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オペラ映像「アルジェのイタリア女」「チェレヴィチキ」「マゼッパ」「オルレアンの少女」

 この10日間ほどは大学での仕事は2回だけだったので、基本的には家での仕事に励んでいる。外に出るのは、両親のいる施設にいくときくらい。施設の関係者や医療関係者と話をする場合を除いて、両親の施設にいるのは1時間以下なのだが、重苦しい状況でもあるので、家に帰るとぐったりと疲れている。しばらく気を取り直すためにオペラDVDや映画DVDをみて、意欲がわいてきたら仕事にかかるという日々。

 また数本、オペラDVDをみたので感想を書く。

 

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ロッシーニ「アルジェのイタリア女」 
2013 ペーザロ・ロッシーニ音楽祭

 またまたロッシーニのオペラDVDをみた。聴覚的にも視覚的にも最高に楽しい。

ムスタファを歌うアレックス・エスポージトの歌が圧倒的。全体的にとてもレベルの高い歌手陣の中にあっても図抜けていると思った。安定した音程でバリトンの美声が響く。しかもアジリータもお手のもの。そのほか、イザベッラのアンナ・ゴリチョーヴァがコントラルトの声でありながらも輝かしく色気がある。容姿も素晴らしく、スタイルも抜群。リンドーロのシー・イージェ(石倚潔)もヨーロッパの歌手たちの最高レベルの歌唱を聞かせてくれる。輝かしい美声。タッデオのマリオ・カッシも実にいい。

オーケストラはボローニャ・テアトロ・コムナーレ。ホセ・ラモン・エンシナールの指揮もわくわくするようなキレの良さ、引き締まっ他音が美しい。演出のデヴィッド・リヴェルモアは、時代を現代に移し、ピンクや赤などの派手な色彩を用いたポップな舞台を作り上げている。飛行機事故で救われたイタリア人がアルジェで人質になり、そのなかに美女に、愛嬌のあるアルジェの権力者が惚れてしまった・・・という設定。まるでイタリアのしゃれた映画を見ている感じ。

 

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チャイコフスキー「チェレヴィチキ」
2009年 コヴェント・ガーデン王立歌劇場

 チャイコフスキーのオペラ。童話に基づくもののようだ。魔法使いが出て、間抜けな男が運よく愛を得る物語。音楽的には「イオランタ」と似た雰囲気。映像も実演も、これまでみたことがなかった。

 ソローハのラリッサ・ディアドコヴァ、悪魔のマキシム・ミハイロフ、オクサーナのオリガ・グリャコーワ、ヴァクーラのフセヴォロド・グリヴノフ、チュブのウラディーミル・マトリンなど、いずれもとてもいい。図抜けた歌手はいないように思うが、全体的にはとても高いレベル。指揮はアレクサンドル・ポリャニチコ。まったく初めての曲なので、演奏の良しあしについては特に何も言えない。

 演出はフランチェスカ・ザンベッロ。絵本のような舞台、色鮮やかな民族衣装、わかりやすくてユーモラスな登場人物の動きなど、とても楽しい。

 ただ、私としては、「イオランタ」ほどの魅力を感じなかった。あまりきれいなメロディがないように思った。おもしろいとは思いながらも、特に音楽に惹かれるところなく終わった。

 

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チャイコフスキー「マゼッパ」 キーロフ歌劇場 ワレリー・ゲルギエフ指揮

「マゼッパ」というとどうしてもリストを思い浮かべる。チャイコフスキーの「マゼッパ」については、序曲などは聴いたことがあったが、オペラをみるのは実演はもちろん、映像も初めて。リストの交響詩の連想から、ウクライナの高潔な英雄の物語だとばかり思っていたら、独裁者マゼッパの残虐とそれに苦しむ人々がむしろ物語の中心だった。マゼッパの愛の苦しみも描かれるが、むしろ実の父を夫であるマゼッパによって殺される妻マリアが中心的に描かれる。イタリアオペラのように、実の父を夫によって死に追いやられたマリアの狂気の場面が終幕の山場になる。

 なかなかおもしろかった。ドラマティックで情熱的。交響曲の情熱的な盛り上がりを思わせるような音楽がふんだんにある。ただ「エフゲニ・オネーギン」好きの私(チャイコフスキー好きではないのだが、「オネーギン」だけは中学生のころから愛してやまない)としては、もう少し陰影にあふれた美しいメロディがほしいと思う。

 マリア役のイリーナ・ロスクトーワ、マゼッパ役のニコライ・プチーリン、マリアの父親役のセルゲイ・アレクサーシキン、アンドレイ役のヴィクトル・ルツィウク、いずれも実に見事。ロシアの歌手陣のレベルの高さを見せつけられる気がする。太くて豊かな声。ゲルギエフの指揮もドラマティックで躍動感にあふれている。

 演出については、とてもわかりやすく、衣装が豪華。バレエも場面も見事だと思った。

 

 

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チャイコフスキー「オルレアンの少女」
1993年 モスクワ、ボリショイ劇場

 しばらく前に購入してそのままになっていた。みはじめてすぐにかなり前にみた映像だということに気付いた。最初にみた時、かなり大きな不満を抱いたのを思い出した。しかも、今からみると、映像も古い(映像のサイズ自体、現在のような横長ではない)し、不鮮明。演奏や演出についても古めかしさを感じる。

 あまりレベルの高い上演ではない。ジャンヌ・ダルクのニーナ・ラウチオとリオネルのウラジミール・レジキンはまだよいとしても、父親のヴァチェスラフ・ポチャプスキー、シャルル7世のオレグ・クリコ、アグネサのマリア・ガヴリーロフ、枢機卿のグレブ・ニコリスキーの音程がよくなく、声があまりに硬い。全員が同じように不安定。どういうことだろう。当時、ボリショイ劇場ではこのような発声がよいとされていたのだろうか。

 指揮はアレクサンドル・ラザレフ。好きな指揮者なのだが、この演奏はあまりに大味。抑制されたところがないので、聴いているほうとしては息苦しくなってくる。

 演出はボリス・ポクロフスキー。豪華絢爛でおごそかでなかなか良いのだが、かなり当たり前の演出に思える。

 容貌の面からはそれぞれの歌手たちは確かに登場人物らしくみえるし、舞台装置は豪華絢爛なのだが、この演奏ではドラマに乗れない。そのままオペラは終わってしまった。

 ただ、オペラとしては、やはりよくできているように思う。聞き覚えのある美しいメロディが出てくる。チャイコフスキーらしい憂いとドラマとパッションにあふれている。もっと良い演奏でこのオペラをみてみたいと思った。といいつつ、やはり「エフゲニ・オネーギン」はチャイコフスキーをもってしても奇跡的な出来のオペラなのだと改めて思った。

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