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METライブビューイング「真珠採り」 埋もれていた名作オペラが最高の形でよみがえった

 東劇でMETライブビューイング「真珠採り」をみた。素晴らしい。あまりの完成度に驚いた。

 まず序曲の場面に舞台の上下を使って行われる海中の場面に息を飲んだ。本当に真珠とりをしているかのような動き、吐き出す空気の泡。リアルでありながら最高に美しい(本当に海中で撮影した映像かと思ったら、バレエの人たちによるロープをつけてのパフォーマンスだということが後に解説された)。そして、そのすぐ後に、これまた見事な合唱。オーケストラも力感にあふれ、繊細。この時点ですっかりセイロン島のオペラの世界に入りこんだ。

 3人の主役が凄まじい。進行役のパトリシア・ラセットが言う通り、まさしく「ドリームチーム」。レイラを歌うディアナ・ダムラウは言うまでもなく圧倒的。声は最高の美しく力感にあふれている。音程のしっかりした高音の澄んだ美しさは格別。愛の心を抑えきれないインドの巫女の苦しみをうまく演じている。容姿も文句なし。ナディールのマシュー・ポレンザーニも歴代の名歌手に負けない声の美しさだと思う。第一幕の有名なアリアのいわゆるソット・ヴォーチェによる高音が素晴らしい。マリウシュ・クヴィエチェンの歌うズルガとの二重唱も最高の掛け合いだった。クヴィエチェンも迫力ある声で第二幕のダムラウとの二重唱は最高だった。この三人は歴代のこれらの役を歌った名歌手に引けを取らないのではないかと思う。

冒頭の海の場面をはじめ、演出のペニー・ウールコックの力量には驚嘆した。セイロンの色合い、海辺の様子を描き出す。第二幕に津波が押し寄せるが、そのリアリティもすさまじい。最後の日の場面もハリウッド映画的な盛り上がりを見せる。オリジナルの楽譜だけでは忘れがちな東洋色や水の力を舞台上で描き出し、しかも、現代の様子も織り交ぜて、それが今と無関係な神話的世界でなく、現代のリアルな問題であることを示唆する。

指揮のジャナンドレア・ノセダも情に流されず、知的で、これまた力感にあふれる演奏。オーケストラも素晴らしい。

 ダムラウがMET総裁ゲルブに持ちかけて実現した演目だという。100年ぶりの上演だというが、こんな名作がこれまで埋もれていたとは信じられない。美しい旋律がふんだんに聞こえ、ストーリもわかりやすくて、とても魅力的なオペラだと思った。

 私はビゼー好きではない。むしろ「カルメン」は苦手なオペラだ(なぜ苦手かを説明すると長くなるので、今回はやめる)。「真珠とり」もフェニーチェ劇場で上演されたDVD(中島康晴さんがナディールを見事に演じている!)をみたことがあるだけ。が、20代のビゼーのこのオペラの魅力には圧倒されるしかない。メトロポリタンオペラのおかげでまたも一作、埋もれていた名作オペラがよみがえった。

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