レティシア・モレノ ヴァイオリン・リサイタル 「ツィガーヌ」に興奮!
2016年1月22日、武蔵野市民文化会館で、レティシア・モレノのヴァイオリン・リサイタルを聴いた。素晴らしかった。興奮した。
モレノはスペイン出身のかなり若い女性ヴァイオリニスト。30歳前後に見える。私は今回初めて名前を知った。
スペインを前面に押し出したプログラムで、衣装もスペイン風。まるでフラメンコの踊り子を思わせる。バラ色のドレスで足のところが大きく割れている。スタイル抜群。演奏もきわめて情熱的で、まさしくスペイン風の歌いまわしがふんだんに現れる。ピアノ伴奏は鈴木慎崇。
最初はトゥリーナ作曲のヴァイオリンとピアノのための「サンルーカルの娘の詩」。トゥリーナは20世紀前半のスペインの作曲家だというが、とてもおもしろい。第3楽章の情熱と第4楽章の叙情に圧倒された。次はドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ。フランスの曲とは思わないようなスペイン的なアクセントが強調される。くっきりしたヴァイオリンの音色で、アクセントが強い。こんなドビュッシーは初めて聴いた。根っからのドビュッシー好きは抵抗を感じるかもしれないが、私のようなドビュッシー不感症的人間にはこれはむしろ心を引かれる。フラメンコを見ると、「見得を切る」としか表現できないような瞬間があるが、それと同じようなアクセントがモレノのヴァイオリンにはある。それがとてもおもしろい。
後半には、グラナドスのヴァイオリン・ソナタとファリャのスペイン民謡組曲、そしてラヴェルの「ツィガーヌ」。前半にもまして素晴らしかった。とりわけ、「ツィガーヌ」は絶品。生真面目ではなく、かなり自由に音を動かす。が、そのすべてがぴたりを決まっている。すさまじいテクニックとキレの良い音。振幅の大きい音楽を作っていくが、品が悪くならない。魂を揺り動かす。感動した。すごいヴァイオリニストだと思った。鈴木慎崇のピアノもヴァイオリンをしっかりとサポートしながらも、はっとさせるような美しい音色を紡ぎだす。素晴らしい掛け合いだった。
アンコールは、グラナドスのスペイン舞曲第5番「アンダルーサ」とファリャのスペイン民謡組曲より「ナナ」とのこと。もちろん、スペイン音楽に疎い私にとっては未知の曲だったが、とてもおもしろく聴いた。
武蔵野市民文化会館では、しばしばこのように一般には名前を知られていない若手の演奏家が圧倒的な演奏を聴かせてくれる。音楽の喜びを存分に味わった。
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