バレンボイム+∔シュータツカペレ・ベルリン ブル9もすごかった
2016年2月20日、サントリーホールでダニエル・バレンボイムのピアノと指揮、シュータツカペレ・ベルリンの演奏によるモーツァルトのピアノ協奏曲第23番とブルックナーの交響曲第9番のコンサートを聴いた。昨日のブル8に続いて本当に素晴らしい。今日も、興奮した。
前半のピアノ協奏曲が始まった時、昨日のブル8との音の質感の違いに驚いた。実に柔らかくしなやかな音。そして、バレンボイムの弾くピアノの美しさ。昔のバレンボイムはもっともっとロマンティックだったように思うが、意外と率直な演奏に思えた。だが、それでも表面を通り過ぎていくのではなく、構築がしっかりしており、しかも一つ一つの音に思いを込めているので、深い音楽が奏でられていく。
アンコール2曲。モーツァルトのピアノソナタ第10番の第2楽章と第3楽章。ただ残念ながら、私の体調が悪く、協奏曲が終わってすぐにトイレに向かった。アンコールの最初の曲はトイレで聴いた。拍手の間に会場に入って、2曲目は中で聴いた。
が、なんといっても、私の目当てはブルックナーの第9番。
やはり凄まじかった。モーツァルトとは打って変わった「剛音」とでも呼びたくなるような凄まじい音。しかし、もちろん徹底的に美しい。金管楽器の咆哮がこれほど美しく響くことに驚く。しなやかな部分も美しいが、盛り上がった部分の激情の美しさは比類がない。昨日と同じように、何度も何度も全身が震えた。震えたというよりも、文字どおり「しびれた」というほうが正確かもしれない。雷に打たれたように頭の先までしびれるところが何か所かあった。盛り上がるたびにしびれていた気がする。
私はこの曲の第二楽章スケルツォが大好きだ。ブルックナーのスケルツォはどの曲も好きだが、第九の第二楽章は別格だと思う。デモーニッシュな巨大な存在が宇宙を跋扈しているようなスケール感を覚える。それをこれほどまでに再現してくれる演奏はめったに聴けない。オーケストラ全体がひとつになってブルックナーの巨大な世界を作っていく。本当に素晴らしいオーケストラだと思った。
バレンボイムは大好きな指揮者の一人だ。これまでかなり聴いてきている。2002年にはベルリンに出かけて、シュターツ・オパーでバレンボイムによるワーグナーの連続10演目上演をみた。バイロイトでもかなりの演目をみた。ワーグナーの指揮に関しては、私はフルトヴェングラーよりもクナッパーツブッシュよりも尊敬している。ただ、実を言うとブルックナーについては、ベルリンフィルとのCDの全集を聴いたが、それほどすごいとは思わなかった。なんだかいじりすぎている気がした。今回、8番と9番しかチケットを購入しなかったのには、そのようなわけもあった。が、私の聴き方が悪かったのか、生で聴くとこれほどすごいのか。あるいは、その後、バレンボイムは成長したのか。もう一度、CDの全集を聴き返してみたいと思った。
いずれにしても、この二日間は至福の時間だった。改めてブルックナーの音楽の素晴らしさを思い知った。同時に、バレンボイムとシュータツカペレ・ベルリンが世界の冠たる存在であることも改めて知ることができた。
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