« マニラの旅 | トップページ | バレンボイム+∔シュータツカペレ・ベルリン ブル9もすごかった »

バレンボイム+シュータツカペレ・ベルリン ブルックナー8番に興奮

 2016219日、サントリーホールでダニエル・バレンボイム指揮によるシュターツカペレ・ベルリンの演奏でブルックナーの交響曲第8番を聴いた。最高の演奏だった。感動した。

こんなにすごい演奏をしてくれるのなら、マニラに行ってる場合じゃなかった、ブルックナーの第1番からの連続演奏会をすべて聴くんだった! と思った。チケットが売り出された当時、親の調子がよくなかったので、いけなくなる確率が高いと思い、2つのコンサートに絞って購入したのだった。その時点で、それ以外のコンサートはあきらめていた。

それにしてもすごい演奏。第一楽章からして、ブルックナーの深淵な世界が展開される。展開されるというよりも、深い世界に引き込まれていくというほうが正確だ。まさしく巨匠風の演奏。巨大で深く、宗教性をたたえる。ヴァントのようなアポロ的な演奏ではない。もっとうねりがあり、波乱があり、激情がある。魂の爆発、祈りの爆発がある。

バレンボイムもすごいが、楽団員も本当に素晴らしい。なんという美しくも重厚な金管の音! ホルンもワーグナー・チューバもトロンボーンも朗々と鳴らしながら、それがしっかりと音楽の中で生きている。木管も弦楽器も本当に素晴らしい。

とはいえ、音楽学に無知な私は、このような演奏について分析的に語る術を持たない。音楽に浸り、言葉を失い、ただただすごいと思って聴いただけだった。

私が小学生のころ、音楽にのめりこんだのは、いくつかの曲のある部分に差し掛かると、身体全体が震え、悪寒というのか恍惚というのか、そんな得体のしれない身体的現象に襲われたからだった。それはほかでは味わえいない感動であり快感だった。そのような全身を揺さぶられるという体験を求めて、音楽を聴き続けてきた。だが、年齢を重ねるごとにだんだんとそのような体験は少なくなってきた。知的に感動したら、うっとりしたり、涙を流すようになってきた。

が、今日は何度、全身に震えを感じたことか。それぞれの楽章に二度か三度、全身が震えた。第三楽章のシンバルの場面、第四楽章の最終部は我を忘れるほどだった。

そんなことしか言えない。ともあれ感動し、興奮した。

第二楽章でうめき声とも唸り声ともつかぬような声が聞こえた。バレンボイムの出した声だったのだろうか。のどでも詰まったのか? 楽団への指示のようには思えなかった。

|

« マニラの旅 | トップページ | バレンボイム+∔シュータツカペレ・ベルリン ブル9もすごかった »

音楽」カテゴリの記事

コメント

全く同感です。バレンボイムは15年程前に私自身がNYに住んでいた時に
ウィーンフィルを指揮(ピアノの弾き振りもありました)した時に聴きました。
もちろん大変優れた演奏だとは思いましたが、一つの優秀な演奏なんだなぁ、
という印象だったと記憶しています。
しかし今夜のブルックナーは凄いの一言ですね。
というか、先生の感想通り、言葉では言い尽くせないものがありました。
凄い演奏というものはこういう事なんですね。久し振りに驚きました。
私は小学校の時に音楽教室で生のオーケストラを聞いて、
その瞬間に時が止まりました。その時の事も言葉で表現するのは不可能で、
ただただ時が止まった事だけを覚えていますし、その瞬間の事は今でも
魂(という呼び方が相応しいかどうか分かりませんが)がしっかり覚えています。
今日の演奏はそういう瞬間が何度となくあったと思います。
しばらく放心状態になってました。

投稿: | 2016年2月20日 (土) 01時52分

2月20日にコメントをくださった方
コメント、ありがとうございます。
第9番も素晴らしかったですね。私はバレンボイムのワーグナーはかなり聴いており、歴代の指揮者の中で最高と思えるほどすごいと思っていたのですが、ブルックナーもそれに劣らないと今回、知りました。1977年にパリを訪れた時、パリ管の音楽監督になったばかりのバレンボイムを現地の音楽通が猛烈に批判していたのを覚えています。私もここまでの巨匠になるとは予想していませんでした。
これからもまだまだ活躍してくれそうです。楽しみです。

投稿: 樋口裕一 | 2016年2月21日 (日) 18時43分

2楽章の唸り声は、一階中央やや後ろよりのお客が発した迷惑な声でした。私の席からは少し離れているので、よくわかりませんでしたが、泥酔しているような感じもあり、近くの客が退場するようにうながしてもいました。そして、2楽章が終わり、係員により抱えられるようにして場外へ出されました。
3楽章の、入念を極めたアダージョを安心して聴くことができて幸せでした。

投稿: | 2016年2月22日 (月) 11時34分

ご無沙汰しております。小生も はるばる西日本の片田舎から、ミューザ川崎の ブルックナー8番聞いてきました。サントリーにしなかったのは、もともとミューザの近くに住んでたので、親近感があったからです。いやー素晴らしかったです。去年のヤノフスキさんもよかったけれど、また違う視点で、すごい演奏だったと思います。オケもいうこと無しでしたが、バレンボイムの集中力とテンポ感は、さすがにピアニストとしても最上級の方だけあって溌剌感いっぱいでで、圧倒されてしまいました。小生は、ただ一度だけ、5年待ちで取れたバイロイトでのマイスタージンガーを聞いたことがあるだけです。その時、あそこは客席からオケが見えないので、バレンボイムはサンダル履きにポロシャツで指揮してました、暑いですからね。あの時の若々しい印象から、正装で堂々とした巨匠風に変貌されてたのが驚きでした。ヤルヴィさんとは懇意らしいので、なんとかN響が招聘してくれればまた飛んでいきたいですよ。

投稿: yotin | 2016年2月22日 (月) 22時27分

2月22日11時34分にコメントをくださった方
情報をありがとうございます。
そうでしたか。私は2階席でしたので、いったい何が起こったのかと驚いたのでした。あまりに大きな声ですし、日本人離れした声でしたので、もしかしたらバレンボイムなのかと思ったのでした。

投稿: 樋口裕一 | 2016年2月23日 (火) 00時02分

yotin 様
コメント、ありがとうございます。やはりミューザでの演奏も素晴らしかったんですね!私は99年のバイロイトの「マイスタージンガー」をバレンボイムの指揮でみました。その年、「トリスタン」もみた記憶があります。私の音楽人生最高の思い出の一つです。その時も圧倒されたのですが、今回もそれに匹敵するような感動でした。

投稿: 樋口裕一 | 2016年2月23日 (火) 00時08分

遅ればせながら、、、
私もサントリーホールでブル8を聞きました。いい悪いなどというのとは別次元の感動を味わわせてもらった感じです。自分がこれまでの生涯に聞いた音楽会の、間違いなくベスト5には入るなどと勝手に思いながら、サンントリーホールを後にしました。
お金の問題もあって、このシリーズはブル8ただ1枚しかチケットを買っていなかったのですが、翌日の9番の日もチケットはあるようだったので、もうお金の問題ではない、無理してでも買おう、、、と思ったほどでした。しかし、しばし考えてそれを断念したのです。こんな感動は一回でいい。もうこのブル8を味わった後でさらに一体何を望むのか、との感慨が頭をよぎったのです。
樋口先生のブログでは、そのブル9も尋常ならざる感動の音楽会だったようですが、それをあまり羨ましく思わないほどあの夜のブル8は私にとって特別でした。

バレンボイムは東京でのリングチクルスやスカラとの公演を聞いてすばらしい指揮者と認識はしていましたが、ここまで凄かったかとあらためて思いました。
指揮者バレンボイム関してふる~い記憶があります。まだ私が高校生のころです。当時購読していたレコード芸術に、鼎談で「フルトヴェングラーの後継者は誰か」というのがありました。出席者の一人は柴田南雄で(他の2人は忘却の彼方)彼がフルヴェンの後継者にバレンボイムの名前を挙げていたのです。当時のバレンボイムは日本ではピアニストとして知られており、指揮も(!)する人程度の認識でした。だからあの柴田南雄が名前を挙げたのを読んで、まさかと思いました。あまりに意外だったもので、今に至るまで覚えています。そうしてあのブル8を聞くにおよび、柴田南雄の慧眼に恐れ入ってしまいました。見る人(聞く人?)が見ればわかるんだと、あの鼎談を久しぶりに思い出しました。

最後にひとつ、東京の聴衆は本当に洗練されてきたなと近頃は感心しております。2楽章の騒音は論外ですが、終楽章の最後、大音響の大団円で終えたあと、指揮者が力を緩めるまで一瞬の静寂があったことです。正確にいえば、2人ほど音が止まるや拍手をしだした人がおりましたが、他は追随せず、むしろシィーっという雰囲気がありました。いずれ東京での音楽会は、最後の音が鳴り終わったあと、一瞬の静寂に浸れるようになっていくのではないでしょうか。昔のオレは曲の最後を知っているのだといわんばかりのフライング拍手がだんだん少なくなってきたのは、ありがたき限りです。

投稿: ル・コンシェ | 2016年2月24日 (水) 17時44分

ル・コンシェ 様
コメント、ありがとうございます。
そうですね。私も考えてみたのですが、確かにベスト5にはいるかもしれません。ベストワンは私の場合、ヴァントの最後の来日コンサートなのですが、今回はそれに勝るとも劣らない演奏だったように思います。
私も70年代からバレンボイムを高く評価する人がいたことは覚えています。そうでしたか、柴田南雄が高く評価していましたか。さすがですね。70年代には、むしろ「顔がよいためにおば様たちに人気のピアニストが調子に乗って指揮を始めた」という扱いをする人が多かったように思います。私もしばらくそう思っていたことを恥じるばかりです。
マナーのよさについても同感です。フライングする人がいるのではないかとひやひやするのですが、今回はとても良かったですね。常にこうあってほしいものです。

投稿: 樋口裕一 | 2016年2月25日 (木) 23時24分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/63236455

この記事へのトラックバック一覧です: バレンボイム+シュータツカペレ・ベルリン ブルックナー8番に興奮:

« マニラの旅 | トップページ | バレンボイム+∔シュータツカペレ・ベルリン ブル9もすごかった »