« ベロッキオ監督の映画「夜よ、こんにちは」「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」「眠れる美女」 | トップページ | 戸田弥生&野原みどりデュオ・リサイタル 凄まじい名演奏だった! »

藝大でサティを堪能

 2016年5月15日、東京藝大による「藝大プロジェクト2016 サティとその時代」の第一回「今日は一日、サティの日」を聴いた。とても満足。

 私はベートーヴェン、ワーグナー、ブラームス、ブルックナーなど、ドイツ系の重い音楽が大好きだが、ひそかにサティを愛している。サティを聴くと、にやりと笑いたくなり、軽いうっ憤を晴らした気になり、時に心を洗われ、清澄な気分になる。ほかのどの作曲家からも得られない不思議な力をサティの音楽は与えてくれる。

 そんなわけで、藝大でサティが特集されると知って、大喜びで出かけた。しかも入場料無料。

1ホールで「幕間」と「スポーツと気晴らし」の2本の映画を見た。ともにサティが映画に音楽をつけている(とはいえ、当時はサイレント映画なので、実際の上映の時にはなま演奏がなされたわけだ)。とりわけルネ・クレール監督の「幕間」はおもしろかった。ブニュエルのシュールレアリスム映画「アンダルシアの犬」を思わせる雰囲気。そして、やはりサティの音楽が面白い。「スポーツと気晴らし」はまさにサティの音楽をそのまま映画にしたもの(楽譜が写され、音楽が鳴り、語りが入る)。演奏は高橋アキ。

 第2ホールでは「ヴェクサシオン」のピアノ演奏。実際にサティが作曲したのは1分半に満たないほどだが、それを840回繰り返して演奏するよう指示がなされている。まさにヴェクサシオン(いやがらせ)。人を食ったようなタイトルをつけ、不思議な音楽を作るサティの代表作の一つだ。今回は、4時間半にわたって演奏された。その時間に何度演奏されたかは確認しなかったが、250回前後になりそうなペースだった。ピアニストによってかなり演奏が異なること、同じフレーズを繰り返し聴いているうちに、ちょっと気が遠くなり、音楽の様相が変化していくことに気付いた。

 第6ホールでは、「メドゥーサの罠」の演奏を聴いた。秋山邦晴の日本語台本、演出は清水寛二。演じるのは、清水寛二、竹内靖彦、重盛次郎、大槻孝、谷石奈緒子、指揮は矢崎彦太郎、オーケストラは芸大学生有志アンサンブル。もちろん、実演初めてみた。ただ、それなりにはおもしろかったが、サティ自身による台本はあまりにシュールでよく理解できず、感動するとまでは行かなかった。

 奏楽堂では、サティの「3つの小さなピエスモンテ」、ジョン・ケージの「チープ・イミテーションⅠ」そしてサティの交響的ドラマ「ソクラテス。「ソクラテス」が圧倒的に素晴らしかった。小林真理、工藤あかね、薬師寺典子、野々下由香里のそれぞれ歌手がとてもいい。フランス語の発音も美しいし、声も清澄。矢崎指揮の藝大学生有志オーケストラも素晴らしい。フランス音楽特有の繊細でしなやかで精妙な音を出している。

 サティを堪能した。サティの音楽をこれほどまとまって聴く機会はこれまでなかった。芸だが位がこのような企画をしてくれたのはとてもうれしい。しゃかりきになって世界に影響を与えようとする芸術とは対極にある音楽。政治力学にあふれた現実世界からちょっと外側に出て、人を皮肉り、俗世にはない純粋な世界に遊ぶ。そんなサティの世界の魅力を改めて感じた。

|

« ベロッキオ監督の映画「夜よ、こんにちは」「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」「眠れる美女」 | トップページ | 戸田弥生&野原みどりデュオ・リサイタル 凄まじい名演奏だった! »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/63637163

この記事へのトラックバック一覧です: 藝大でサティを堪能:

« ベロッキオ監督の映画「夜よ、こんにちは」「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」「眠れる美女」 | トップページ | 戸田弥生&野原みどりデュオ・リサイタル 凄まじい名演奏だった! »