METライブビューイング「タンホイザー」 感動の涙を流した
銀座の東劇でMETライブビューイング「タンホイザー」をみた。素晴らしかった。終幕は感動の涙を流した。
歌手陣は言うまでもなく全員が最高レベル。ヨハン・ボータのタンホイザーは第三幕の「ローマ語り」が絶品。ミシェル・デ・ヤングのヴェーヌスはエロティックで力感にあふれる。ギュンター・グロイスベックはちょっとだけ声の出ないところがあった(風邪でもひいていたのか?)が、全体的には貫禄あふれるヘルマンを歌い切った。牧童のアジア人歌手も素晴らしい。とても美しい声。
その中でもとりわけ私が心惹かれたのはヴォルフラムを歌ったペーター・マッテイだった。第二幕も表現力も豊かで声も美しく、姿かたちも様になる。第三幕の「夕星の歌」から後は、ただひたすらそのすごさに圧倒された。「ローマ語り」の後のやり取りは真に迫っている。ヴォルフラムの苦悩と人柄が伝わってくる。
エヴァ=マリア・ヴェストブルックのエリーザベトも実に美しい。気丈で愛情にあふれ、しかも可憐で、十分に肉感的。まさしくエリーザベトだと思った。エリーザベトは清純なだけの聖女ではない。清純な聖女があんなアリアを歌わない! ヴェストブルックのエリーザベトこそが私の考えるエリーザベトだ。
もう一つ特筆するべきは合唱のすごさ。機敏で繊細で、ダイナミック。このオペラの場合、ワーグナーの世界が合唱によって作られているのを強く感じる。
指揮はジェイムス・レヴァイン。ロマンティックで感情の起伏をダイナミックに描く。ただ、歌手たちはインタビューに応じていたのに、レヴァインに関してインタビューがなかったのが気がかり。指揮する姿を見ても、少し手が不自由に見えた。気のせいならいいが。
演出はオットー・シェンクの伝統的なもの。1977年初演だという。なるほど、このオペラはこのような物語だったんだ…ということを認識するにはありがたい。ト書き通りの時代、ト書き通りの仕草。それでいて、中世の絵巻になっている。これはこれですごいことだ。
それにしても、メトロポリタンの実力はすさまじい。それにしても、ワーグナーのオペラは素晴らしい。改めて思った。
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