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ザルツブルクの「マイスタージンガー」、マドリード王立劇場の「イオランタ」などの圧倒的なオペラ映像

 何本かオペラのDVD、BDを見た。感想を書く。

 

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「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 2013年ザルツブルク音楽祭

 ダニエーレ・ガッティの指揮、ステファン・ヘアハイム演出、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による2013年ザルツブルク音楽祭の上演。

 演奏もとてもいい。やはり圧倒的なのはザックスを歌うミヒャエル・フォレ。見事な歌唱、見事な人物造形。アンナ・ガブラーのエーファもペーター・ゾンのダーフィトも適役。マルクス・ウェルバのベックメッサーも容姿も含めてとても魅力的。ロベルト・サッカのヴァルターはもう少し品格があれば一層役にふさわしいと思うが、特に不満ということはない。ガッティの指揮は明晰でドラマティックで実に魅力的。

 しかし、これはどうしてもヘアハイムの演出に目が行ってしまう。ワーグナーとザックスが重なり合って演じられる。赤ずきんちゃんなどが登場するが、民衆の心を象徴しているのだろう。民衆の心を共有していたザックスも最後は権威主義的になり、独善的になり、書物の上に胡坐を書くようになり、ベックメッサーと瓜二つになる・・・というメッセージを実にうまく伝える。ワーグナーが神格化されていることを揶揄する。カタリーナ・ワーグナーの演出と根底において共通するが、ヘアハイムはいっそう精緻で一つ一つの行動が台詞と符合すところがすごい。この演出家によるバイロイトの「パルジファル」はいくら何でもやりすぎだと思ったが、「マイスタージンガー」については大いに納得できた。全体的に最高に完成度の高い素晴らしい上演だと思った。

 

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チャイコフスキー「イオランタ」、マドリード王立劇場 (ストラヴィンスキー メロドラマ「ペルセフォネ」並録)

 文句なく素晴らしい。何よりもテオドール・クルレンツィスの指揮にあっと驚いた。きわめてドラマティック。おとぎ話ではなく、起伏の大きなドラマとしてこのオペラを描いている。イオランタが自分の盲目に気付くところなど、「悲愴」の第一楽章の慟哭の部分を思わせる。単に大袈裟に大きな音で演奏しているというのではなく、心の奥底をえぐるような音。実に説得力がある。確かにこれこそがチャイコフスキーの世界だろうと思う。実はこの指揮者の名前を知らなかったが、とてつもない指揮者だと思う。

 歌手は若手中心だが、とてもいい。もちろん先日見たメトロポリタンのライブビューイングほどのレベルの高さではないが、まったく不満はない。イオランタを歌うエカテリーナ・シェルバチェンコが容姿も美しく、清楚でありながらしっかりとした美声。ヴォデモンのパヴェル・ツェルノフもロベルトのアレクセイ・マルコフも見事。医師役のウィラード・ホワイトも見事な存在感。

 もう一つ特筆するべきなのは、ピーター・セラーズの演出。イオランタだけが青い服を着て、それ以外の登場人物は全員が黒い服を着ている。舞台はずっと暗い中に青いライトが当てられている。簡素な舞台に扉だけが外されたものがいくつかあり、扉のなかで演技が行われる。それぞれの人物の孤立していることを描いているのだろう。盲目の人間からすると、人間存在はそれぞれ孤立しているように見えるのだろう。イオランタが盲目の間の舞台は、イオランタの見る世界を描きだしているといえるだろう。

 イオランタの目が見えるようになった瞬間、ア・カペラによる三位一体を称える聖歌が聞こえる。おそらくチャイコフスキーの作曲ではなく、ロシア正教の聖歌だと思う。そして、その後、オペラに戻るが、空は神々しく光輝く。宗教的な色彩の強い舞台。私は大いに感動してみた。確かに最後には神をたたえる歌が続くが、これまであまり重視していなかったが、確かに深い信仰心にあふれている。演奏と演出によってそのことをわからせてくれる。

 ストラヴィンスキーのメロドラマ「ペルセフォネ」は歌手がで歌い、舞台上ではモダンバレエが展開される。ストラヴィンスキーらしい音楽でなかなかおもしろかったが、知らない曲であるし、私は「バレエ音痴」なので、「イオランタ」ほどの衝撃は受けなかった。

 

 

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ベッリーニ 「カプレーティとモンテッキ」 サンフランシスコ歌劇場 2012年

 ジョイス・ディドナートがロメオ、ニコル・キャベルがジュリエッタを歌う。ディトナートは素晴らしい歌手だが、私はシュヴァルツコップと同じように、まれに音程の不安定さを感じる(私の耳にはディドナートとシュヴァルツコップの歌い方に似ている点を感じる)のだが、このオペラの前半にそれを感じた。が、後半は私はまったく気にならなくなった。キャンベルも実にいい。美しくて可憐な声。ロメオとジュリエットの二重唱は絶品(それにしても、この二人の顔、とても良く似ていることに気付いた!)。テバルドのサイミール・ピルグ、カペッリオのエリック・オーウェンズ、ロレンツォのリ・アオ(中国人歌手だろうか?)もとてもいい。

  リッカルド・フリッツァの指揮もいいが、やはりベッリーニのオペラを聞くたびに、この人の旋律の高貴な美しさとともに、どうしてもオーケストレーションの稚拙さを感じてしまう。ヴァンサン・ブサールの演出は色彩的でとてもきれいだが、それほど独創的な着想はなかったようだ。

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