« 2015年ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 5月2日 | トップページ | 2015年ラ・フォル・ジュルネ3日目(5月4日) »

2015年 ラ・フォル・ジュルネ2日目(5月3日)

 2015年ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2日目のコンサートの感想を簡単にまとめる。

・オリヴィエ・シャルリエのヴァイオリンと指揮、兵庫芸術文化センター管弦楽団

 ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「四季」

 シャルリエのヴァイオリンが素晴らしい。激しすぎない。しかし、味わい豊か。フランスの伝統とでも言うべきか。しなやかなメリハリがあり、自然に心に届く。まったく作為を感じないのに、少しも飽きさせない。オーケストラもとてもいい。客に子どもがたくさんいた。とてもいいことだと思う。ただ、最前列の中央に小さな子どもがいて、大声を出してぐずっていたようだ。さぞかしシャルリエは演奏しづらかっただろう。そんなことはおくびにも出さずに見事な演奏をするところはさすが。子どもを連れてくるのはよいが、少し後ろの列にする方がよいように思う。

・ダニエル・ロイスの指揮)、ローザンヌ声楽・器楽アンサンブル

 バッハのモテット「来たれ、イエスよ、来たれ」「イエス、わが喜び」「主に向かって新しき歌をうたえ」

 地味だが信仰心にあふれる見事な演奏。とりわけ最後のモテットは心の奥から信仰の喜びが込み上げてくる。声がそろっていて、心地よい。

 

・小林沙羅、熊田祥子(ソプラノ)、相田麻純(メゾ・ソプラノ)、髙畠伸吾(テノール)、森雅史(バス)  井上道義の指揮によるオーケストラ・アンサンブル金沢

 バッハ カンタータ BWV147より「心と口と行いと生活で」、コラール「主よ、人の望みの喜びよ」、マニフィカート ニ長調 BWV43

 ソロのたびに歌手が舞台前方に移動してまるでオペラのアリアのように演奏する。少しピリオド楽器奏法を取り入れているのかもしれないが、基本的に現代楽器奏法。近年のバッハ演奏に逆行する今時珍しいタイプの演奏。メンゲルベルクやクレンペラー時代を思いだす。マニフィカートという派手な曲なのでそれが可能なのだろう。もちろん、マエストロ井上が意図的にそうしたのだろうし、それはそれでおもしろく聴けたが、私には違和感がある。バッハの精神と違い過ぎる気がする。歌手は女性陣がよかった。

 

・プラジャーク弦楽四重奏団

 ベルク「抒情組曲」、ヤナーチェクの弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」

 素晴らしい演奏。とりわけ、ヤナーチェクは得意の曲なのだろう。年下の人妻に恋をした作曲者の心境を感じる演奏。老人の心の中に激しい本能のうずきが起こる。平和な気持ちも生まれるし、平安な生活を求めたい気持ちもあるが、生きる欲望のうずきをどうすることもできない。そして、うずきを肯定して生きようとする。そのようなメッセージがこめられているように思った。きわめて危険な音楽だといえそう。

 

・ベアトリーチェ・ラナ(ピアノ)、アジス・ショハキモフの指揮、デュッセルドルフ交響楽団

N.チェレプニン「遠き王女のための間奏曲」、チャイコフスキーのピアノ協奏曲 1

 この演奏には少々不満を抱いた。ピアノが一本調子で音にニュアンスが不足するのを感じる。ただ弾きまくる感じ。オーケストラにも大味なところを感じた。ショハキモフはかなり若い指揮者であれこれ工夫しているのはわかるが、音が生きてこない感がある。まだこれからの指揮者とこれからのピアニストだと思った。あるいは、事情があって、リハーサル不足?また聴いてみたい。

 

・ミシェル・コルボの指揮、ローザンヌ声楽・器楽アンサンブル

 バッハ「ヨハネ受難曲」

 これは文句なく素晴らしい。最近、ピリオド楽器を用いた攻撃的なバロックをよく聴くので、このように優しく柔和なバッハを聴くと安心する。しかも、そうでありながら、決して飽きさせない。信仰心がこもっているからだろう。歌手も合唱も実に素晴らしい。歌手の名前が出ていないので、ローザンヌ声楽アンサンブルのメンバーなのだろうか。テノールとソプラノが特に素晴らしかった。私がコルボの実演を初めて聴いたのは、1977年だったか、たまたま訪れたパリのサン・ジェルマン・デ・プレ教会でのラムルー管弦楽団による「ヨハネ受難曲」だった。当時、20代だった私はコルボを老人だと思ったが、今や私は当時のコルボの年代をはるかに超えている。コルボのバッハ表現もずいぶん変わった。昔と重ね合わせながら聴いていた。感動した。

|

« 2015年ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 5月2日 | トップページ | 2015年ラ・フォル・ジュルネ3日目(5月4日) »

音楽」カテゴリの記事

コメント

二日目は、『四季』とヨハネは僕も聴きました。長い間クラシックに接しているせいか、四季を自分から聴く事はほとんどありませんが、こういう時ぐらいは、と聴こうという気持ちにさせるのはLFJの魔力ですね。改めて聴くと、実はソリストにもアンサンブルにもヴィルトゥオジティが要求されるスゴい曲と改めて実感しました。シャルリエとPACなら文句なしですね。
ヨハネは樋口先生のおっしゃる事が全てを表しています。僕は最後のコラールで涙が出ました。
この日僕は、樋口先生が「ときめきのクラシック」で推しておられたシャニ・ディリュカを聴きました。なるほど感情の起伏が豊かで聞き惚れてしまいますね。美貌はもちろん、優雅なステージマナーも素敵でした。

投稿: 崎田幸一 | 2015年5月 8日 (金) 21時34分

崎田幸一 様
ヴィヴァルディは大作曲家なのだと私も改めて感じています。40枚組のCDを購入しましたが、名曲ぞろいです。
ディリュカは素晴らしかったでしょうね。日本ヤナーチェク友の会会員としては、「ないしょの手紙」を選んでしまいました。私は一度だけディリュカとほんの少しだけ言葉を交わしたことがありますが、うっとりしてしまうような人でした。

投稿: 樋口裕一 | 2015年5月10日 (日) 16時39分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/61534937

この記事へのトラックバック一覧です: 2015年 ラ・フォル・ジュルネ2日目(5月3日):

« 2015年ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 5月2日 | トップページ | 2015年ラ・フォル・ジュルネ3日目(5月4日) »