石田泰尚・山本裕康・諸田由里子ピアノトリオ 見事な演奏
2015年6月14日、一橋大学兼松講堂で、石田泰尚・山本裕康・諸田由里子ピアノトリオ・コンサートを聴いた。如水会鎌倉支部設立20周年、北鎌倉湧水ネットワーク設立15周年記念とのこと。とてもよかった。
兼松講堂は少しこもり気味。私が後ろのほうの席だったせいもあるが、少し前で音が途切れているように感じた。もう少し前で聴きたかった。
曲目は前半に山本さんによるバッハの無伴奏チェロ組曲第3番、石田さんと諸田さんによるチャイコフスキーの感傷的なワルツと、スメタナ「わが故郷」より、そしてブラームスのハンガリー舞曲第2番。後半にベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番「大公」。
山本さんはゆったりとしておおらかなバッハを演奏。山本さんには、以前、多摩大学樋口ゼミのリサイタルでバッハの無伴奏チェロ組曲の全曲演奏をお願いした。その時よりももっとスケールが大きくなっているように感じた。小細工をしない。あからさまに盛り上げない。ありのままの自分を堂々と見せる。人生観がにじみ出る。それが素晴らしい。バッハを信頼して普通に演奏すれば、素晴らしい曲になることを知って、素直に演奏している・・・そんな感じがしてくる。ただし、実際にはその境地にいたるまで、様々な技巧を凝らしているのだろうと思う。
石田さんは、山本さんとまったく別の音楽を作るように私には思える。見た目通りに、外連味にあふれ、スイッチが入るとぐんぐんと高揚していく。が、過度に感情移入するのではなく、知的に抑制する。諸田さんの知的で美しいピアノがそれを支えているのかもしれない。
私には音楽性がまったく異なるように聞こえる石田さんと山本さんだが、「大公」では、ピタリと息があっていた。知的で小細工のない堂々たる「大公」。繊細でしっかりと構築されている。音のすべてが実に美しい。もしかすると、諸田さんのピアノによって、音楽性の異なる二人が息を合わせているのかもしれない。その点は見事だと思った。
ただ、私としてはもっとピアノに自己主張してほしいと思った。諸田さんのピアノは絶妙にヴァイオリンとチェロをサポートするが、リードしてくれない。やはりこの曲はピアノが全体をリードしてほしいと、どうしても私は思ってしまう。
アンコールは聞き覚えのある曲だったが、曲名はわからなかった。2曲目は日本の「故郷」をピアノトリオにしたもの。実を言うと、「ウサギ追いし・・・」というこの歌、実は私は大嫌いだ。じめっとして押しつけがましい。が、まあこのように編曲してくれると、それほど嫌味ではなくなると思った。
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