« 高齢者問題・テロ問題 | トップページ | 文芸ドラマのDVD「赤と黒」「チボー家の人々」「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」「現代の英雄」 »

正月にみた映画ソフトなど 「街の恋」「愛のめぐりあい」「東京物語」「秋日和」「秋刀魚の味」「ライフ・オブ・パイ」

正月三が日、母のいる施設にほぼ毎日、ちょっとだけ寄り、そのほかは無理をしない程度に仕事をして、音楽を聴いたりテレビ番組を見たり映画などのDVDを見たりして過ごしていた。

 何本か購入した映画DVDBS放送を録画した映画を見た。感想を書く。

 

855


「街の恋」 
1953年 イタリア映画

 1953年のイタリアのオムニバス映画。ハリウッド映画のような華やかな恋ではなく、市井の人々の恋をドキュメンタリータッチで描こうとするもの。素人を使って、実名で演じてもらっているという(ただし、自殺者、売春婦などを扱っているので、本当に実名かどうかかなり疑問に思う)。監督は、当時若手だったカルロ・リッツァーニ、ミケランジェロ・アントニオーニ、ディーノ・リージ、フェデリコ・フェリーニ、フランチェスコ・マゼッリ、アルベルト・ラトゥーダ。やはりフェリーニとアントニオーニの担当部分がずば抜けている。その後の名作をほうふつとさせる短編だ。

 フェリーニの作品は明らかなフィクション。不思議な結婚相談所で無垢な女性に出会う話。異界の中に現れた無垢の存在。後年のフェリーニの雰囲気がすべて現れる。映像美にも圧倒された。アントニオーニの作品も目を引く。3人の自殺未遂者の心理を描く。ノンフィクションの形を取りながらも見事な演出。

 

714wvlrkcjl__sl1408_


「愛のめぐりあい」 ミケランジェロ・アントニオーニ監督 
1995

 アントニオーニが晩年にヴィム・ヴェンダースの協力を得て監督した映画。アントニオーニはパゾリーニやワイダとともに私の大好きだった映画監督だが、この映画は見たことがなかった。今回みて大傑作だと思った。

 ジョン・マルコヴィッチがアントニオーニの分身として登場。目撃したり空想したりする4つの愛と性の物語を語る形式のオムニバス映画だ。愛し合えそうで愛し合えない、あと少しで肉体の奥まで理解し合えそうでできずにいる男女。閑散とした港町、がらんとした石造りの街。孤独感、空虚感、むなしさ、そして空回りする愛の衝動。それをひしひしと感じる。四つの話の四人の女優(イネス・サストル、ソフィー・マルソー、ファニー・アルダン、イレーヌ)が素晴らしい。もちろん、マルコヴィッチをはじめとする男優たちもいい。

舞台になっているフェラーラやポルトフィーノ(40年近く前、一度訪れたことがある)に行きたくなった。マルチェロ・マストロヤンニとジャンヌ・モローが特別出演。懐かしい!!

 

「東京物語」 1953年

 昨年、原節子追悼番組としてNHK・BSで放映されたもの。この映画を久しぶりにみた。すべての場面が絵画のように美しい。小津の代表作であることは間違いない。すべてのセリフが紋切り型であって、これまで何度も聞いてきた日常の言葉なのだが、それを用いながら、映像によってそれぞれの人物の心情を示す。それぞれの人物の立場、考え方が手に取るようにわかる。

 笠智衆はまだ40代のはず。70代にしか見えない。妻役の東山千栄子、息子役の山村聰、大坂志郎、娘役の杉村春子、香川京子、いずれも大げさではなく、日常に根付いた演技。とりわけ杉村春子が凄い。戦死した次男の妻役の原節子はちょっとわざとらしい演技だが、最後、父親への告白によって、そのわざとらしさも納得できる作りになっている。

 実は小津安二郎はあまり好きではない。まだるっこしいし、ウェットな雰囲気を感じる。が、これは間違いなく名作だと思う。かなり感動してみた。

同時に、もしかしたら、昨年、高齢のために東京に移住した両親はこの老夫婦と同じような気持ちではなかったのだろうかととても気になってきた。

 

「秋日和」 小津安二郎 1960年

 京橋のフィルムセンターで何度か小津特集が行われた。その時、小津の映画のほとんどすべてみたつもりだった。が、今回、原節子追悼番組としてNHKで放送されたのをみると、どうもこれは初めてみるような気がする。とはいえ、私がフィルムセンターに通っていたのは40年以上前なので、すっかり忘れたのかもしれない。

 原作は里見惇。いかにも小津らしい映画。ストーリーも演出も小津流。3人の大学時代の友人(佐分利信、中村伸郎、北竜二)が、おせっかいにも亡き友の未亡人(原節子)とその娘(司葉子)の縁談をまとめようとする。そこで誤解が生じ、小さな波乱が起こるが、ともあれ娘と相手(佐田啓二)は愛し合うようになって話がまとまる。未亡人は亡き夫を思いつつ、娘を送りだして一人で生きていく。笠智衆、岡田茉利子、渡辺文雄、沢村貞子、岩下志麻らの懐かしい顔が見える。

 これといったメリハリのない話で、スローテンポで、ふつうの映画からは不自然な真正面からのショットの連続など、かなり一本調子な演出なのにおもしろく見られるのはさすが。無責任に話を進める上流の男三人とアパートに住む母娘の対比がさりげなく描かれている。

 現代からみると、濃密な人間関係が印象的だ。家族、会社が共同体としてしっかりと成り立っている。お互いが知り合いで、縁談などのプライベートなことを話す。アパートのドアをふだん締めずにいるのもちょっと驚いた。母親(原節子)が最後にアパートの鍵をかける場面が残された母親の孤独を描く行為として意味を持っている。確かに、昔はこうだった。こうだったから、結婚するのが当たり前で、少子高齢化という大問題もなかった。

 私は1951年生まれなので、この映画は私が小学生のころのものだが、映される風景は私が小学校見た光景とはかけ離れている。私は九州の田舎で育ったので、東京のこのような近代的な建物は1970年に東京に出るまで見たこともなかった。私の知っているのは、むしろ1953年の「東京物語」に出てくる光景、しかもどちらかというと最初と最後の老夫婦の住む尾道のほうに近い。

 ただちょっと気になったのは、原節子が指にマニュキュアを塗っていること。ずっと和服で過ごしているが、けっして古風な人間ではなく、むしろ進歩的、西洋的な人間という内面を指に示しているのかもしれない。

 もう一つ、人に関して「ある・ない」という表現が多用されるのも気になった。この映画に限らず、小津の映画を見ると、登場人物の多くが「恋人があるんですか」「いえ、ありません」「なかなかいい社員があるんですが」「あの夫婦には赤ん坊があるの」などという言い方をする。小津特有なのか、それとも当時このような表現が多かったのか。

 

「秋刀魚の味」 1962年

 これも久しぶりにみた。妻をなくし、年頃になった娘を嫁に出す男の話。小津がしばしば描いてきたパターン。何人かの役者は異なるが、「秋日和」と同じような三人組の同級生がおせっかいに縁談を進めることで成り立っている。いつものようにありきたりのストーリーをあまりに卑俗でありきたりのセリフでつなぐ。が、特異な映像と情緒で見事に雰囲気のある作品に仕上がっている。人間模様がきめ細かく描かれる。

 笠智衆の生活感もいいし、長男役の佐田啓二もいいが、やはり男の私としては岩下志麻と岡田茉莉子の美しさに呆然とする。ともにきっぱりとした現代の女性を演じている(といっても、今からみるとかなり古風だが)。婚期を逸して色気を失った中年女を演じる杉村春子にも圧倒された。ついでに言うと、昔みたとき、当時から伝説の美人女優だった原節子について、「大人になったら、この人を絶世の美人と思えるようになるのだろうか」と思っていたが、60歳を過ぎて「東京物語」「秋日和」をみても、まだそうは思えない。

 

「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」 2012年

 正月のテレビ放映で見た。封切時から関心を持っていたが、行きそびれていた。テレビで放映されるのを知ってみた。とてもおもしろかった。いや、それ以上に衝撃的だった。

 ヤン・マーテル原作の小説に基づくアン・リー監督のアメリカ映画。トラと漂流したというちょっと哲学的な動物との交流物語かと思っていたら、まったく違っていた。漂流するまでに様々な伏線がある。漂流とはあまり関係なさそうだと思ってみていたことがらがすべて意味を持ってくる。ともあれ、漂流の場面も実におもしろい。CGも見事。理性的な関係を作れない動物との駆け引き、神と自然と生命のつながり、人を食う島などを語る映像が素晴らしい。そして、トラとの漂流が終わった後の「種明かし」! 

 とはいえ、実はまだよくわからないことが多い。気になってネットで調べてみて、リチャード・パーカーというトラの名前の由来などを知って再びびっくり! 

 原作を読んでみたくなった。ただ、本を購入しても、読むべき本がたまっているので、そこまで手を付けられるかどうか。ともあれ、とても興味をひかれる小説だ。

|

« 高齢者問題・テロ問題 | トップページ | 文芸ドラマのDVD「赤と黒」「チボー家の人々」「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」「現代の英雄」 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/63007424

この記事へのトラックバック一覧です: 正月にみた映画ソフトなど 「街の恋」「愛のめぐりあい」「東京物語」「秋日和」「秋刀魚の味」「ライフ・オブ・パイ」:

« 高齢者問題・テロ問題 | トップページ | 文芸ドラマのDVD「赤と黒」「チボー家の人々」「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」「現代の英雄」 »