照屋江美子ソプラノ・リサイタル「ロッシーニからの贈り物」 楽しかった!
2015年10月16日、音楽の友ホールで照屋江美子によるソプラノ・リサイタル「ロッシーニからの贈り物」を聴いた。ピアノ伴奏は高島理佐、バリトンのゲスト出演は萩原潤。近年ロッシーニに目覚めた私としては、ロッシーニの歌曲が聴けるこのリサイタルを逃すわけにはいかなかった。ロッシーニの歌曲はCDで何枚か持っているが、実演を聴く機会はめったにない。期待通り、とても楽しかった。
前半はロッシーニの歌曲「音楽の夜会」「黙って嘆こう」「ヴェネツィアの競漕」。
ロッシーニらしく、機知に富み、躍動し、しかもオペラと違って静かに物思いにふける部分もある。「黙って嘆こう」はメタスタージオの同じ詩にロッシーニは三回作曲をしたという。それぞれまったく異なる曲想に驚いた。
照屋の演奏は、ロッシーニの世界を自分のものにして、自分の表現で伝えようとしている。日本人歌手のリサイタルは、名歌手の場合であっても、どうしても発表会になり、お勉強のおさらいになりがちなのだが、照屋の場合はそんなことはない。自分で楽しみ、それを観客にぶつけてくる。明るくて、楽しくて、観客をひきつける。魅力的な容姿、明るい笑顔がいっそうリサイタルを楽しいものにしている。
後半は「オテロ」と「セヴィリアの理髪師」からのアリアや二重唱。前半と比べてずっと華やかで躍動的になる。照屋もコロラトゥーラの声を響かせ、声の力を増してくる。実は、照屋の音程に不安定なところもないではなかったが、そんなことは気にならないほど、観客をひきつける力を持っている。これこそがロッシーニを歌うときに必要な力だろう。
フィガロとして登場し、「私は町の何でも屋」を歌った萩原も声量豊かな美声で見事。この人も素晴らしい。
アンコールは、中田義直の「結婚」(萩原)、高田三郎の「くちなし」(照屋)、最後に二人で「芭蕉布」。日本の歌もとてもおもしろく聞いた。ロッシーニの後に日本歌曲というのもじつにいい。
ロッシーニは楽しい。改めて実感。
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