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アンナ・ネトレプコ スペシャル・コンサート ネトレプコとエイヴァゾフ歌の力に興奮した

 2016321日、サントリーホールで開かれたアンナ・ネトレプコ スペシャル・コンサート in JAPAN 2016を聴いた。圧倒的な歌。興奮した。イタリア・オペラの歌の力のすごさをとことん味わった。

 私は2006年メトロポリタン・オペラの来日公演の「ドン・ジョヴァンニ」でネトレプコのドンナ・アンナを聴いて驚嘆してからのファン。もちろん、それ以前から美貌のソプラノという評判を知っていたが、その時の実演を聴いて、美貌だけではない群を抜いた名歌手だと知ったのだった。2010年のロイヤルオペラ日本公演では「マノン」と、幸運にも「椿姫」での代役での出演をみることができた。2012年にはザルツブルグに出かけて「ラ・ボエーム」やコンサート形式の「イオランタ」もみた。どれも圧倒的だった。

オペラ公演ではなく、一人のソプラノを中心にしたコンサートにしてはあまりの高額だが、このような興奮が得られるのなら決して高くない。ただ、チケットを購入した時にはプログラムが発表されていなかったので、ひそかに「四つの最後の歌」やロシアものやモーツァルトを期待していたのだが、イタリア・オペラのアリアが中心のプログラムだった。イタリアものをあまり聴かない私としては、ちょっと残念だった。

だが、実際に聴いてみると、いやはや本当にすごい。単に音程がよくて声が美しくて声がよく通る・・・というレベルではない。観衆を引き付ける力がすごい。声の演技力とでもいうのか。観客全員が歌に引き込まれ、歌の中に入りこむといって間違いないだろう。

私は三列目の左寄りで聴いたが、ネトレプコはますます声のコントロールが完璧になり、ますます表現力が増しているように思った。小さな声までもビンビンと響き、しかも最高に美しい。プッチーニ嫌いで、とりわけ「蝶々夫人」嫌いの私が「ある晴れた日に」に感動のあまり涙を流した。

テノールのユシフ・エイヴァゾフも共演。若い歌手だが、この人もネトレプコに劣らないほど素晴らしかった。強靭で美しい声。歌いまわしも見事。ただ、声のコントロールと表現力という面では、やはりほんの少しネトレプコよりも劣るように思った。

指揮はヤデル・ビニャミーニ、オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。メリハリのきいた指揮で、東フィルも素晴らしい演奏。いつも以上に気合が入っているのを感じた。

曲目は、ヴェルディ、チレア、プッチーニ、ジョルダーノのオペラ・アリアと二重唱だったが、いずれも絶品。私はとりわけ「イル・トロヴァトーレ」のネトレプコの歌う「穏やかな夜・・・この恋を語るすべもなく」、「ある晴れた日に」、「アンドレア・シェニエ」の二重唱「貴方のそばでは、僕の悩める魂も」に感動した。度肝を抜かれたといってもいいほど。

もちろん、これ以外の曲(エイヴァゾフによる「星は光りぬ」)も素晴らしかった。アンコールは、カールマンの「チャルダーシュの女」、「誰も寝てはならぬ」、クルティスの「忘れな草」。最後には多くの客がスタンディングオーベーション。周囲の人が立ってもいつまでも意固地に座り続けることの多い私も、ついに立ち上がった。

いやはや、こんな超人的な歌を聴いてしまうと、ほかの人の歌が聴けなくなってしまう。そう思うほどのすごさだった。

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