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またまたロッシーニのオペラ映像「セヴィリャの理髪師」「チェネレントラ」「結婚手形」「パルミラのアウレリアーノ」

 夏休みに入ったが、AO入試などの学務のためにほとんど毎日、大学に出ている。あまりの猛暑のために少々疲れるが、とはいえ、大学に出るのが短時間なので、帰宅後、原稿を書いたり、音楽を聴いたり本を読んだりする元気が残っている。そんなわけで、またロッシーニのオペラを何本か見た。ロッシーニのオペラは飽きない。

 

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「セヴィリャの理髪師」 英国ロイヤルオペラ 2009年 

改めて「セヴィリャの理髪師」の世界を堪能。ロッシーニのオペラはどれも楽しめるとはいえ、やはりこのオペラが圧倒的に素晴らしい。

最初に指揮のパッパーノが登場し、「ディドナートがリハーサル中に舞台から落ちて骨折したが、予告通り出演する。ただし、車椅子での出演になる」というアナウンスを行う。「私も車椅子での出演がどのようになるか見たくてたまらない」といって笑わせるところなど、さすがイギリスの劇場。そんなわけでロジーナが車椅子に乗って歌うという変則的な「セヴィリャの理髪師」が出来上がった。ディドナート好きの私としては、このようなディドナートを見られて、実にお得といったところ。

フィガロのピエトロ・スパニョーリ、ロジーナのジョイス・ディドナート、アルマヴィーヴァ伯爵のフアン・ディエゴ・フローレスは最強。スパニョーリは軽妙で明るく、声量豊か。ディドナートは最高の歌唱。華麗で愛くるしく声に輝きと張りがある。フローレスについては、ちょっと歌唱が荒く、時として音程が乱れがちになるが、声の輝きの張りがすさまじいので、小さな瑕疵などどうでもよくなる。

バルトロ役のアレッサンドロ・コルベッリ、バジリオ役のフェルッチョ・フルラネットもこれ以上考えられないほどの歌唱と演技。ベルタを歌うジェニファー・ライズ=デイヴィースも芸達者。愉快で音楽的にも充実した最高の舞台を作り出す。

アントニオ・パッパーノの指揮も勢いがあり、はっとさせるほど個性的で美しい音が随所に現れる。演出はパトリス・コーリエとモッシュ・ライザー。特に新しい視点はないが、わかりやすく、しかも楽しい。コヴェント・ガーデンのお客さんたちにも大うけしている。

 

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「チェネレントラ」バーリ、ペトルッツェッリ劇場 
2010

 決して悪い上演ではない。ロッシーニ特有の楽しさや躍動感はある。だが、ロイヤルオペラ、パッパーノ+ディドナートの「セヴィリャの理髪師」をみたあとでは、すべてが重たく、停滞気味に聞こえる。

 チェネレントラはホセ・マリア・ロ・モナコ。きれいな容姿だし、声も美しいのだが、歌の表現の幅が少し狭い。王子のマキシム・ミロノフも容姿は申し分ないが、声が少し不安定。二人の主役は容姿を重視しすぎの感がある。ダンディーニのロベルト・デ・カンディア、アリドーロのニコラ・ウリヴィエーリ、ドン・マニーフィコのパオロ・ボルドーニャはなかなか聞かせる。ただ、感動的に素晴らしいかというと、それほどでもない。

 指揮はエヴェリーノ・ピド。オーケストラの機能があまりよくないためもあって、貧弱な音となって、小気味よく決まらない。

 演出はダニエレ・アバド。現代劇に仕立て上げている。楽しい舞台だが、とくに大胆な解釈があるわけではない。

 

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「結婚手形」 バート・ヴィルトバート ヴィルトバート・ロッシーニ音楽祭 
2006年ヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団

 ロッシーニの若書きのオペラを若手の歌手たちが歌う。初々しくて生き生きとしていてとても良い。大御所たちでは出せない軽やかさ。とびぬけた歌手はいないが、アンサンブルがよく、ともかく楽しい。とりわけ、ファンニ役のユリア・サムソノワ、トビア役のヴィト・プリアンテ、スルック役のジューリオ・マストロトターロがいい。もちろん、ほかの歌手たちもいい。

 指揮はクリストファー・フランクリン。生き生きとしていて大変満足。アンネッテ・ホルンバッハーの演出も簡素だが、私はまったく不満はない。現代の服装だが、特に違和感はない。チェンバロの伴奏が少し時代を感じさせるが、それはやむを得ないところだろう。

 

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「パルミラのアウレリアーノ」ペーザロ、ロッシーニ音楽祭 
2014

 少し前に、2011年のイトリアの谷音楽祭で上演されたこのオペラの映像を見たのだったが、今回見たペーザロのロッシーニ音楽祭のものとはレベル的にはかなり差がある。このペーザロの映像のほうがオーケストラも歌手も段違いに素晴らしい。

 とりわけ、アウレリアーノ役のマイケル・スパイレスが圧倒的な声と歌いまわし。英雄的な輝かしくも強靭な声。ゼノービアのジェシカ・プラットは美しく強い高音。ただ低音は少し不安定さを感じた。アルサーチェのレーナ・ベルキナはケルビーノを歌うのに適していそうな可憐でチャーミングな女性。健闘しているが、カストラート用に書かれた英雄の役をこの小柄な女性が演じるのには少し無理がある。プブリアのラファエッラ・ルピナッチもしっかりした声でなかなかいい。一人一人の声は素晴らしいのだが、重唱の部分で少し乱れを感じたのは残念。とはいえ、全体的に歌手陣はきわめて満足。

 ロッシーニ交響楽団はさすが。指揮のウィル・クラッチフィールドもとてもいい。序曲(「セヴィリアの理髪師」序曲と同じ曲)が始まった時、陰影を大げさにつけている気がして少し違和感を覚えたが、これは「セヴィリアの理髪師」のようなブッファではなく、シリアスなドラマなので、確かにこのような味付けも不自然ではないと、のちになって納得した。ドラマティックで味わい深い演奏になっていた。

 マリオ・マルトーネの演出も特に大胆な主張はないが、とても美しく、わかりやすい。あまりなじんでいないオペラの場合、このような演出がありがたい。ともあれ全体的に大変満足。素晴らしい上演だ。

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