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2016年ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン初日の感想

 2016年5月3日、今年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンがいよいよ始まった。この催しは日本では2005年に始まったので、もう12年目になる。最初の年からしばらくの間、私は「アンバサダー」としてこの催しにかかわった。そのおかげでこれまでフランスのナントの本場のラ・フォル・ジュルネを含めて、有料公演だけで432のコンサートを聴いてきた。そして、音楽によって激しい感動をたくさんしてきた。

 今年のテーマはnature ナチュール。すなわち「自然」であり「本性」でもある。実を言うと、私の好きな曲はどうもnatureの範疇に入らないものが多いようで、今回のプログラムは私の好みのものが少ない。さて、どのような感動を与えてくれるのか。

 本日は体調(実は腰痛に悩んでいる!)を考えて、あまり欲張らないように気をつけた。休み休み、無理をしないで聴いた。

 本日聴いたコンサートについて簡単な感想を書く。

・戸田弥生(ヴァイオリン)、ハンガリー・ジュール・フィルハーモニー管弦楽団、マールトン・ラーツ(指揮) グリーグ「朝」(「ペール・ギュント」より、ヴォーン=ウィリアムズのロマンス「揚げひばり」、チャイコフスキー「くるみ割り人形」の「花のワルツ」、レハールの「アドリア・ワルツ」、ワルトトイフェルのワルツ「クリスマスのばら」など。

 まずは肩慣らしの親しみやすい曲。なかなか楽しい。戸田さんの演奏した「揚げひばり」がとりわけ素晴らしい。ほかの演奏曲とはやや異質。しっとりとして、しかも深い。戸田さんが演奏したためもあるのかもしれない。バーバーの弦楽のためのアダージョを思い出した。とてもいい曲だと思う。

 なお、このブログで何度かお知らせした通り、多摩大学樋口ゼミの主催で、5月20日に戸田さんと野原みどりさんによるデュオリサイタルを代々木上原のムジカーザで開く。ぜひおいでいただきたい。

・梁美沙(ヴァイオリン)、ジョナス・ヴィトー(ピアノ) ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」とブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」

 

 梁美沙は好きなヴァイオリニストだ。勢いのある音楽を作る。不思議な迫力がある。今回も見事な演奏。とりわけブラームスは内に秘めた情熱がふつふつと湧いてくるような演奏。ただ、曲のせいなのか、私としてはもっと爆発することを期待していたが、そこまでは至らなかった。

・浜田理恵(ソプラノ)、マカオ管弦楽団 リュー・シア指揮 メンデルスゾーン「夏の夜の夢」序曲、ベルリオーズ「夏の夜」

 一階の最後尾の席で聴いたせいかもしれないが、オーケストラのバランスがよくない。バラバラな感じ。しかも、テンポが安定しない。メンデルスゾーンの精妙なこの序曲やベルリオーズでこれだと辛い。繊細さがなく、雰囲気が出ない。浜田さんの声はとても綺麗でフランス語の発音もとても良いと思うのだが、私としては音楽に乗れなかった。

・モディリアーニ弦楽四重奏団  ハイドンの弦楽四重奏曲第78番「日の出」、弦楽四重奏曲第67番「ひばり」

 とてもいい演奏。精妙にして広がりがある。見事なアンサンブル。「日の出」については、少しだけ私には納得できないところがあったが、「ひばり」は圧倒されて聴いた。ただ、昨年はもっともっと音程の正確さ、アンサンブルの美しさ、大きくうねる力感に感動した記憶がある。

・ルイス=フェルナンド・ペレス(ピアノ) ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」、リスト「オーベルマンの」(「巡礼の年 1年:スイス」から)、ドビュッシー「雪の上の足跡」、ドビュッシー「月の光」「喜びの島」

 これは文句なく素晴らしい演奏。すさまじい技巧。しかし、もちろんそれをひけらかすわけではない。知的で怜悧なリリシズムとでも言うか。感情に流されないが、十分にロマンティック。「月光」もきわめて構築的だが、流れが自然。ピアノをめったに聴かない私もこれには感動した。本日、最も感動したコンサートだった。

・ジェラール・コセ(ヴィオラ)、広瀬悦子(ピアノ) ベルリオーズ(リスト編) 交響曲「イタリアのハロルド」、ショスタコーヴィチのヴィオラ・ソナタ。

 ショスタコーヴィチのソナタはわけのわからない曲だった。私はショスタコーヴィチの室内楽はかなり好きなのだが、この曲はさっぱり! 数日前から、車の中で二度ほど手持ちのCDを聴いて予習したが、なんだかさっぱりわからなかった。実演を聴けば楽しめるだろうと思っていたら、実演はもっと途方に暮れた。何をしたいのかわからない。長い。ベートーヴェンの「月光」を思わせる音列が何度か現れるが、果たしてこれが何を意味するのか。コセさんも演奏以前から観客の反応に予想がついていたらしく、「ショスタコーヴィチの曲は難しすぎたので、もう一曲アンコールをする」と話して、リストの小曲を演奏。ただ、これを聴いてもショスタコーヴィチを聴いて心の中に生じた不可解な気持ちは解消されなかった。

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コメント

今日は。私はモディリアーニ目当てでラフォルジュルネに行った(ついでに他のも聴きましたが)ので、彼らの名誉のために言わせてください。第一バイオリンが来日しなかったので、今年の演奏をモディリアーニ弦楽四重奏団と思わないでいただきたいです。
9月に王子ホールで公演するのでぜひ足をお運びください。
ちなみに関係者ではありません。いちファンです。

投稿: もん坊 | 2016年5月 6日 (金) 16時58分

もん坊 様
コメント、ありがとうございます。
私も2007年に初めてナントでバルトークを聴いた時からモディリアーニには圧倒されてきました。拙著「ときめきのクラシック」(あまり売れませんでしたが、2014年ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンの公式本です)でもモディリアーニを紹介しています。もし、よろしかったらお読みになってください。
第一ヴァイオリンのフィリップ・ベルナールさんが来られずにニコラ・トリクールさんに変更になったこと、確かにアンサンブルの上で大きな影響があるんでしょうね。トリクールさんも素晴らしいヴァイオリニストだと思いましたが、やはりカルテットというのは4人の息が大事なのでしょう。そうですか、9月に来日ですか。できたら行きたいと思います。

投稿: | 2016年5月 6日 (金) 23時24分

会場も樋口先生と一致したのは最初のジュール・フィルのみ、翌日のケフェレック&シャルリエはFM生中継で部分的に聴きました。どちらも確かに名演でした。戸田さん、シャルリエ、ケフェレックは最初から良い事は予想がつきますが、ジュール・フィルとその指揮者も良かったですね。マルタンは、無名だけど演奏は一流というアーティストを発見するのがうまい!と思います。

投稿: 崎田幸一 | 2016年5月 7日 (土) 09時01分

LFJの興奮冷めやらぬ中、帰省途中に別府に寄っています。今夜アルゲリッチ音楽祭でのコンサートを聴いて、明日宮崎県日南市に帰省します。昨日は緑丘高校時代のひとつ下の後輩と会って食事したり、ピーコンプラザに残る別府校舎時代の面影を見つけて懐かしんだりしました。LFJとは直接関係ない話題で恐縮ですが、樋口先生が緑にもご縁がおありとの事ですので…。

投稿: 崎田幸一 | 2016年5月 7日 (土) 09時08分

御一緒にならなかったコンサートでは、リス&ウラル・フィルの海二題コンサートが良かったですよ。最初はドビュッシーの有名な交響詩、ロシア人のフランスものとは一見ピンと来ないですが、ウラル・フィルの本拠はニコライ二世処刑の地=フランス宮廷文化を手本にしたロマノフ朝最期の地だから、でもないでしょうけど、フランス的な色彩感は十分出ていたと思います。
次は細川俊夫『循環する海』。外国の指揮者とオケの組み合わせによる邦人作品は、日本人同士とは異質なものだろうとは思いますが、こうして日本人の作品が国際的に演奏されているとはうれしいには違いありませんね。

投稿: 崎田幸一 | 2016年5月 7日 (土) 09時21分

崎田幸一 様
コメントありがとうございます。
ジュール・フィルのこと、ブログに書きませんでしたが、指揮者も含めてとても心地よく聴くことができました。ウラル・フィルの「海」は大袈裟になりそうなので敬遠しましたが、そうですか、フンラス的な色彩感がでてましたか。細川俊夫の曲は何度か聴いたことがあります。確かに私のような現代曲に疎い人間にも十分に良さのわかる曲を作ってくれる作曲家だと思います。

投稿: 樋口裕一 | 2016年5月 9日 (月) 12時16分

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