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ロッシーニの映像「チェネレントラ」「モーゼ」「タンクレディ」「オリー伯爵」

 新学年が始まり、それなりに忙しい生活を送っていたが、やっと連休に入った。明日から、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに通うことになる。

 この数日の間、またロッシーニのオペラ映像をいくつかみたので感想を書く。

 

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「チェネレントラ」 
2006年 ジェノヴァ・テアトロ・カルロ・フェリーチェ劇場

 初めのうちは、オーケストラの力動感のなさを感じていたが、徐々にロッシーニらしくなってきた。歌手はそろっている。チェネレントラのソーニャ・ガナッシは美しくて躍動感のある歌唱。ドン・ラミロのアントニオ・シラグーサも張りのある声でしっかりとプリンスを歌う。ドン・マニフィーコ役のアルフォンソ・アントニオッツィが芸達者で声にも余裕があって実にいい。ダンディーニ役のマルコ・ヴィンコとアリドーロ役のシモン・オリフィーラ(大喝采を受けているが)はほかに比べると少し弱い気がした。

 指揮はレナート・パルンボ。いい指揮者だと思っていたのだが、前半もたついているのを感じた。後半は私はロッシーニの世界を満喫した。ポール・カランの演出は、特に新しさは感じないが、おしゃれで楽しい。

 

 

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「モーゼ」
20156月 ミラノ・ドゥオーモ

 

 どのような由来の映像なのかまったく知らないまま見始めて、びっくり。あまりに残響が長い。一体この録音は何なんだ?と思ってデータを見て、ミラノ大聖堂で上演された記念的な映像であることを知った。ミラノのドゥオーモはもちろん何度か訪れたことがあり、それなりに思い入れもあるが、やはりオペラを上演する場所ではなかろう。反響音がしばらく漂って現在の音と重なる。これほど残響が長いと音像がつかめない。残響が続くうちに船酔いのようなものを感じて気分が悪くなってきた。音楽に耳を傾けるどころではなくなってしまった。

 ルッジェーロ・ライモンディがモーゼを歌っている。ライモンディの全盛期を知っている人間としては、その衰えを感じざるを得ない。歌手たちはそろっているが、ともあれ、私としては雑音の中で音楽を聴いているのと同じように音楽に集中できない。このような気分になるのは私だけなのだろうか。

 

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「タンクレディ」(フェラーラ版)
1992年 シュヴェツィンゲン音楽祭

 25年前の映像。今の映像からすると、いかにもアナログでクリアさが不足。ピエール・ルイジ・ピッツィの演出も、今から考えるとかなりオーソドックスで古めかしい。宮殿が出てきて、鎧兜の戦士が出てくる。おそらく全員が台本通りの動きをする。とてもわかりやすくて、これはこれで不満はない。

演奏は実に素晴らしい。アメナイーデのマリア・バーヨの力演には息をのむ。美しい声で技巧的にも素晴らしい。タンクレディ役のベルナデッテ・マンカ・ディ・ニッサもしっかりした声で見事に英雄役を歌っている。アルジーリオ役のラウール・ヒメネスも本当に美しい声。そして、敵役のオルバッツァーノを歌うのは、なんと若きイルデブラント・ダルカンジェロ。このころから異様な存在感がある。

 ジャンルイジ・ジェルメッティの指揮するシュトゥットガルト放送交響楽団ももちろんとても良いのだが、近年の演奏に比べるとかなりおとなしい。私としてはもっと躍動感にあふれたロッシーニのほうが好きだ。

 なお、これはフェラーラ版を用いた上演。つまり、誤解が解けないまま悲劇に終わるヴァージョン。「オテロ」をみていてもそうなのだが、「タンクレディ」についても、みるたびに、一方の言い分だけを信じて相手の言い分に耳を貸そうとしない主人公にいら立つ。誤解された方も、もっと自己弁護すればいいのに・・・という思いを私はオペラをみている間じゅう、捨てられない。とてもいい音楽なのだが、このストーリーでは私は「なんと愚かなんだ」と思いが先だって登場人物に感情移入できない。

 

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「オリー伯爵」
20098月 ペーザロ ロッシーニ・オペラ・フェスティバル

 とても充実した映像。歌手陣のバランスがとてもいい。みんなが高いレベルでそろっている。オリー伯爵を歌うシー・イージェも強靭な歌声で実にいいし、家庭教師を歌うロレンツォ・レガッツォも太くて味のある声、イゾリエのラウラ・ポルヴェレッリもきれいで音程のよい声。だが、私は圧倒的にアデールを歌うマリア・ホセ・モレノに惹かれた。何と美しい高音。うっとりする。容姿的にも貴婦人にふさわしい。そして、もう一人ランボー役のロベルト・デ・カンディアが圧倒的な面白みを見せる。最高に楽しい。

 パオロ・カリニャーニの指揮によるボローニャ・テアトロ・コムナーレ管弦楽団も勢いがあって素晴らしい。ロッシーニの演奏はこうでなくっちゃ!

演出はルイス・パスカル。舞台を現代に移している。第二幕のアデールと二人きりでいる場面で、オリー伯爵が自分の正体を現す設定になっている。つまり、その後、二人は互いに正体を承知の上でやりとりをしていることになる。それはそれでとてもおもしろい。確かに14人もの男が女巡礼になりすまして気づかれないというのは現代の常識からするとあまりに不自然なので、このようにする方が自然ではあるだろう。

 このオペラはロッシーニがフランス語台本に作曲したものだが、フランス人はこのフランス語を聞きとれるのか少し疑問に思う。レチタティーヴォ風のところは、私でもなんとか聞きとれるが、早口の部分などフランス語の字幕を見てすら今どこが歌われているのかわからないほど。まあロッシーニのオペラはこんなものだろうけれど。

 

 

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「オリー伯爵」
20111231日 チューリッヒ歌劇場

 やはりなんといってもアデールを歌うチェチーリア・バルトリが圧倒的。ペーザロで上演された映像のマリア・ホセ・モレノも素晴らしいが、バルトリともなると、もっと人を引き付け、感嘆させる力を持っている。すべての音に勢いがあり、細かいところまで完璧にコントロールされている。一人図抜けた歌手がいると全体が締まってくる。オリー伯爵のハビエル・カマレナもイゾリエのレベッカ・オルヴェラもラゴンドのリリアーナ・ニキテアヌも文句なし。演出はモーシェ・レイザとパトリス・コリエ。かなり露骨な性的な仄めかしがあってちょっと下品だが、ユーモアにあふれているので、全体の品格を失うことはない。とても楽しめるオペラになっている。

 指揮はムハイ・タン。オーケストラはラ・シンティッラ管弦楽団。古楽のオーケストラだ。溌剌としてメリハリがあって、とてもいい。

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