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新国立「ばらの騎士」 シュヴァーネヴィルムスのマルシャリンにうっとり

2015530日新国立劇場で「ばらの騎士」を見た。素晴らしかった。

一人一人の歌手の力量のレベルが高い。とりわけ、マルシャリンを歌うアンネ・シュヴァーネヴィルムスは歌唱、演技、容姿すべてをふくめて現代随一ではないか。強い声で歌うときはもちろん、ピアニシモの声の表現が実に心にしみる。第一幕のアリアも、第三幕の三重唱も絶品だと思った。あまりに美しい。うっとり!

 オックスを歌うユルゲン・リンも芸達者で声も張りがあっていい。下品になりすぎず、愛嬌がある。ステファニー・アタナソフのオクタヴィアンも、自信なげで世慣れていない少年らしくて魅力的。オクタヴィアンというのは、まさしくこんな少年なんだろうと思った。

クレメンス・ウンターライナーのファニナルもうまい。これまで見てきた生真面目で律儀なファニナルというよりも、十分に世慣れてしたたかなファニナルという雰囲気で、それはそれでおもしろい。

 ゾフィーを歌うアンケ・ブリーゲルも、声の面ではまったく不満はない。ただ、服装や髪形のせいか、妙におば様ふうに見えて違和感があった。もう少し若々しい外見にできなかったのだろうか。

 加納悦子(アンニーナ)、妻屋秀和(警部)、田中三佐代(マリアンネ)らの日本人歌手もみごと。ヴァルツァッキ役の高橋淳さんが体調不良で降板した。代役の方もとても良かったが、私は高橋淳ファンで、高橋さんの声と演技を楽しみにしていただけにかなり残念。

 指揮はシュテファン・ショルテス。オーケストラは東京フィル。もちろんとても見事な演奏。だが、私の耳が肥えすぎているのか、どうしてももっと精妙な音を期待してしまう。これまで私が録音やザルツブルク音楽祭の実演やらで聴いたウィーン・フィルなどのとろけるような官能性やうっとりするような美しさが少々不足しているように思った。歌との微妙なずれのためにピタリと決まらないところも感じた。とはいえ、これは致し方ないところだろう。

 演出はジョナサン・ミラー。大きな読み替えのない妥当な演出といってよいだろう。第一幕の最後でマルシャリンがタバコを吸いだしたのには驚いたが、それも孤独の表現なのだろう。しかし、それにしても優雅な吸い方に驚いた。クリムトの絵にでも出てきそうな雰囲気。第二幕では、オックスは軍服を着ていたが、私にはその意味あいがよくわからなかった。第三幕はただ感動してみていた。

「ばらの騎士」を初めてレコードで聴いて、シュヴァルツコップの歌唱に魅了されてから半世紀。中学生のころに感動したのとは別のところにも感動するようになったが、今でも変わらず最も好きなオペラの一つだ。実に幸せな気持ちになった。

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コメント

樋口さん、こんにちは

アンネ・シュヴァーネヴィルムス、初めて聴いたのはティーレマンの影のない女!
彼女を聴くために、今回も行きました。

ショルテス指揮の東フィルは、引き締まった快速テンポで、ウィーンのルーチン公演に比べれば、はるかに素晴らしい出来だったと思います。

この作品は、人生の節目節目に聴いてきました。あらゆる人にとって、特別な作品であると思います。ご婦人の多さよ!まさに女性に捧げらた作品ですね笑 パウリーネに感謝!

投稿: ねこまる | 2015年5月31日 (日) 08時09分

ねこまる 様
コメント、ありがとうございます。
私も、ザルツブルクでの「影のない女」での強い印象を胸に抱いて出かけました。そして、期待通りの、いやそれ以上のマルシャリン。色香があり気品があり、理想的なマルシャリンですね。
オーケストラに関しても、確かにルーチン公演を考えれば、ウィーンフィルに匹敵するのかもしれません。不満に感じたのは、私のこのオペラへの思い入れが強すぎるせいなのでしょう。
「去年の雪、今いずこ」という思いは、男性以上に、美貌を誇った女性にこそ強いのでしょうね。
ただ少し残念に思ったのは、オーケストラが終わる前に拍手が起こったこと。ドイツ系のオペラではめったにないことですが、きっとイタリアオペラのファンの方がたくさんおられたのでしょう。もちろん、これは「ばらの騎士」がいかに広い人気を誇っているかということであって、嘆くべきことではないかもしれませんが。

投稿: 樋口裕一 | 2015年6月 1日 (月) 00時03分

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