新国立劇場「ウェルテル」 素晴らしい演奏だったが・・・
2016年4月9日、新国立劇場でマスネ作曲のオペラ「ウェルテル」を見た。
指揮が巨匠ミシェル・プラッソン(私はこの人の指揮したCD・DVDを「ウェルテル」を含めて90枚以上持っている!)、タイトルロールが人気歌手マルチェッロ・ジョルダーニということで期待していたが、指揮は息子のエマニュエル・プラッソン、主役はディミトリー・コルチャックに交代。かなりがっかりして出かけた。が、とてもよかった。まったくがっかりすることはなかった!
ウェルテルのコルチャックはきれいに伸びる美声。容姿も素晴らしい。完璧にウェルテルに見える。私はロッシーニのオペラ映像でこの人を見て、ちょっと頼りないが美しい声でとても好感が持てると思った記憶があるが、まさにその通り。あまり朗々とした歌ではないが、それがウェルテルにまさにぴったり。もしかしたら、ジョルダーニよりも良かったかもしれない。シャルロットを歌うエレーナ・マクシモワはちょっと癖のある声。シャルロッテっぽくはないと思ったが、後半は特に気にならずにオペラにのめりこむことができた。アルベールのアドリアン・エレートも安定していてとてもいい。
そして特筆するべきは、ソフィーを歌った砂川涼子。外国人勢とまったく互角に美しくて音程の正確な声で歌う。しかも可愛らしい。見事にソフィーを演じていた。そのほかの日本人歌手陣(大法官の久保田真澄、シュミットの村上公太、ジョアンの森口賢)も好演。
ニコラ・ジョエルの演出はかなりオーソドックス。ゲーテの時代の建物や服装の雰囲気をよくだしている。見慣れないオペラでこのような演出はありがたい。
エマニュエル・プラッソンの指揮についても、特に不満はなかった。ただ、欲を言えば、父親ミシェルだったら、もっと繊細にもっとドラマティックに演奏して、ざわざわするような胸のうちを描いてくれるのではないかと思った。しかし、東京フィルハーモニーもとてもフランス音楽らしくしなやかに美しく演奏。
とても良い演奏だった。・・・とはいえ、プログラムに岸純信さんが書いておられたが、マスネのこのオペラを聴くと、まさしく「マドマゼル・ワーグナー」という感じがする。ワーグナー的語法による女性的なメロドラマ。繊細で甘美なのは結構なのだけど、私としてはもっと狂気の部分、暴力的な部分、魂の奥底をえぐるような部分がほしい。マスネにそのようなものを求めてもないものねだりだとわかっているが、やはりワーグナー好きとしては、そのようなものがほしくなる。マスネよりもワーグナーやシュトラウスのほうがいいな・・・と改めて思ったのであった。
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