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昨日の読響「トリスタン」について付け加える

 昨日(20159月6日)、カンブルラン指揮、読売日本交響楽団の定期演奏会で「トリスタンとイゾルデ」(演奏会形式)を聴いた。その素晴らしい演奏については昨日書いた。

 一日たって考えてみた。興奮はまだ残っている。素晴らしい歌手陣、素晴らしい指揮、素晴らしいオーケストラ。まったく不満には思わない。こんな演奏を聴けて幸せこの上ない。

 ただ、カンブルランの指揮は、やはり「愛」の音楽だったのだと強く思った。私は悲劇的な「愛の喜び」に強く感動した。つまり、私が「トリスタンとイゾルデ」の中で大好きだった形而上学的な要素は薄れていた。カンブルランのように透明で爽やかな音で演奏すると、デモーニッシュなもの、神聖なものは現出しなくなる。フルトヴェングラーのレコードのようなスケールの大きさ、宇宙的な広がり、人と宇宙との合体、二項対立の解消といったテーマが聴きとれなくなる。

 もちろん、これで悪いとは言わない。ただ、ある種の感慨は禁じ得ない。時代の変化なのか。あるいは、私自身の年齢による受け取り方の違いなのか。

 もう一つ気になったのは、三つの幕のすべてで音楽が途切れた直後に起こったブラボーの叫びだ。同じ人物のようだった。毎回、「指揮者が指揮棒をおろすまで余韻をお楽しみください」(必ずしも正確ではないが)というアナウンスをして、そのような行為をしないように会場側も注意を呼び掛けているのだから、ブラボーを叫んだ人は周囲の不快を意識しつつもあえて行っているのだろう。

 これはサッカーのフーリガンと同じような行為なのだから、人物を特定して出入り禁止にするような措置があってもよいのではないかと思う。

 私の席にすぐ近くでも、一人の客がなにかの袋をしばしばガサガサ言わせていた別の客を幕間に怒鳴る場面が見られた。怒鳴られたのはかなり高齢の男性だったが、納得できずに反論していた。怒鳴るのは行き過ぎにしても、私もカサカサいう音に閉口していたのは間違いない。昨日はかなりマナーが良かったと思うが、それでも演奏中に音を立てている人は何人かいた。全体のマナーがいいだけに、数人のそのような人が目立ってしまう。

 テレビ収録が行われていた。日本テレビ系で近日中に放映されるのだろう。楽しみだ。その時には、あの「ブラボー」の声を技術的に消してほしいものだ。テレビでこれを見る人の心にまでも、素晴らしい演奏の最後に不快な汚点を残すこともあるまい。

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コメント

ご無沙汰しております。武蔵野のときもそうだったようですが、もうこういう類のものはダメな人はダメだと思います。本人は自己主張をして何が悪いみたいなブラボーなんでしょうが、郷に入らば郷に従えなのですよね。自分ひとりの我欲で千人近い人間を地獄に道連れにするというのが正しいかどうかなんて子供でもわかります。

ただ飴の場合、稀に低血糖を起こしたことによる緊急のためという方もいるようなので難しいものがあります。ただいずれにせよ怒鳴るのではなく、気付かせてあげるという感覚で指摘するのがベストという気がします。怒鳴るのは純粋な意味での注意ではなく、自分の鬱憤を晴らすという自分勝手な要素もありますので、それだけはやめてほしいです。

ここ数年、ホール内が妙に無神経な行為が増えている反面、ピリピリしすぎているという部分も強くなっているような気がします。殺伐とした中で流れる極上の音楽。なんかものすごく混沌とした状況ですね。

投稿: かきのたね | 2015年9月 7日 (月) 22時29分

かきのたね 様
ご無沙汰しています。
きっとこのようなブラボーを叫ぶ人は目立つことを求めているのでしょう。なにも会場全員にいかに自分が愚かであるかを大声で知らせることはないだろうと思うんですけど、人間て不思議なものだとつくづく思います。

投稿: 樋口裕一 | 2015年9月10日 (木) 08時08分

ご無沙汰しております。いつも 拝読させていただいています。無性に トリスタンとイゾルデ 聞きたくなってしまいましたよ。自分もワーグナーは好きなのですが、地方在住だと 機会僅少、たぶん3月のびわ湖オペラ の オランダ人には行けるかもしれませんが。ちょっと探してみたら、来年 二期会・読響で 和製トリスタンをやるようなので、東京にいって聞いてみようか?などと思案しています。トリスタンとマイスタージンガーが陰陽の傑作かな?というかワルキューレもあるけど?そんな感じがしております。でも トリスタンと ばらの騎士 は深いいですね。東京が遠いのが残念です。

投稿: ヨーチン | 2015年9月11日 (金) 11時10分

ヨーチン様
コメント、ありがとうございます。
びわ湖の「オランダ人」、ついでがあったら、ぜひ聴きに行きたいと思っています。無理やり作れば、「ついで」というのも、結構作れるものですので。でも、なかなか難しいですよね、遠くまで聴きに行くのは。妻の顔色もうかがわなければなりません。私が首都圏在住にこだわっているのも、ほかの地域では圧倒的にコンサートの質と回数が減ることです。
あ、よく見たら、「オランダ人」は、神奈川でも公演があるんですね。だったら、びわ湖まで行く必要はなさそうです。

投稿: 樋口裕一 | 2015年9月12日 (土) 09時44分

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