ミヒャエル・ザンデルリンク+ドレスデン・フィルのベートーヴェンに感動
武蔵野市民文化会館で、ミヒャエル・ザンデルリンク指揮、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートを聴いた。ベートーヴェンの交響曲第5番と7番。ともにすごい演奏。私は大いに感動した。
スケールが大きい。父クルトも同じような雰囲気だったのを思いだす。ノン・ヴィブラートの古典奏法を取り入れ、きわめてドラマティックで疾風怒濤ふうの演奏で、しかも、あちこちにかなり個性的な音が響くのだが、そうでありながら、オーソドックスな雰囲気が漂う。詳しいことはわからないが、昔聞き慣れた楽譜を用いているのではないか。しかも、パーヴォ・ヤルヴィのように音が渦巻いているわけではない。もっとどっしりしていて、細かいところが実に抒情的。巨匠風に音が大きくうねる。そこが伝統を思わせる。
第5番の第1楽章は、オーボエが実に印象的。味わいの深いオーボエのソロから音楽全体が活気づく。このような解釈のこの楽章を初めて聴いた。が、十分に説得力を感じた。ミヒャエル・ザンデルリンクはとても豊かに木管楽器を歌わせる。第3楽章が終わって第4楽章に進むときの緊迫感は圧倒的だった。ドレスデン・フィルもドイツ的な素晴らしい音。アメリカのオーケストラのように機能的になりすぎることなく、音楽そのものを奏でる。素晴らしいオーケストラだと思った。
第5も素晴らしいと思ったが、第7はもっと素晴らしかった。それぞれの楽章のアクセントのつけ方が実に魅力的。息もつかせぬほどに盛り上げていく。第2楽章の冒頭の弦もはっとするほど美しかった。第3楽章と第4楽章の躍動は言葉をなくすほど。しかも、まったく誇張がなく、率直に心の奥を揺り動かす。すごい指揮者だと思った。
アンコールは「ウィリアム・テル」序曲の「行進曲」。壮大な演奏だった。ただ近年のロッシーニ演奏からすると、ちょっと壮大すぎる。
ともあれ、私は心の底から感動。久しぶりに伝統あるドイツの音を聴いた満足感を覚える。
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