようだが、悲惨な記憶から逃れられず、そこから抜け出そうとしない。ユダヤ系の娘ニナと恋仲になって人生に希望を持とうとするが、ニナは流れ弾に当たって死んでしまう。ニナの裸の死体に対面した後、ポーランドへの期間を決意して、列車に向かう。

「灰とダイヤモンド」とほぼ同じ時代の同じような精神状況を描いている。美しい映像、心にしみる場面はたくさんあり、すさまじい体験をしたポーランドの人々の苦悩は伝わってくる。ただ、ポーランドの歴史を知らない人間には、状況がつかみにくく、登場人物の心情を十分に理解できないのが残念。

 

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「地獄門」

 先日、オペラ「袈裟と盛遠」をみたが、同じ題材で映画「地獄門」が作られていると知って、「日本映画永遠の名作集」9枚組DVD(なんと1848円!)を購入して、みてみた。1953年カンヌ映画祭グランプリ受賞作。以前みたことがあるつもりだったが、おそらく初めて。監督は衣笠貞之助。(その後、すぐにNHKBSで放送があった! うーん、放送を待てばよかった!)

1950年の黒澤の「羅生門」に比べると、凡庸さを感じざるを得ない。映像の表現も演技もあまりに紋切型。長谷川一夫の演じる盛遠の激しい恋情を十分に理解できない。長谷川一夫の演技ではあまり荒々しい雰囲気が出ない。盛遠が間違えて袈裟を殺してしまうのも納得がいかない。現代人からすると、もう少し踏み込んで心理や人間像を描いてほしい気がする。袈裟は京マチ子、渡は山形勲が演じている。そのほか、195060年代に時代劇を見て育った私には懐かしい俳優たちが出演している。千田昌也が平清盛を演じていた。ちょっと退屈した。

 

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「モンテ・クリスト 巌窟王」

 日本テレビで夜中に放送されていたアメリカの連続ドラマ「パーソン・オブ・インタレスト」がおもしろい。ファーストシーズンの初回の放送をたまたま見て、その後やめられなくなり、DVDを購入してまでみている。主演のジム・カヴィーゼルがモンテ・クリストを演じていると知って、2002年のイギリス・アイルランド合作映画「モンテ・クリスト 巌窟王」のDVDを購入してみた。もちろん子どものころ、「巌窟王」は大好きで繰り返し読んだが、アレクサンドル・デュマの原作を読んだことがない。映画で楽しもうと思った。

 監督はケヴィン・レイノルズ。娯楽映画としてとてもおもしろい。まさしく娯楽映画の王道。大作を手際よくスピーディーなドラマに仕立てあげている。まったく飽きずにドキドキしながら、しかも爽快な気持ちで見ることができる。主役のカヴィーゼル、敵役のガイ・ピアースもいいし、メルセデスを演じるダグマーラ・ドミンスクが美しい。アレクサンドル・デュマの魅力を存分にみせてくれる。子どものころは気にもかけなかったが、考えてみれば「モンテ・クリスト」とは「キリスト山」の意。きっと原作はもっと宗教的な意味合いが強いのだろう。

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