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エリシュカ+札響 チャイコフスキー4番が人類の魂の叫びの音楽に聞こえた

 201638日、サントリーホールで札幌交響楽団東京公演を聴いた。指揮はラドミル・エリシュカ。私が初めてエリシュカの指揮を聴いたのは2010年だった。札幌での名演奏に接した人々が東京に伝えたために実現したコンサートだった。それ以来、エリシュカの演奏は今度で4回目になるが、毎回、その素晴らしい音楽性に圧倒される。今回も本当に感動した。

 前半にはスメタナの「シャールカ」とドヴォルジャークの弦楽セレナードホ長調、そして後半にチャイコフスキーの交響曲第4番。

 私にはエリシュカがどのような工夫をしているのか、まったくわからない。何も目立ったことはしていないように聞こえる。ただ、出てくる音が私たちの聴き慣れた音とまったく異なる。音そのものに存在感があり、質感がある。ちょっと古めかしく、しなやかで柔らかくて、なめし皮のような音。しかも、流れてくる音楽が、過酷な人類の歴史に基づき、人間の日々の生活に根付き、自然の中に息づくかのようだ。

チャイコフスキーの交響曲第4番は、演奏によっては情緒に溺れた空疎で派手な音楽になる。だが、エリシュカの手にかかると、質感にあふれ、自然をたたえ、苦難を耐えながら生きていく人類の魂の叫びの音楽になる。まさしくいぶし銀の名人芸。

札幌交響楽団も素晴らしいオーケストラだと思った。まず弦楽器が素晴らしい。ドヴォルジャークの弦楽セレナードのしっとりとした情感で、弦の繊細でしなやかな美しさが十分に発揮された。木管も実に潤いのある音。私はふだんはファゴットとオーボエの音にはあまり惹かれない(クラリネットがもっとも好きな管楽器だ!)のだが、今日ばかりはこれらの美しさにすっかり魅せられた。金管楽器もしっかりとした音。エリシュカの思いを最高の形で音にしているのがよくわかる。

エリシュカが本国でも世界でもあまり高い評価を受けていなかったということが信じられない。札幌交響楽団との出会いがこれほどの名指揮者を私たちに知らせてくれたことに感謝したい。

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コメント

ご無沙汰しております。札響の方がTwitterにこの記事のブログ貼っておられました。僕はエリシュカの指揮は以前N響定期でヤナーチェクのシンフォニエッタとドヴォルザークの交響曲6番を聴きまして確かにいい演奏だなと思いましたが、どことなく歯に衣を着せた様でもどかしさを感じ、やはりエリシュカは札幌との名コンビで聴くべきだろうとその機会が来るのを待っていました。と言いますのは、このコンビによる『わが祖国』のCDが本場チェコのオケに負けない素晴らしい演奏で、それに比べてお互い慣れないN響とでは今一つという感想を持ったという事もあります。
さて、待望のエリシュカ=札幌の東京での初コンサートは、僕も大満足でした。最初メインプログラムがチェコものではない事に不満がありましたが、チャイコフスキーの4番は今まで何回も生で聴いた中でも抜群の超名演でしたね。生演奏に接した中にはロシアやヨーロッパの一流指揮官やオケの演奏もありますが、その全ての記憶が吹っ飛ぶ程の超名演と思いました。札響は元からうまいのをエリシュカがその実力と情熱を何倍も引き出したという感がありましたね。
前半、わが祖国から独立して演奏される機会はあまりない「シャールカ」もドヴォルザークの弦セレも、札響の洗練された美しい響きにボヘミア風な素朴な荒さを加えたいい演奏と思います。アンコールのスラヴ舞曲10も良かったですね。このコンビはまた聞きたいです。

投稿: 崎田幸一 | 2016年3月 9日 (水) 23時19分

崎田幸一 様
コメント、ありがとうございます。そうですか、札響の方が私のブログを貼り付けておられましたか。私の感想が演奏している方にも納得してもらえるとしたら、とてもうれしいことです。
本当に素晴らしい演奏でした。チャイコフスキーの4番は、実はあまり好きな曲ではないのですが、エリシュカの演奏を聴くと、魂が震えるほどの名曲だと思いました。札響とのコンビの演奏をもっと聴きたいですね。

投稿: 樋口裕一 | 2016年3月10日 (木) 23時16分

正確にはライブラリアンの方ですが、ご本人はもちろん多数のプレイヤーの方も樋口先生の御感想を喜んでおられると思います(^^)/。

投稿: 崎田幸一 | 2016年3月17日 (木) 22時06分

崎田幸一 様
お知らせいただき、ありがとうございます。
札響の方に私の感動が伝われば、とてもうれしいことです。そして、それがこれからのいっそうの名演につながると、こんなうれしいことはありません。

投稿: 樋口裕一 | 2016年3月19日 (土) 10時46分

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