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戸田弥生&エル=バシャのフランクに打ちのめされた

 2015516日、第一生命ホールで戸田弥生&エル=バシャのよるデュオ・リサイタルを聴いた。すさまじい演奏!!

 前半はベートーヴェンの「春」とシューマンのソナタ第2番。

エル=バシャのピアノは高潔で知的。一つ一つの音が最高に美しく、最高に正確。節度をわきまえつつもそこにロマンティックな要素を含ませていく。が、戸田さんのヴァイオリンはまったくそうではない。きれいな演奏ではない、表面を飾るような音楽ではない。あまりきれいでない音も聞こえる(戸田さん、ごめんなさい!)。昔のシゲティの演奏を思わせるような内面をぐっとつかむような音楽。「春」の第一楽章の途中から、私はぐいぐいと戸田さんの世界に引きこまれていった。

 シューマンは異界に引きこむような演奏だった。私は、シューマンを聴くと、いつも夢幻と狂気の世界に引きこまれるような居心地の悪さを感じる。だから、シューマンは好きな作曲家ではない。が、戸田さんのシューマンを聴くと、好きとか嫌いとか言っていられなくなる。ぐいぐいと不思議な世界に引きこまれていく。否応なく異界に入り込まされた気分になってくる。シューマンが好きでない私には決して心地よくはないが、しかし、あまりの不思議な世界に抵抗力をなくすしかない。

 後半のフランクのソナタはもっとすごかった。煮えたぎる情念とでもいうか。しかし、それを表に出して情熱的に弾きまくるのではない。女性的というのかフランス的というのか、前半のベートーヴェンやシューマンよりも優雅で静かな面を見せる。シューマンのように最初から不思議な世界に聴き手を投げ込むのではない。が、じわりじわりとすさまじい情念の世界に入り込む。第二楽章以降は、私は静かに煮えたぎる世界の中で揺れ動いた。

 戸田さんの演奏を聴くと、これこそが音楽だ!と強く思う。こぎれいに整えたのではない、心の本質に迫ってくる音楽。技巧を見せつけるわけでもない。目新しい解釈を聴かせてくれるわけでもない。真摯に音楽に挑み、そこから音楽の中に込められている精神を引き出してくれる。

アンコールはベートーヴェンの第6番のソナタの第二楽章。煮えたぎる情念から少し醒めさせてくれた。が、これまた静かな中にすべてを押し込んだような音。

様々な仕事でかなり疲れていたが、これほどの音楽を聴くと心の底から活力が出てくる。元気になって家に戻った。

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