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多摩大での新居由佳梨リサイタル 絶品のラ・ヴァルス

 2015618日、多摩大学多摩キャンパス101教室で、樋口ゼミ主催の新居由佳梨リサイタルを開いた。新居さんに多摩大学においでいただくのは3回目。これまでは江島有希子さんのヴァイオリンや山本裕康さんのチェロとのデュオだったが、今回はソロをお願いした。

 素晴らしいリサイタルだった。私は主催する立場だったが、一人の聴き手として大いに感動した。

 新居さんと出会って10年以上になる。初めて聴いたときから、ノーブルで繊細で透明で知的な演奏に惹かれた。が、今回聴いて、表現の幅が広がりダイナミックになり、人間の暗い部分までも含んだ深くてスケールの大きな音楽になっていることを痛感。おどろおどろしさや不気味さもあり、それらの音が躍動する。しかも、かつてのノーブルな雰囲気はまったく損なわれていない。本当に素晴らしいピアニストだ。

 ドビュッシーの「雪は踊っている」や「月の光」もラヴェルのソナチネの第3楽章もよかったが、後半の最後の2曲はまさしく絶品。ショパンの「英雄ポロネーズ」は、私は冒頭の音の研ぎ澄まされた美しさにあっと驚いた。その後の高揚も見事。生身の生きたショパンが立ち上がっている。情感にあふれ、ロマンティックに盛り上がっていく。が、情緒に流されない。

 なんといっても最後のラ・ヴァルスが言葉をなくすほどすごかった。不気味に始まり、徐々にワルツが形をなし、ダイナミックに躍動していく。そして、狂気にいたるほどの大乱舞が鍵盤いっぱいに行われる。そのような宇宙全体に広がるような舞いの世界を新居さんは驚くべきテクニックと音楽性で聴かせてくれた。

 新居さんのファンの方と演奏後に話をしたが、私もその方の言われる通り、ラ・ヴァルスに関して、私も新居さんの演奏は世界最高だと思う。新居さんのラ・ヴァルスほどに気品にあふれ、ダイナミックで華やかで、しかも優雅で知的な演奏を聴いたことがない。ますます新居さんのファンになった。

 本日の客は約100名。学生のほか、寺島実郎学長が監修する特別講座に参加している市民の方も多く訪れてくれた。その中には、クラシック音楽のコンサート初めてという人も何人もいたようだ。が、多くの方が、新居さんのピアノの凄まじさに驚き、音楽の素晴らしさに感動したことを話してくれた。

 雨模様で、しかもあまり良いピアノではない。演奏会場も単なる教室であって、音響もよくない。客が増えるにつれて、ますます湿気が増してきた。そのため、ピアノに湿気がたまったらしい。できるだけ湿気を減らそうとエアコンを効かせた(寒さを感じた方が観客の中にかなりおられたらしい。お詫びいたします。が、気温の快適さよりもピアノの鳴りのほうを優先させていただいたのだった!)が、それでも鳴りが悪かったようで、新居さんは普段以上に力を込めて演奏せざるをえなかったようだ。新居さんの両方の小指から出血。あとで見たら、鍵盤は血染めになっていた。聴いているほうはそんなことはまったくわからないほどのすごい演奏だった。ついでに言うと、「まるで、巨人の星みたいだ」とゼミ生に話したのだが、ほとんどの学生はわかってくれなかったようだ。

 コンサートの後、新居さんのほか、多摩大教員の一人とともに、近くのフランス料理の店エル・ダンジュで夕食をとった。とてもおいしかった。最高の音楽、大満足の夕食、楽しい語らい。素晴らしい一日だった。

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