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上海クァルテット メンデルスゾーンに涙が出そうになった

 2015年11月16日、武蔵野市民文化会館で上海クァルテットの演奏を聴いた。素晴らしかった。

 曲目は前半にベートーヴェンの弦楽四重奏曲第3番とメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第6番、後半にグリーグの弦楽四重奏曲イ短調。

 ベートーヴェンの出だしの柔らかさには圧倒された。若いころのベートーヴェンの初々しくも溌剌とした音楽。しかも、様々な表情を見せる。楽章が進むにつれて情熱的になっていくが、それでもしなやかさを失わない。後年のベートーヴェンの音楽のように剛直ではなく、もっとしなやか。それを実にうまく演奏してくれる。完璧なアンサンブル。インターナショナルすぎる気がしないでもない(要するに、ドイツっぽさをあまり感じない)が、これも素晴らしいベートーヴェン。初期のベートーヴェンを弦楽四重奏曲の魅力を堪能できた。

 メンデルスゾーンはもっと素晴らしかった。作曲家メンデルスゾーンについては、底が浅いなどという評がしばしばみられる。最晩年のこの弦楽四重奏曲第6番についても、ベートーヴェンの真似だとか、創作力の衰えなどといわれる(プログラムにもそのようなことが書かれていた)が、私はまったくそうは思わない。大好きな曲の一つだ。ベートーヴェンの影響は強いと思うが、晩年のメンデルスゾーンの人生に対するやるせなさ、悲しみ、怒りをたたきつけたかのよう。お行儀のよい均整美の中にロマンティックな感情を押し込めようとしてきたメンデルスゾーンが晩年になって本音を吐露したのが、この曲だと思う。

 第二楽章が素晴らしかった。涙が出そうになった。ぐっと抑えられた悲しみが深く沈潜し、心の奥底で渦巻く。終楽章のうねりも素晴らしい。感情移入し過ぎない演奏であるがゆえに、深い思いが描き出される。アンサンブルは最後までまったく乱れず、しかも、安定した低弦にヴァイオリンのつぶやきが重なる。特に感情移入を強めなくても、そこに作曲者の深い思いが伝わってくる。

 グリーグの弦楽四重奏曲もとても良かった。第二楽章の叙情的なメロディはうっとりするほど。終楽章のうねりも素晴らしい。インターナショナルな演奏だとはいえ、ノルウェーらしい(ゲルマンでもスラヴでもラテンでもない特有の抑揚)がしっかりと聴きとれ、特有の情景が浮かび上がる。

グリーグは、小学生のころ「ペール・ギュント」組曲を繰り返し聴いていたが、その後、聴く機会はほとんどなかった。が、ヴァイオリン・ソナタといい、弦楽四重奏曲といい、まさしく名曲。これからもっと聞きたい作曲家の一人だ。

 上海クァルテットを聴くのは二度目だと思う。以前、ベートーヴェンの中期の弦楽四重奏曲を聴いた記憶がある。改めてこの四重奏団の力量を思い知った。

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