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フランス・オペラの映像3本「ドン・キショット」「ラオールの王」「夏の夜の夢」

 大学の夏休みも終わりが近づいた。しかも、このところ、両親の家の後片付けに九州に行ったり、人間ドックに入ったり、両親の暮らす施設にたびたび行ったりして、何かと忙しい。

 そんななか、細切れに時間を作って、フランス・オペラのDVDを3本みた。感想を書く。

 

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マスネ「ドン・キショット」
2006年 トリエステ・ヴェルディ劇場

 あまりレベルの高い上演ではない。

サンチョを歌うアレッサンドロ・・コルベッリは素晴らしい。軽妙なサンチョ。声も美しいし、フランス語も見事。ところが、ほかの歌手たちのフランス語はフランス語とはいえそうもない。イタリアとフランスは隣国同士であり、交流も多いだろうに、なぜこのようなことが起こるのか。

ドン・キショット役のジャコモ・プレスティアの声はいかにもドン・キショット(ドン・キホーテ)でなかなかいいのだが、フランス語には聞こえない。字幕をフランス語にして聴いてみたが、語尾のeをほとんど「エ」と発音している。デュルシネのラウラ・ポルヴェレッリも同じ傾向。母音の発音もあまりフランス語らしくない。しかも、私にはきれいな声に聞こえない。容姿はこの役にぴったりだが、やはり歌にもう少しの魅力がほしい。

 トリエステ・ヴェルディ劇場管弦楽団、指揮はドワイト・ベネット。私が「フランス」ということにこだわりすぎているのかもしれないが、これもフランスのオペラに聞こえない。そのため妙に生々しくて、マスネの音楽の深い悲哀と気品が伝わらない。フェデリコ・ティエッツィの演出も私は特に面白いとは思わなかった。

 

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マスネ「ラオールの王」 
2004年 フェニーチェ劇場

 このオペラ、初めてみるつもりだったが、始まって10分ほどで数年前にこの映像をみたことがあるのに気付いた。

 インドが舞台になっている。ドリーブの「ラクメ」を思い出す。ストーリーはかなり安易で、納得しがたいが、音楽はとても魅力的。マスネらしいロマンティックなメロディにあふれている。

演奏については、「ドン・キショット」と同じ傾向。シタを歌うアナ・マリア・サンチェスはとてもきれいなフランス語で歌う。ふくよかでとても魅力的なソプラノだと思う。王役のジュゼッペ・ジパーリもとてもいい。きれいな声。だが、ほかの歌手たちは、まったくフランス語とは言えない言葉で歌う。Je n’aime le ・・・を「ジェ・ネメ・レ・・・」と歌ったのでは、まったくフランス語には聞こえない。冒頭の合唱からして、まったくフランス語ではない。とりわけ、シンディアのウラディミール・ストヤノフ、チムールのリッカルド・ザネッラートは、フランス語で歌っているというつもりがまったくないのではないかと思いたくなるほど。

 指揮は今は亡きマルチェッロ・ヴィオッティ。しなやかで、大げさでなくとてもいい。アルノ・ベルナールの演出はかなり納得のいくもの。わかりやすい。

 

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アンブロワーズ・トマ「夏の夜の夢」 
]1994年 コンピエーニュ音楽祭

 私たちの世代のオペラ好きにはなじみのピエール・ジュルダン演出によるコンピエーニュ音楽祭の上演。かなり前に購入して、そのままになっていた。先日、「ばらの騎士」のDVDを探しているうちに、みないままでいたこのDVDを発見。

 フランス語という面では、これはまったく別次元。正真正銘のフランス人歌手たちが最高に美しいフランス語で語り、歌う。やはり、フランス・オペラはこうでなくては! ただ、その分、ミシェル・スヴィェルチェフスキ指揮のオーケストラ(ポーランド・クラクフ放送交響楽団)は少々聴きおとりがする。

歌手陣はそろっている。エリザベス1世を歌うギスレーヌ・ラファネルはとても魅力的。女王の品格があり、コロラトゥーラも素晴らしい。顔はキリ・テ・カナワにちょっと似ている。シェークスピアのアラン・ガブリエル、ファルスタッフのジャン=フィリップ・クルティスもオリヴィアのセシル・ベスナールもしっかりとした味のある歌で、とてもいい。ジュルダンの演出もわかりやすくてとてもおもしろい。

 シェークスピアの「夏の夜の夢」のオペラ化だとばかり思っていたら、そうではない。むしろシェークスピアの楽屋裏話。シェークスピアやファルスタッフやエリザベス1世が登場する喜劇。言ってみれば、酔っぱらったシェークスピアがファルスタッフとともに行った騒動を、エリザベス女王が「詩人の空想」としてなかったことにして、シェークスピアを許す話。ファルスタッフがシェークスピアの影の分身としての役割を果たしているのがおもしろい。

 私がクラシック音楽に夢中になったのは小学校5年生の時。学校の音楽の時間に聴いた「ウィリアム・テル」序曲に感激したのがきっかけだった。その少しあと、親にねだって17センチ盤のレコードを買ってもらったが、そのB面に録音されていたのが、トマ作曲の「ミニョン」序曲だった。つまり、トマは私が最初に買ったレコードの作曲者の一人ということになる。「ウィリアム・テル」序曲に比べてあまりにつまらないと思ったが、レコードを1枚しかもっていないわけだから、繰り返し聴いた。それ以来、トマにはずっと関心を抱いてきた。

 正直言って、あまり名作だとは思わない。深く感動することもないし、きれいなメロディにあふれているわけでもない。が、とても楽しい。3時間を超すので、少々長すぎる気がしないでもないが、最後まで楽しめた。もっと上演されてもいいオペラだと思う。

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