« またまたロッシーニのオペラ映像「セヴィリャの理髪師」「チェネレントラ」「結婚手形」「パルミラのアウレリアーノ」 | トップページ | 「ブルスキーノ氏」「イェヌーファ」「ばらの騎士」「フィエラブラス」の映像など »

まだロッシーニをみている 「ギヨーム・テル」「イタリアのトルコ人」「エルミオーネ」

 昨年の夏、ザルツブルク音楽祭を楽しみ、その後、パリに移動して休暇中の娘と合流して数日過ごした後、ヴェネツィアを訪れた。あれからほぼ1年しかたっていないなど考えられない。

1年前には義父は体調を崩していたものの、妻がしばしば病院を訪れて、不死身な姿を見せていた。九州に住む私の両親はまだ元気だった。ところが、義父は6月に世を去った。私の両親は大分県日田市で独立して生活することが困難になり、今年の1月に東京のサービス付き高齢者住宅に移転。そして、ついには、もっと介護度の高い施設に入らざるを得ない状況になって、8月15日、介護付き老人ホームに移転した。

8月に入ってからも、AO入試やオープンキャンパスなどの入試の仕事があり、両親の体調不良や移転に伴うあれこれの雑用があって、二度ほどコンサートの時間に間に合わなくなったり、8月に予定していた海外旅行もキャンセルしたりだった。原稿もほとんど捗らず、ただ焦るばかりの8月だったように思う。このブログもずっと更新する余裕がなかった。まだ両親は新しい施設に慣れず、心配事は絶えない。

といいつつ、相変わらずロッシーニのオペラ映像を何枚か見た。感想を書く。

 

536


「ギヨーム・テル」 バート・ヴィルトバート・ロッシーニ音楽祭 2013年

私たちが「ウィリアム・テル」と呼んでいるオペラ。オリジナルのフランス語版なので、「ギヨーム・テル」ということになる。

ギヨームのアンドルー・フォスター=ウィリアムズとアルノールのマイケル・スパイアズが素晴らしい。フォスター=ウィリアムズは深いバリトンでギヨームにふさわしい。いかにもウィリアム・テル。スパイアズは、外見はあまり若者らしくないが、高音に威力がある。ワルテルとメルクタルの二役を歌うナウエル・ディ・ピエルロ、ゲスレルのラッファエーレ・ファッチョラもしっかりと役を演じている。マティルドのジュディス・ハワースは声がきれいだが、どうもフランス語に聞こえない。もともとの作曲のせいなのかもしれない。

歌手たちは総じてレベルが高い。ただギヨームの息子役のタラ・スタッフォードは、私にはあまりに音程が不安定に思えて聴くのがつらかった。

 ヨッヘン・シェーンレバーの演出は、このオペラを現代の南米の軍事政権への抵抗の物語のように描いている。ロッシーニの音楽も生き生きとしているので、現代劇にしても違和感を覚えない。指揮はアントニーノ・フォリアーニ。私は初めて名前を知った。かなり若い指揮者。序曲はもたつき気味に感じたが、徐々に調子が上がって、第三幕の群集場面は盛り上がってとても良かった。

 

704


「イタリアのトルコ人」  
2002年 チューリヒ歌劇場

 

2002年の上演。大スターたちが共演する舞台。ルッジェーロ・ライモンディが元気な姿を見せてセリムを歌う。全盛時の輝かしさは少々失われてちょっと声がかすれ気味で、アジリータはちょっと苦しいが、とても楽しい歌を聞かせてくれる。フィオリッラはチェチーリア・バルトリ。歌唱については素晴らしいとしか言いようがない。弾力性のある声。そのほか、ドン・ジェローニオのパオロ・ルメツ、ザイーダのユーディト・シュミット、ドン・ナルチーゾのレイナルド・マシアス、詩人のオリヴァー・ウィドマー、アルバザールのワレリー・ツァリョーフはいずれもとても芸達者で歌唱もしっかりして、実に楽しい。

指揮はフランツ・ヴェルザー=メスト。最近流行のロッシーニ演奏とは少し違って、あまりバタバタしていない。まとまりのよいロッシーニ。ただ、もう少しわくわく感があってよいような気がする。演出は漫画的な色彩感で、わかりやすく楽しい。

 それにしても、このオペラそのものの台本作者が登場して狂言回しの役割をするというこのオペラの作りがおもしろい。まるでピランデッロ劇。ただ、男の立場としては、浮気女のフィオリッラにあまり感情移入できない。バルトーリの歌と演技もあまりに生々しくて、楽しい絵空事と思えない。

 

922


「エルミオーネ」 ロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル 2009年

少し前NHK・BSで放送されたと同じ映像。その時も素晴らしいと思ったが、改めて見て、実に素晴らしい。まず、音楽がいい。ロッシーニには珍しい情念と嫉妬が渦巻く悲劇だが、重苦しくなりすぎず、しかもドラマティック。ぐいぐいと引き込まれる。台本的としては、状況を読めずに突っ走るエルミオーネの愚かさに私は少々いらだつが、それを言っても仕方なかろう。NHK制作だとされているのに、日本語字幕がないのは残念。

エルミオーネのソーニャ・ガナッシが嫉妬に狂うさまを迫真の演技で歌う。ピッロに求められ、エルミオーネに嫉妬されながら、亡き夫への貞節を守ろうとするアンドローマカを歌うマリアンナ・ピッツォラートも高貴でしっかりした声。ピッロのグレゴリー・クンデは低音こそ少し苦しい部分があったが、張りのある美しい声で横恋慕する王を再現する。オレステのアントニーノ・シラグーザも独特の歌いまわしによって迫真の演技。脇役たちも見事。

そして、ロベルト・アバドの指揮がいい。満足。

 

248


「ギョーム・テル」 2013年 ボローニャ・テアトロ・コムナーレ管弦楽団&合唱団 ペーザロ・ロッシーニ音楽祭

 クラシカ・ジャパンで放映されていたのと同じ映像。指揮のミケーレ・マリオッティが素晴らしい。序曲からして全力演奏。行進曲の切れのよさにまず圧倒される。序曲が終わったところで大喝采が起こるが、私が客だったとしても熱狂したことだろう。幕が上がってからも、躍動し生命にあふれ、ドラマティックで実に雄弁。

 歌手ではアルノルドのフアン・ディエゴ・フローレスの輝かしい歌とマティルデ役のマリーナ・レベカの美しくもしっかりとした歌唱が圧倒的。このレベカという歌手、私はMETライブビューイングの「ドン・ジョヴァンニ」のドンナ・アンナ役で見た記憶があるが、実に素晴らしい。第三幕冒頭のこの二人の二重唱はオーケストラ伴奏も含めて、その素晴らしさに心が震えた。

ギヨーム・テルのニコラ・アライモやテルの息子役のアマンダ・フォーサイス、妻のヴェロニカ・シメオーニ、悪役のルカ・ティットートもとてもいい。グレアム・ヴィックの演出は時代を近代(両大戦間?)に移してのもの。赤旗を振り、幕の終わりごとに赤地に握りしめたこぶしが描かれた旗が掲げられる。まるで戦後のソ連映画のようだが、音楽が素晴らしいだけに、いっそう説得力がある。

|

« またまたロッシーニのオペラ映像「セヴィリャの理髪師」「チェネレントラ」「結婚手形」「パルミラのアウレリアーノ」 | トップページ | 「ブルスキーノ氏」「イェヌーファ」「ばらの騎士」「フィエラブラス」の映像など »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/62133563

この記事へのトラックバック一覧です: まだロッシーニをみている 「ギヨーム・テル」「イタリアのトルコ人」「エルミオーネ」:

« またまたロッシーニのオペラ映像「セヴィリャの理髪師」「チェネレントラ」「結婚手形」「パルミラのアウレリアーノ」 | トップページ | 「ブルスキーノ氏」「イェヌーファ」「ばらの騎士」「フィエラブラス」の映像など »