東京シティフィルの第九 円熟のマエストロ飯守
2015年12月28日、東京文化会館で飯守泰次郎指揮、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団によるベートーヴェンの第九特別演奏会2015を聴いた。今年三度目の第九。素晴らしい演奏。
25日に聴いたパーヴォ・ヤルヴィ+N響の第九がまだ耳に残っていたため、第一楽章が始まった途端、「なんと遅いんだ!」と思ったが、もちろんヤルヴィが速すぎたわけだ。
ティンパニで縁取りしつつ、要所要所で「タメ」を作って輪郭を明確にして偉大な世界を作り上げていく。ヤルヴィのような若々しいベートーヴェンではなく、大きな足取りで世界を構築していく巨大なベートーヴェンが浮かび上がる。それが実にベートーヴェン本来の音楽のあり方にマッチしている。徒に巨大なのではなく、じっくりと精神的に深い世界を構築していくのがよくわかる。
まさしくマエストロ飯守の円熟ということだろう。私は第一楽章から第三楽章まで、何度となく魂を震わせた。第三楽章も実に美しい。東京シティフィルもきれいな音で深くて大きな世界を作っていく。木管楽器の掛け合いがとてもしっかりしているのを感じた。
先日のヤルヴィの第九にも大きな説得力を感じたが、巨大な第九を子どものころから聴いてきた私は、マエストロ飯守の第九のほうにいっそう感動する。
ソリストは小森輝彦、望月哲也、池田香織、横山恵子。合唱は東京シティ・フィル・コーア。もちろん見事な歌唱だったが、ソリストの音程の不確かさや合唱のアンサンブルのずれを少しだけ感じるところがあった。とはいえ、最後はやはり圧倒的に盛り上がった。
やはり第九は素晴らしい。そして、マエストロ飯守の円熟も素晴らしい。心から感動した。
これが今年最後のコンサートになる。ここ数年、大晦日は「ベートーヴェンは凄い!」ベートーヴェン全交響曲連続演奏を聴くことにしていたが、今年は父が亡くなり、母が一人残されているので、大晦日は母のいる施設に顔を出すことにして、コンサートには出かけないことにした。
昨年まで、ラ・フォル・ジュルネのコンサートを加えると、毎年、100前後のコンサートを聴いていたが、今年は、数えてみると67のコンサートしか足を運んでいなかった。チケットを持ちながら、両親の体調悪化や父の死、その後の儀式などのために行けなくなったコンサートもいくつかあった。後半はそもそもチケットを入手することも自粛気味だった。もう少し聴きたかったが、やむを得ない。
が、ともあれ、最後のコンサートがこのような名演だったことはとてもうれしい。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- METライブビューイング「ドン・カルロス」 フランス語版の凄味を感じた(2022.05.17)
- バーエワ&ヤノフスキ&N響 苦手な曲に感動!(2022.05.14)
- Youtube出演のこと、そしてオペラ映像「パルジファル」「シベリア」(2022.05.10)
- ヤノフスキ&N響 「運命」 感動で身体が震えた(2022.05.08)
- オペラ映像「イェヌーファ」「炎の天使」「魔弾の射手」(2022.05.01)
コメント