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ロシア国立交響楽団のチャイコフスキーは私の嫌いなタイプの演奏だった

2015713日、武蔵野市民文化会館でロシア国立交響楽団のコンサートを聴いた。曲目は、なんとチャイコフスキーの交響曲第4・5・6番の3曲。指揮はヴァレリ―・ポリャンスキー。18時半に開演、終わったのは22時に近かった。

1960年代、高校生だった私はドミトリ・ショスタコーヴィチの息子であるマキシム・ショスタコーヴィチ指揮によるこのオーケストラ(当時はもちろん、ソヴィエト国立交響楽団と呼ばれていた)のコンサートを大分市で聴いて、いたく感動した覚えがある。そんなわけで、今回、かなり期待して出かけたのだった。

が、一言で言って、私の大嫌いなタイプの演奏だった。とりわけ、第4番には、怒りのようなものさえ感じた。音がコントロールされておらず、あまりに野放図でしまりがない。それぞれの楽器があっけらかんと鳴らしまくるばかり。指揮者はリズムを取るだけで、楽器をコントロールしない。そのため、メリハリがなく、憂いや影がなくなる。彩りもなくニュアンスもなく、ただ威勢のいい金管楽器ばかりが鳴り響く。木管楽器も私は少しも彩りを感じない。弦楽器も抑制がないので、うねらないし、細かい起伏がない。少なくとも、私にはそのように聞こえた。

第5番は、第4番よりは良かったが、「運命」的な切迫感がなく、チャイコフスキーらしい哀愁も情熱も感じない。ポリャンスキーはときどきメロディに緩急をつけて歌わせようとするが、私の趣味からすると、かなり下品に思える。

今回の演奏の中では「悲愴」がもっともよかったが、これもひたすら鳴りまくる「悲愴」。金管楽器が咆哮し、打楽器が耳をつんざく。それはそれで爽快だが、この曲はそんな曲ではなかろう。

大拍手が起こっていた。このタイプの演奏が好きな人も多いのだろう。が、私は何度も途中で帰りたくなった。私には年に一回くらいの割合で、このようなことがある!

ところで、今回、武蔵野の客のマナーの悪さを強く感じた。最前列のほぼ中央に座った男性が、演奏中、何度もペットボトルの飲み物を飲んでいた。隣の女性も飲んでいるように見えた。演奏家たちも気づいたに違いない。本人はマナー違反ということを知らないのだろう。主催者から何とか注意できないものか。

そのほか、例によって、のど飴をごそごそする音、演奏中、あるいは楽章の途中の話し声が何度も聞こえた。そのほとんどが高齢者。高齢者のマナー違反があまりに目に余る。高齢者向けのマナー教室のようなものをする必要があるのではないかと、真面目に思ってしまう。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

ご無沙汰です。ヤノフスキさんのブル8以来のコメントさせていただきます。いつも、師の的確な批評には、納得させられるばかりです。普段は、地方のささやかなコンサート三昧ですが、時々 関西の外来公演にも足をはこんでます。ブル8以来になりますが、このチャイコフスキーも3曲まとめて聞ける?ということと、大阪公演は 割安だったこともあり、20日に 大阪のシンフォニーホールに行く予定です。うーん ちょっとショックでした。もともと 爆演型指揮者 といううたい文句だったので、そんな感じの演奏家さんなんだろうとは予想してましたが、ロジェストヴェンスキーさんとは 大分違ったようですね。いまさら 変更もできないので、マーチングバンドでも聞くつもりで、出かけたいと思います。-先日、バレンボイムのブルックナー8番川崎公演のチケットを購入しました。関東まで聞きに行くのは4年ぶりなんですが、サントリーには行かれるのでしょうか?バレンボイムさんは 好嫌相半ばという感じの方のようなんですが?もし行かれるのであれば、是非 寄稿くださいませ。バイト代全額投入してます、笑 吉凶 けっこう気になっております。

投稿: YOTIN | 2015年7月14日 (火) 09時50分

ご無沙汰している武蔵野のマナーの悪さを書かれていたので驚きました。

武蔵野では、最後の音が消える前の拍手やブラボーを聞いたことがありませんでした。

ただ、日本の一流のコンサートでは音楽途中の話し声はほとんどないですが、海外のコンサートでは時々ありますね。

音楽の楽しみ方がやや違うのを感じます。

コンクールの審査の演奏の途中でも審査員が隣の審査員と話をしたり、演奏途中でも感想?を言いあったりしているのを見たことがあります。

今回の武蔵野では、真に心を打たれるような演奏ではなかったので、音楽に集中することができず、のど飴を探すことになったのではないでしょうか?

マナー談義になりますが、他にも演奏者が正装なのに、聴衆の中には泥のついたスニーカーにリュックのいでたちの人がいることもあり、なにかちぐはぐな印象を受けるコンサートもありますね。

海外のオペラ劇場のような装飾の多い会場は日本にはないので、カジュアルでもかまわないということなのでしょうが、全体の雰囲気として違和感を感じてしまいます。

多分日本では、コンサートの成功は、時間と空間を共有している演奏者と聴衆の両方で作るものという「聴衆教育」がなされていないからでは?と思っています。


投稿: | 2015年7月14日 (火) 10時40分

YOTIN 様
コメント、ありがとうございます。
ロシア国立の演奏、大喝采している人もたくさんいました。いえ、それどころか、演奏が気に入らなかった私のほうが圧倒的な少数派だったと思います。ですから、どうか私の個人的感想に惑わされずにお聴きになってください。私はあくまでも「批評」ではなく、個人的な「感想」を書いているつもりです。
バレンボイムは大好きな指揮者の一人です。今回のブルックナーは私も大いに楽しみにしています。ただ、家庭の問題などがあって、時間が取れなくなる可能性がありますので、まだチケットは2日分しか確保していません。
様々な音楽をお楽しみになってくださることを願います。

投稿: 樋口裕一 | 2015年7月15日 (水) 09時16分

7月14日にコメントをくださった方へ
コメント、ありがとうございます。
おっしゃる通り、武蔵野でマナー違反の拍手はほとんどありませんね。歌曲集の途中での拍手も、以前はしばしばありましたが、今はほとんどなくなりました。「われこそ音楽通」というタイプの嫌味なマナー違反は少ないと思います。
ただ、やはり私の印象では、武蔵野ではパンフレットをいじる音や飴玉を出す音が圧倒的に多いと思います。高齢の方が多いので、おそらく、音の大きさにあまり敏感でないのだと思います。小さな声でもおしゃべりも、周囲に迷惑ではないと考えているのだと思います。
なお、ロシア国立の際に、話をしていた人、飴玉をいじっていた人は、いずれも音楽に大変感動なさっていたようでした。話をなさっていた人は感動を隣りの方に伝えているようでした。
しかも、飴玉の音がしたのは、「悲愴」の第一楽章の、ffffの大音響になる前の最も静かであってほしいところでした! もちろん、咳が出そうになって慌てて飴玉をなめようとしたのだと思いますが、少なくとも私は咳よりも飴玉をいじる音のほうに不快を覚えます。多くの人がそうだと思うのですが。
私はあまりうるさいことは言わずに、それぞれがそれぞれの楽しみ方をしてこそ成熟した社会のコンサートだと思います。とりわけ、武蔵野は気軽にクラシックの名演奏を聴ける貴重な場です。子供も含めて多くの人に来てほしい場所です。しかし、だからこそ、ここからマナーのあり方を発信していくのも大事なことのように思います。

投稿: 樋口裕一 | 2015年7月15日 (水) 09時33分

( ^ω^ )返信ありがとうございます。おっしゃる通りだと 感じました。批評 というのは 失礼だったかな?と反省しています。それにしても3つの交響曲を一度に演奏するというのは、凄いとも、気の毒だなとも 思います。日本ではロシアのオケにはチャイコフスキーしかオファーされないんでしょうかね。そういう自分も、チャイコフスキーしか買ってないのは事実なんですが。自分なりに楽しんで来たいと思います。-バレンボイムさんの感想、楽しみにしております。

投稿: YOTIN | 2015年7月15日 (水) 11時10分

YOTIN様
コメント、ありがとうございます。
「失礼」などということはまったくありません。どうかお気になさらないでください。
私はできるだけ素直にコンサートの感想を書きたいと思っています。感動した時は感動したと書き、つまらなかったらつまらなかったと書きたいと思っています。ただ、私が個人的な感想を書いたために、先入観を与えてしまって、せっかくの音楽を楽しめなくなってしまう方がおられるとすると、とても残念だと思うのです。
むしろ、「樋口はこの演奏を大嫌いだと書いているようだ。では、ちょっとその演奏を聴いてみよう。私はもしかしたら気に入るかもしれないので」という風に考えていただけると嬉しく思います。

投稿: 樋口裕一 | 2015年7月16日 (木) 22時50分

初めまして。
私は横浜で同じプログラムで聴きました。
同じプログラムで何公演か演奏するみたいで、すごくきつい演奏旅行ですよね。

演奏について、私も樋口様と似た感想を持ったのですが、それでも、演奏を楽しみました。
というのも、私は、日本の楽団の場合、弦楽器が、どうしても、0.3~0.5度、本来の音より低く聞こえてしまったり、カサカサした音に聞こえてしまうことがあるからです。いつも、音楽に集中できません。
外国の楽団の場合、プロとして演奏している楽団なら、大抵、この点はクリアしている気がします。音楽そのものに集中できたので、演奏を楽しめました。

マナーの点で言うと、楽章と楽章の間にここぞとばかりに咳をする客がかなりいて、少し気になりました。演奏途中に咳をされるよりは良いのですが。

投稿: ねこ | 2015年7月17日 (金) 23時32分

別会場で4番、5番、6番を聴いた者ですが、野放図で、金管楽器が鳴り響く演奏がロシアの軍隊を思わせるところもあって、意外にもそこがとてもよかったです。音色、音の重なりからロシアの大地や情景が浮かびました。


投稿: たな | 2015年7月18日 (土) 10時09分

ねこ様
ロシア国立は、あちこちの会場でチャイコフスキーの交響曲3曲を演奏しているんですね。メンバーの体力に驚きます!
日本のオケは音が低いのですか! 気づきませんでした。が、確かに金管楽器に威力にはすさまじいものがありました。
とはいえ、やはりあのような演奏は私の好みではありません。

投稿: 樋口裕一 | 2015年7月19日 (日) 08時48分

たな様
コメントありがとうございます。
野放図な音づくり・・・というのは、もしかしたらロシアのオーケストラの一つの特徴なのかもしれません。が、やはり私は統率がとれ、抑制が効き、微妙なニュアンスの移り変わりによって音楽が動いていく演奏のほうが好きなのです。

投稿: 樋口裕一 | 2015年7月19日 (日) 08時52分

凄い反響ですね。小生も昨日 大阪公演聞いてきました。演奏そのものに対する感想は、先生に同感できるものでしたが、自分も かなり楽しめたのは事実です。たしかに洗練された演奏の多いチャイコフスキーもいいのですが、チャイコフスキーの交響曲を聞きながら、ダッタン人の踊りを連想させてくれた演奏も、悪くはないな と感じました。唯一無二の名演とは言いませんが、こういうのもありだなという感想では ありました。チャイコフスキーやマーラーやブラームスの交響曲には、演奏スタイルの幅が大きく許容されているように感じますが、ベートーベンやブルックナーには許されない?という勝手な思い込みが自分にはあるようですが。笑

投稿: YOTIN | 2015年7月21日 (火) 12時58分

YOTIN 様
コメント、ありがとうございます。お楽しみになられたとのこと、とてもうれしく思います。
自分で思いますに、私はチャイコフスキーとブルックナーに対して、解釈の許容度が低いように思います。逆に言えば、特定のタイプの演奏に出会うと深く感動し、そこからはずれるといたく失望します。というか、感動するタイプの演奏があまり多くないということでもあります。が、それも音楽の楽しみ方の一つだと私自身は思っています。
そんなわけで、これからも個人的感想として、時に偏ったことをこのブログに書くと思います。そのおつもりで読んでくださると、こんなうれしいことはありません。

投稿: 樋口裕一 | 2015年7月24日 (金) 09時32分

 7/24(金)福岡のコンサート聴いて来て、他の人の批評が気になりネットで探していたら、これを見つけ意見がほとんど同じなので、ちょっとほっとさせていただきました。
 特に、演奏終了後のものすごい拍手とスタンディングオぺレーションで会場の皆様には相当受けていたように感じられたので、自分が何かおかしいのではないかと思い落ち込んいましたが、この意見を見させていただき、少し元気を取り戻せました。
 もちろん、4・5・6番を同時に演奏していただいた楽団の人に感謝を込めて最後まで拍手をしましたが、演奏家の解釈が自分好みでは無かったようで、残念ながら満足できませんでした。
 結局演奏をどう感じるかは個人の自由なのでしょうが、自分と同じ意見の人を探したがるのは何故なのでしょうかね。
 

 

投稿: 金管大好き | 2015年7月27日 (月) 10時55分

金管大好き 様
コメント、ありがとうございます。
今回の私の感想に対する初めての全面的賛同のご意見ですので、とてもうれしく思っております。
いえ、賛同してくれない意見も大歓迎です。様々な意見があり、相手の考えを尊重しあい、批判しあって、自分を知り、世界を広げるのが芸術を楽しむ方法だと思いますので。が、やはり自信を持って自分の考えを示すには、同意見の人がいてほしいと思います。どなたも私の感想に賛同してくれなかったら、私の感想は孤立したものになってしまいますからね。その意味で、とてもうれしいコメントでした。

投稿: 樋口裕一 | 2015年7月28日 (火) 08時39分

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