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ブロムシュテット+N響のベートーヴェンに感動

 2015920日、所沢のミューズアークホールで、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮、NHK交響楽団の演奏会を聴いた。素晴らしかった。感動した。

 前半は、アラベラ・美歩・シュタインバッハーのヴァイオリンが加わって、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。後半が、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。アンコールはなし。

 実に若々しい演奏。ブロムシュテットは老いるということを知らないようだ。きびきびした音楽。まったく誇張がない。しかし、実に自然に音楽が流れる。何もやっていないように見えるのだが、完璧な音楽が作られていく。しなやかで美しい。しかも、大きく盛り上がり、構成感にあふれたドラマを作っていく。

 シュタインバッハーのヴァイオリンがまた素晴らしい。この人の演奏を聴くのは三度目だったかと思うが、今回はこれまで以上に素晴らしいと思った。自然に流れ、しなやかで限りなく美しい。ふくよかで香りがあり、隅々まで神経が行き届いている。とりわけ、高音の美しさに天にも昇る心持になった。ブロムシュテットの指揮するオーケストラにぴったり。ロマンティックすぎず、無理がなく、しかし最高に美しく流れていく。そして、自然に盛り上がって感動を呼ぶ。

 第二楽章がとりわけ見事だった。静謐のなかにこの上なく美しい音が現れては消える。N響の楽器の美しさを堪能。弦の厚みのある音にも感動した。超一流の指揮者が振るとき、この楽団は実力を発揮する。管楽器も弦楽器も、そしてティンパニもしみじみと心を打つ音を奏でていた。

 シュタインバッハーのアンコールはイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番第1楽章。バッハのパルティータを引用しながら「死」を描く。目を見張る演奏。しかし、テクニックをこれ見よがしに披露するのではなく、本当に美しく自然に音楽が作られる。

 後半の「英雄」も素晴らしかった。力感にあふれるが、少しも無理やりなところがない。この曲は、力みが目立つ曲なのだが、ブロムシュテットにかかると、力感と若々しさを保ちながらも、強引すぎるところが気にならない。リズム感に富み、若々しく爆発する。第四楽章のワクワク感は驚くほどだった。

 ブロムシュテットの解釈はこれまでと変わりはない。が、静謐さを強調する傾向が強まったように思った。沈黙の中に音が立ちあがっていく。静かな音が美しい。繊細に音が絡み合う。

 NHKホールを避けてわざわざ所沢まで来た甲斐があった。NHKホールではこの静謐を聴きとることはできなかっただろう。

 ただ、第一楽章の途中から、ハウリングの音が強まって、私はかなり気になった。客の誰かの補聴器に原因があったのだろう。第三楽章ころから気にならなくなったが、それ以前はかなりひどかった。集中できなかった。残念。

 しかし、本当に感動した。ハウリングなしでもう一度このメンバーの演奏を聴きたくなった。

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コメント

樋口先生こんにちは。ル・コンシェです。私もブロムシュテットのベートーヴェンに感動した一人です。サントリーホールでのB定期でした。年に一度のブロム翁の定期は、このところ絶好調です。3年前のブラ1がすばらしかったのはもちろんですが、昨年のチャイコフスキーがまたすばらしかったのです。ブロム翁とチャイコさんは相性がいいように思わなかったのですが、それは先入観からくる誤解でした。名指揮者の振る音楽はどれもすばらしいものです。
昔は80歳を超えるとどんな指揮者も何らかの老いを感じさせたものですが、(トスカニーニは硬直化しワルターはテンポが緩み、ベームはよれよれ、カラヤンでさえ老いを感じさせました)、ブロム翁はまったく年齢を感じさせない溌剌とした音楽を聞かせました。N響もすばらしい出来栄えだったと思います。
補聴器のハウリングに悩まされたとは、同情に耐えません。私は音楽会のノイズには過敏で実に腹が立ちます。ヒソヒソ声、ハンドバックから何かを取り出すゴソゴソ音、プログラムをめくる音、はたまた隣の人の鼻息に悩まされることもあります。鼻息はまったく困ります。まさか呼吸を止めろともいえません。しかし鼻息以外は、その気になれば注意ができます。注意できずに困るのが隣の人の動きです。どうかすると音楽に合わせて動く人がいるのです。身体をゆすったり手が上下に揺れて拍子をとったり、、、さらに指で拍子をとる人もいます。これは小さな動きですが、視野に入ると本当に困ります。私の感覚では、音楽に合わせて動くと音楽に乗ることはできますが、それは深い感動とは別物に思えます。
ハウリングから話がそれましたが、お腹立ちの気持ちに妙に共感したので、顔を出しました。
別件ですが、ロイヤルオペラのマクベスは良かったですよ。感想を楽しみにしていましたが、行かれたのはドンジョバンニだけでしたか。

投稿: ル・コンシェ | 2015年9月21日 (月) 16時33分

ル・コンシェ 様
コメント、ありがとうございます。サントリーホールではハウリングはなかったでしょうから、まちがいなく所沢よりも感動できたでしょうね。
おっしゃる通り、私の知る限り、もっとも老いを感じさせないのがブロムシュテットですね。驚異だと思います。
このブログにも書きましたが、一度、演奏中に体を動かしていると、隣の人に注意されたことがあります。それ以来、指も含めて動かさないように気を付けているのですが、私自身、守れているかどうか、少々心配ではあります。
所沢では、実は演奏中に大きな音を立ててチラシをみている子どもの客に楽章の間に音を立てないように注意したのでした。私は、叱ったり怒鳴ったりするのではなく、近くにいる人が軽く注意するべきだと考えています。自分で気づいていないのですから、気づかせるのが周囲の人の義務だと思うのです。ただし、演奏中、言い合いになったりしたら、むしろ周囲の人にいっそう迷惑をかけることになりますので、相手を見て注意する必要があるのがつらいところですが。
もちろんヴェルディのオペラのいくつかは大好きなのですが、実は、「マクベス」はそれほど好きなオペラではありません。両親の健康状態が不安定なために、売り出し開始時に購入せず、その後も3万円以上出してまでこのオペラをみたい気持ちにはなれませんでした。
今年もこれから楽しめそうなコンサートがいくつもあるようです。同じコンサートを聴くこともあるかもしれません。

投稿: 樋口裕一 | 2015年9月22日 (火) 07時56分

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